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資料1 被用者保険の適用拡大及びいわゆる「年収の壁」への対応について

医療保険部会 第189回 / 2024-12-12 開催 / 32ページ

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令和6年12月12日 第189回社会保障審議会医療保険部会 資料1 2021年4月1日 被用者保険の適用拡大 及び いわゆる「年収の壁」への対応について 厚生労働省 保険局 1 被用者保険の適用拡大 2 いわゆる「年収の壁」への対応 3 被用者保険の適用拡大による市町村国保への影響 短時間労働者及び個人事業所の被用者保険の適用範囲の見直しの方向性案 令和6年11月15日 資料1 (一部 第20回社会保障審議会 改変) 年金部会 「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会」及び年金部会・医療保険部会の議論を踏まえ、以下のような方向性 としてはどうか。 労働時間要件 雇用保険の適用拡大に伴い本要件を引き下げるべきとの意見があった一方で、保険料や事務負担の増加という課題は対象者が広が ることでより大きな影響を与え、また、雇用保険とは異なり、国民健康保険・国民年金というセーフティネットが存在する国民皆 保険・皆年金の下では、事業主と被用者との関係性を基盤として働く人々が相互に支え合う仕組みである被用者保険の「被用者」 の範囲をどのように線引きするべきか議論を深めることが肝要であり、こうした点に留意しつつ、雇用保険の適用拡大の施行状況 等も慎重に見極めながら検討を行う必要がある等の意見があったことから、今回は本要件を見直さないこととしてはどうか。 賃金要件 短 就業調整の基準として意識されていること、最低賃金の引上げに伴い労働時間要件を満たせば本要件を満たす地域や事業所が増加 時 間 していることを踏まえ、本要件についてどう考えるか。 労 働 学生除外要件 者 就業年数の限られる学生を被用者保険の適用対象とする意義は大きくない、適用対象とする場合には実務が煩雑になる等の意見が あったことから、今回は本要件を見直さないこととしてはどうか。 企業規模要件 経過措置として設けられた本要件については、労働者の勤め先や働き方、企業の雇い方に中立的な制度を構築する観点から、撤廃 することとしてはどうか。併せて、事業所における事務負担や経営への影響、保険者の財政や運営への影響等に留意し、必要な配 慮措置や支援策を講じることとしてはどうか。 個人事業所 常時5人以上の従業員を使用する個人事業所における非適用業種については、労働者の勤め先等に中立的な制度を構築する観点等か ら、解消することとしてはどうか。併せて、事業所における事務負担や経営への影響、保険者の財政や運営への影響等に留意し、必 要な配慮措置や支援策を講じることとしてはどうか。他方で、常時5人未満の従業員を使用する個人事業所については、本来的には 適用すべきとの意見があった一方で、対象事業所が非常に多く、その把握が難しいと想定されること、国民健康保険制度への影響が 特に大きいこと等から、慎重な検討が必要との意見もあったことから、今回は適用しないこととしてはどうか。 2 第186回医療保険部会における賃金要件に対するご意見 文責:事務局 ・ いわゆる「106万円の壁」に関わるものであり、最低賃金額の単価による週20時間の就業で既に8.8万円を超えているの が12都府県ある一方で、8.8万円未満が35道県あり、引き下げは今以上に就業調整の拡大や人手不足の誘因となることが懸 念される。また、短時間労働者の出入りが多い事業者等にとって、保険加入や保険料納付に係る事務負担の増加が、経営 にどのような影響を与えるかなどについて、引き続き検討を深めていくべき。撤廃する場合には、全国47都道府県で8.8万 円を超える状況の達成を前提とするべき。 ・ 雇用形態や勤務先の規模、企業規模や業種によって被用者保険の適用の有無が変わることについては不合理であるとの 観点から、賃金要件、企業規模要件を撤廃すべき。 ・ 雇用の在り方に中立的な制度としていく観点から、企業規模要件の撤廃や5人以上従業員の個人事業所における非適用 業種の解消については、その方向で検討を進めるべき、賃金要件については、全国の最低賃金の引き上げ状況なども勘案 しながら判断するということが必要。 ・ 今後の本格的な人口減少に伴って就業者の減少が懸念される中で、社会保障制度の維持の観点からも担い手を増やして いくことが必要であり、方向性に異論はないが、さらなる適用拡大によって、特に短時間労働者を多く抱える業種の健保 組合の財政的な負担が増えることも考えられるため、健保組合の財政影響についても十分留意をいただいて、必要な財政 支援をお願いしたい。 ・ 適用拡大について、就労形態が多様化し、より多様な方が労働参画をすることが必要となる中で、働き方に中立な制度 を構築していく観点から適用拡大には賛成。今回、残された時間要件なども今後の適用拡大の状況を踏まえて、さらに見 直しを進めていくべき。 ・ 最低賃金の上昇により、8.8万円未満の人たちが少なくなっていくことも理解するが、特に小規模保険者においては、保 険者としての存続に大きく影響してしまうのではないか。小規模保険者に与える影響や、それに対しての保険者の不安、 現場の不安というものを勘案すると、すぐに撤廃ということではなく、そのまま据え置きということを強く望みたい。 ・ 被用者保険の適用拡大の議論においては、国保の安定的な財政運営や保険者機能の堅持という観点を踏まえた上で、国 保関係者の理解と納得を得ながら対応すべき。 3 令和6年12月10日 第20回年金部会における賃金要件に対するご意見と見直しの方向性案 資料1 第23回社会保障審議会 年金部会 ① 賃金要件の撤廃 • 最低賃金の引上げの動向を踏まえると、数年のうちに週20時間の労働で賃金要件を基本的に満たすことになると考えられること から、賃金要件を設けることの必要性が薄れており、撤廃してもよいのではないか。 • 元来、被用者保険の加入要件は、1週間の労働時間及び1か月の労働日数が通常の労働者の4分の3以上と労働時間で判断してお り、労働時間のみで判断することがあるべき姿なのではないか。 • 「壁」という言葉が国民の間の誤解さらには就業調整を誘発しかねないことには、十分な注意が必要。8.8万円という数字をなく すことで国民に向けてより簡明なメッセージを発することになることに鑑み撤廃が適当。 • 都道府県労働局長の許可を得て、最低賃金を減額することができる特例があるが、賃金要件を撤廃する際には、特例対象となって いる障害者などへの影響についても配慮が必要ではないか。 ② 週20時間労働でも最低賃金の関係で賃金要件を満たさない場合がありうることを踏まえた撤廃の時期の配慮 • 今後の最低賃金の動向次第ではあるが、撤廃する場合には全国47都道府県で8.8万円を超える状況の達成を前提とすべきではない か。 • 賃金要件を現時点で撤廃するには議論が足りていない。最低賃金が低い地域で暮らす、106万円未満の年収の人が、106万円以上 の年収の人と同額の保険料となり、年収の低い人の負荷が高まるのではないか。 ③ 適用拡大のメリットの周知の必要性 • 賃金要件を撤廃すべきと考えるが、週19時間あたりで就業調整する人が増えないか懸念もある。適用拡大により、将来の年金が増 加するメリットもあることについて、さらなる周知・啓発も必要ではないか。 見直しの方向性案 就業調整の基準として意識されていること、最低賃金の引上げに伴い労働時間要件を満たせば本要件を満たす地域や事業所が増加 していることを踏まえ、本要件を撤廃することとしてはどうか。その際、最低賃金の動向次第では週20時間の所定労働時間で あっても賃金要件を満たさない場合がありえることから、撤廃の時期に配慮する必要がある等の意見があったことも踏まえ、賃金 要件の撤廃によって保険料負担が相対的に過大とならないよう、最低賃金の動向を踏まえつつ、本要件撤廃の時期に配慮してはど うか。また、最低賃金の減額の特例の対象となる賃金が月額8.8万円未満の短時間労働者については、希望する場合に、事業主に 申し出ることで任意に被用者保険に加入できる仕組みとしてはどうか。 4 短時間労働者に係る被用者保険の適用要件の見直し案のイメージ 令和6年12月10日 資料1 第23回社会保障審議会 年金部会 50人超企業等 <見直し前> <見直し後> すべての企業等 企業規模にかかわら いわゆる「年収の ず、被用者保険の適 壁」であり、就業 調整の基準として 用範囲が同じになる 意識される ため、勤め先の選択 に影響を与えない 約 50人以下企業等 106 万 円 就業調整の基準となる 企業規模の違いに 金額がなくなることで より被用者保険の • 年収を意識する必要 適用範囲が異なる がなくなる 年収にかかわらず、 ことによって、勤 • 賃上げに伴う就業調 週20時間以上の労働 め先の選択に影響 で被用者保険が適用 整が生じなくなる 注:学生は引き続き除外 5 (※)最低賃金未満においては、最低賃金との関係で基本的に被保険者はいないものと考えられる。 令和6年12月10日 被用者保険の適用拡大の進め方のイメージ 資料1 第23回社会保障審議会 (一部改変) 年金部会 「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会」及び年金部会・医療保険部会の議論を踏まえ、 以下のような進め方としてはどうか。 <見直しの方向性> <進め方の考え方> 最低賃金の引上げに伴い労働時間要件を満たせば本要件を満たす地域や事業 賃金要件の撤廃 所が増加していることを踏まえ、本要件を撤廃してはどうか。その際、最低 賃金の動向を踏まえつつ、本要件撤廃の時期に配慮してはどうか。 本要件の撤廃の際に、短時間労働者が適用の対象となる事業所は50人以下の 企業規模要件の撤廃 中小事業所であり、配慮が必要なことから、十分な周知・準備期間を確保し てはどうか。 新たに被用者保険の適用事業所となり、短時間労働者のみならず、いわゆる 非適用業種の解消 フルタイム相当の通常の労働者も適用対象となることから、さらに十分な周 知・準備期間を確保してはどうか。 6 令和6年7月3日 資料1 (一部 第16回社会保障審議会 改変) 適用範囲のイメージ図(2024年度時点) 年金部会 ① 70 万人・・・賃金要件撤廃 ②110 万人・・・企業規模要件撤廃 【雇用者全体】5740万人 ③ 20 万人・・・5人以上個人事業所の非適用業種の解消 ( 2023年度時点、70歳以上除く) 厚生年金の被保険者 70万人 フルタイム (フルタイム) ・5人未満個人事業所 4780万人 4590万人 厚生年金の被保険者 (短時間) 所定労働時間 ③20万人 4分の3注4 90万人 20万人 ・5人以上個人事業所 うち ・企業規模100人超 ・企業規模50人 ②110万人 学生等 20時間以上 超100人以下 フルタイム 380万人 月8.8万円 20万人注3 ①70万人 ・月8.8万円未満,企業規模50人超 ・企業規模50人以下 以外 960万人 うち 410万人 ・月10時間~20時間 20時間未満 580万人 180万人 ・月10時間未満 適用事業所 非適用事業所 注1.「労働力調査2023年平均」、「令和4年公的年金加入状況等調査」、「令和4年就業構造基本調査」、「令和3年経済センサス」等の特別集計等を用いて推計したもの。 注2.斜体字は、「令和3年経済センサス」等を基にした推計値であり、他の数値と時点が異なることに留意が必要。 注3.学生等には、雇用契約期間2ヶ月以下の者(更新等で同一事業所で2ヶ月以上雇用されている者は除く)が含まれている。 7 注4.通常の労働者の週所定労働時間は、「令和5年就労条件総合調査」における労働者1人平均の値(39時間04分) としている。 適用拡大による医療保険財政への影響(試算):①「賃金要件」の撤廃 前提:①「賃金要件」の撤廃 【財政への影響】 (単位:億円) 協会けんぽ 健保組合 共済組合 市町村国保 収入 +420 +420 - ▲730 保険料収入 +380 +420 - ▲120 公費 +40 - - ▲610 国負担 +40 - - ▲400 地方負担 - - - ▲200 支出 +420 +640 ▲110 ▲900 収入-支出 0 ▲220 110 170 【加入者数への影響】 (単位:万人) 協会けんぽ 健保組合 共済組合 市町村国保 被保険者 +30 +40 - ▲30 被扶養者 ▲20 ▲15 ▲5 - 加入者 +10 +20 ▲5 ▲30 (※1)影響額・人数は満年度ベース (※2)上記の数値は、医療・介護分に係る収支。 (※3)国保組合における財政影響については、健康保険適用除外承認を受けることにより、引き続き加入が可能なことを踏まえ、考慮していない。 (※4)人数は5万人単位、金額は10億円単位で四捨五入している。 8 適用拡大による医療保険財政への影響(試算):②「企業規模要件」の撤廃 前提:②「企業規模要件」の撤廃 【財政への影響】 (単位:億円) 協会けんぽ 健保組合 共済組合 市町村国保 収入 +2,070 +120 - ▲1,720 保険料収入 +1,800 +120 - ▲600 公費 +270 - - ▲1,110 国負担 +270 - - ▲800 地方負担 - - - ▲310 支出 +2,400 ▲310 ▲170 ▲1,840 収入-支出 ▲330 440 170 130 【加入者数への影響】 (単位:万人) 協会けんぽ 健保組合 共済組合 市町村国保 被保険者 +105 +5 - ▲55 被扶養者 ▲20 ▲25 ▲10 - 加入者 +80 ▲15 ▲10 ▲55 (※1)影響額・人数は満年度ベース (※2)上記の数値は、医療・介護分に係る収支。 (※3)国保組合における財政影響については、健康保険適用除外承認を受けることにより、引き続き加入が可能なことを踏まえ、考慮していない。 (※4)人数は5万人単位、金額は10億円単位で四捨五入している。 9 適用拡大による医療保険財政への影響(試算):③「非適用業種」の解消 前提: ③「非適用業種」の解消 【財政への影響】 (単位:億円) 協会けんぽ 健保組合 共済組合 市町村国保 収入 +860 - - ▲1,160 保険料収入 +750 - - ▲610 公費 +110 - - ▲550 国負担 +110 - - ▲440 地方負担 - - - ▲110 支出 +1,040 +20 +10 ▲1,030 収入-支出 ▲180 ▲20 ▲10 ▲120 【加入者数への影響】 (単位:万人) 協会けんぽ 健保組合 共済組合 市町村国保 被保険者 +20 - - ▲25 被扶養者 +10 - - - 加入者 +30 - - ▲25 (※1)影響額・人数は満年度ベース (※2)『「非適用業種」の解消』については、非適用業種のうち5人以上個人事業所が対象。すべて協会けんぽに適用されると仮定している。 (※3)上記の数値は、医療・介護分に係る収支。 (※4)国保組合における財政影響については、健康保険適用除外承認を受けることにより、引き続き加入が可能なことを踏まえ、考慮していない。 10 (※5)人数は5万人単位、金額は10億円単位で四捨五入している。 適用拡大による医療保険財政への影響(試算):①+②+③ 前提:①「賃金要件」の撤廃+②「企業規模要件」の撤廃+③「非適用業種」の解消 【財政への影響】 (単位:億円) 協会けんぽ 健保組合 共済組合 市町村国保 収入 +3,350 +540 - ▲3,600 保険料収入 +2,930 +540 - ▲1,340 公費 +420 - - ▲2,270 国負担 +420 - - ▲1,640 地方負担 - - - ▲630 支出 +3,860 +350 ▲280 ▲3,770 収入-支出 ▲510 +190 +280 +170 【加入者数への影響】 (単位:万人) 協会けんぽ 健保組合 共済組合 市町村国保 被保険者 +155 +45 - ▲110 被扶養者 ▲30 ▲40 ▲15 - 加入者 +125 +5 ▲15 ▲110 (※1)影響額・人数は満年度ベース (※2)『「非適用業種」の解消』については、非適用業種のうち5人以上個人事業所が対象。すべて協会けんぽに適用されると仮定している。 (※3)上記の数値は、医療・介護分に係る収支。 (※4)国保組合における財政影響については、健康保険適用除外承認を受けることにより、引き続き加入が可能なことを踏まえ、考慮していない。 11 (※5)人数は5万人単位、金額は10億円単位で四捨五入している。 1 被用者保険の適用拡大 2 いわゆる「年収の壁」への対応 3 被用者保険の適用拡大による市町村国保への影響 第186回医療保険部会における保険料負担割合を変更できる特例に対するご意見 文責:事務局 ・ 現行の健保組合の特例は大企業での活用と考えられるが、負担率を上げられる中小企業が多いとは思えない。待遇格差 を助長し、人材の流出を深刻化させるだけではないか。また、社内で差をつけることなど、従業員の少ない企業ではあり 得ない。特例が適用される範囲で働こうという就業調整の要因にもなり得る。こうしたことから、この提案には賛成しか ねる。また、「年収の壁」への対応策の検討に当たっては、労働者の負担軽減だけではなく、中小企業における保険料負 担の軽減策についてもお願いしたい。 ・ 労使折半の原則との関係や、適用できる中小企業はどのぐらいあるのか、企業の中で格差が出てしまうことをどう考え るのか。特に中小の方々の声に真摯に耳を傾けて検討すべき。 ・ 保険料負担割合の変更については、特に中小企業において事業主の保険料負担や手続の事務負担が大きく増えるといっ たことに留意をお願いしたい。 ・ 健保組合において確かに特例は認められているが、全ての被保険者に同一の負担割合を課すものであって、特定の標準 報酬月額の方に限って負担割合を変更することは、システム改修対応や事務負担の増加が極めて重い。仮に今回のような 特例を行うこととなった場合、最低限「恒久的でない時限的な対応」とするのは不可欠。本質的な対応案も併せて検討し なければ、真の解決策にはならないのではないか。 ・ 育児休業導入時、最初は本人負担分を免除して、その後、事業主負担分も免除するようになった。また、健康保険がで きたとき、労災の部分も含めて一定の計算式でやると折半が合理的だという説明もされていたが、現在、労災の部分は抜 けていることから、絶対的ではないのではないか。日本がかつて参考にしてきた大陸ヨーロッパの社会保険も当初は労使 折半からスタートして、労使関係の中で労働者に有利にということで変わってきた。一定の合理的な政策目的があれば、 場合によれば労使折半というのも絶対ではないのではないか。 ・ 特定の人たちを有利に扱うということが、公平性という点にどのように影響を与えるかということ、労使対等原則の下 での合意という点から、保険者をはじめとする当事者の方たちの考えが重要。 13 令和6年12月10日 資料1 就業調整に対応した保険料負担割合を任意で変更できる特例(案) (一部 第23回社会保障審議会 改変) 年金部会 負担割合の特例については様々な意見があり整理する必要があるが、仮に導入する場合は以下のようなものが考えられるのではないか。 【見直しの方向性】 ○ 現行制度では、被用者保険の保険料は原則として労使折半であるが、健康保険法(健康保険組合の保険料の負担割合の特例)において、事業 主と被保険者とが合意の上、健康保険料の負担割合を被保険者の利益になるように変更することが認められている。一方で、厚生年金保険法 においては健康保険法のような保険料の負担割合の特例に関する規定はない。 ○ 被用者保険の適用に伴う保険料負担の発生・手取り収入の減少を回避するために就業調整を行う層に対し、健康保険組合の特例を参考に、被 用者保険(厚生年金・健康保険)において、任意で従業員と事業主との合意に基づき、事業主が被保険者の保険料負担を軽減し、事業主負担 の割合を増加させることを認める特例を設けてはどうか。 ○ 労使折半の原則との関係で例外的な位置づけであること等を踏まえて、時限措置とすることとしてはどうか。 ○ 現行の健康保険法では、当該特例は健康保険組合のみに認められるものであるところ、協会けんぽについても同様の特例を導入してはどうか。 ※ 検討に当たっては、より広く活用されるような環境整備が必要。 ① 給付について ・ 本特例を利用しても保険料負担の総額は変わらないため、本特例の適用を受ける者の給付は現行通り。 ② 保険料負担について ・ 本特例を利用した場合、労使の判断で、被保険者本人の保険料負担を軽減し、被用者保険の適用に伴う手取り収入の減少を軽減できる。 ただし、事業主が保険料全額を負担し、被保険者負担をなくすことは認めない。 ※ 健康保険は被保険者間の相互扶助に基づく制度であるため、健康保険組合の特例においても、受益者である被保険者本人の負担をなくすこと(労働者 0%・事業主100%)は認められていない。  特例適用後の手取り収入のイメージ  特例の適用範囲について ※具体的な割合は事業所単位で労使合意に基づき任意により設定可能 ○ 労使折半の原則を踏まえ、必要と考えられる者に限った措置とする観点から、 本特例の適用範囲は、最低賃金の近傍で就労し、被用者保険の適用に伴う「年 収の壁」を意識する可能性のある短時間労働者に限定することを念頭に検討。 (最大12.6万円の標準報酬月額を想定) ○ 本特例の適用を受ける被保険者の負担割合について、 ・ 同一の等級に属する者同士で揃えることとしつつ、 ・ 等級毎の具体的な割合は、事業所単位で労使合意に基づき任意に設定可能 とする。(健康保険組合の事業所においても設定可能) ○ 本特例を利用する事業所において、厚生年金保険料と健康保険料のうちどち らか一方にだけ本特例を適用することや、両方ともに本特例を適用しつつ、負 担割合を別々に設定することを可能とする。 ○ 賞与についても本特例の対象とすることを可能とする。 14 1 被用者保険の適用拡大 2 いわゆる「年収の壁」への対応 3 被用者保険の適用拡大による市町村国保への影響 市町村国保の世帯の状況 ○ 市町村国保の世帯について世帯主の職業別に内訳をみると、無職が41%で高齢者中心、被用者は29%で現役世代中心。 ○ 世帯の平均所得をみると、その他の自営業、農林水産業で高くなっており、無職、被用者の世帯で相対的に低くなっている。 ○ 被用者保険の適用拡大によって国保から異動するのは、被用者、無職が主に想定される。 市町村国保 加入者数 2,508万人 世帯主 1,328万人 世帯主以外 1,180万人 所得は農水業・ その他 48万人(4%) 平均世帯所得 306万円 不詳 141万人(11%) 平均世帯所得 123万円 自営業の方が 適用拡大で国保 高い傾向 から社保に移る 農林水産業 25万人(2%) 平均世帯所得 309万円 その他の自営業196万人(15%) と想定される層 平均世帯所得 309万円 被用者 現役世代中心 380万人(29%) 65歳以上割合 平均世帯所得 163万円 37% 適用拡大で世帯主が 社保に移ることで、 無職 主に年金受給者 その被扶養者として社保 538万人(41%) 65歳以上割合 に移る可能性がある層 平均世帯所得 85万円 72% (出典)厚生労働省保険局「国民健康保険実態調査」(令和4年度) ※ここでいう「所得」とは、「総所得金額及び山林所得金額」に「雑損失の繰越控除額」と「分離譲渡所得金額」を加えた所得総額(基礎控除前)に相当するものである。 ※平均世帯所得については、所得総額を世帯数で除して算出した世帯の平均額である。 16 これまでの被用者保険の適用拡大による市町村国保の異動数・財政影響 被用者保険の適用拡大の内容 国保から異動する 財政影響 (変更点は下線) 被保険者数 (※2) ・週20時間以上 ・月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上) 平成24年制度改正 ・勤務期間1年以上 ▲15万人 +40億円 ・学生を除外 ・従業員 501人以上の企業に適用 ・週20時間以上 ・月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上) ・勤務期間2か月超 令和2年制度改正 ・学生を除外 ▲40万人 0億円 ・従業員50人超の企業に適用 ・士業の個人事業所を適用業種に追加 ・週20時間以上 ▲110万人 ・賃金要件撤廃 ・勤務期間2か月超 今回(案) ◯賃金要件 ▲30万人 +170億円 ・学生を除外 ◯企業規模要件▲55万人 ・企業規模要件撤廃 ◯非適用業種解消 ・5人以上個人事業所の非適用業種解消 ▲25万人 ※1 異動、財政影響は各法改正時の医療保険部会で示した推計値 ※2 「+」は財政改善を示す。 ◯従前の改正と比較して、今回の見直し案において、国保から異動する被保険者数が多い。 ◯こうした被保険者数の減少に対しては、保険料水準統一、事務の効率化等の取組を進め るとともに、個別の保険者への影響も注視。 ◯国保の構造的な課題への対応については、今後の制度改革の中で検討。 17 参考資料 令和6年12月10日 都道府県別週20~30時間就業する非正規職員と最低賃金 資料1 第23回社会保障審議会 年金部会 青棒グラフ:「令和4年就業構造基本調査」における非正規職員かつ週間就業時間20~30時間の者の人数 緑線グラフ:令和6年度における最低賃金 20時間就業で 20時間就業で (万人) 213万人 186万人 (円) 8.8万円超 8.8万円未満 40.0 令和5年度の 令和6年度の 1250 最低賃金で 最低賃金引上げ すでに8.8万円超 で8.8万円超 11631162(151万人) (62万人) 35.0 1150 1114 32.3 107810771076 10581052 30.0 1034 1050 102310201017 27.4 26.0 1010100510041001998998992988986985985984984982980980979973970 962957956956955955954953953953952952952952952951 1,016円 25.0 950 23.6 21.9 青 緑 棒 20.1 線 20.0 850 グ 18.9 グ 18.3 17.9 ラ ラ フ フ 15.0 750 13.3 9.7 9.7 10.0 650 8.9 8.4 7.0 7.3 7.5 6.7 6.6 6.3 6.6 6.0 5.7 5.0 5.3 4.5 3.8 5.1 4.6 4.8 4.2 3.8 5.0 3.9 4.0 4.7 550 3.1 2.6 2.5 3.1 3.0 2.7 2.6 2.7 2.0 2.0 1.7 1.8 0.0 450 東 神 大 埼 愛 千 京 兵 静 三 広 滋 北 茨 栃 岐 富 長 福 山 奈 群 新 石 福 岡 和 徳 山 宮 香 島 鳥 愛 佐 山 福 大 青 長 鹿 岩 高 熊 宮 沖 秋 京 奈 阪 玉 知 葉 都 庫 岡 重 島 賀 海 城 木 阜 山 野 岡 梨 良 馬 潟 川 井 山 歌 島 口 城 川 根 取 媛 賀 形 島 分 森 崎 児 手 知 本 崎 縄 田 19 川 道 山 島 最低賃金減額特例許可制度について 最低賃金を一律に適用するとかえって雇用機会を狭めるおそれなどがあることから、次の労働者に ついては、使用者が都道府県労働局長の許可を受けることを条件として個別に最低賃金の減額の特例 が認められている。(最低賃金法第7条) (1) 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い方 (2) 試の使用期間中の方 (3) 基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める方 (4) 軽易な業務に従事する方 (5) 断続的労働に従事する方 【許可件数の推移】 H28 H29 H30 R1 R2 R3 R4 R5 精神 452 376 452 430 361 371 359 295 精神又は身体の障 害により著しく労 知的 3,273 2,789 3,448 2,784 2,375 2,820 2,441 2,137 働能率の低い者 身体 187 172 216 164 149 163 122 121 試の使用期間中の者 0 0 0 0 0 0 0 0 職業能力開発促進法に定 0 0 0 4 3 0 0 0 める職業訓練を受ける者 軽易な業務に従事する者 9 17 15 13 4 8 4 3 断続的労働に従事する者 6,974 7,902 9,526 10,094 9,451 7,770 7,610 9,485 20 令和6年12月10日 短時間労働者の企業規模要件を撤廃した場合のイメージ 資料1 第23回社会保障審議会 年金部会 【現行制度】 被用者保険適用対象(正社員相当) ( 30時間 週 の 所 労使合意に基づく 被用者保険適用対象(短時間労働者) 定 任意の適用 労 働 時 間 20時間 ) 50人 100人 500人 (従業員数) (2024年10月施行) 【企業規模要件を撤廃した場合】 被用者保険適用対象(正社員相当) ( 30時間 週 の 企業規模要件を 所 定 撤廃した場合に 被用者保険適用対象(短時間労働者) 労 対象となる者 働 時 間 20時間 ) 50人 100人 500人 (従業員数) 21 個人事業所に係る被用者保険の適用範囲の見直しイメージ 令和6年12月10日 資料1 第23回社会保障審議会 年金部会 【現行】 個人事業主 法人 常時5人以上の者 5人未満の事業所 を使用する事業所 法定17業種 適用対象 適用対象外 上記以外の業種(非適用業種) 例:農業・林業・漁業、 宿泊業、飲食サービス業 洗濯・理美容・浴場業、娯楽業 デザイン業、警備業、ビルメンテナンス業 任意包括適用 政治・経済・文化団体、宗教 等 非適用業種の解消に伴い 適用対象となる事業所 【常時5人以上の個人事業所の非適用業種を解消した場合】 個人事業主 法人 常時5人以上の者 5人未満の事業所 を使用する事業所 適用対象外 適用対象 全業種 (A) (B) (C) 任意包括適用 【被用者保険の適用事業所(見直し後)】 (A)常時1人以上使用される者がいる、法人事業所 ・・・ 適用対象 (B)常時5人以上使用される者がいる、個人の事業所 ・・・ 適用対象 (C)常時5人未満使用される者がいる、個人の事業所 ・・・ 適用対象外 労使合意により任意に適用事業所 となることは可能=任意包括適用 22 (参考) 被用者保険の更なる適用拡大を行った場合の適用拡大対象者数 令和6年7月3日 資料1 第16回社会保障審議会 ① 90 万人・・・企業規模要件撤廃+非適用業種の解消(A) 年金部会 雇用者全体 (2023年度時点) ② 200 万人 ・・・①+賃金要件撤廃又は最低賃金の引上げ(A+B) D ③ 270 万人 ・・・②+5人未満個人事業所(A+B+C) 5,740万人 ※70歳以上を除く ④ 860 万人 ・・・週10時間以上の全ての被用者へ適用拡大(D) 適用拡大対象者数【万人】 計 1号→2号 3号→2号 非加入→2号 ① 90 40 30 20 ② 200 70 90 40 ③ 270 130 90 50 ④ 860 380 290 200 フルタイム 厚生年金の被保険者 4,780 万人 (フルタイム) 5人未満個人事業所 70 万人 … C 5人未満個人 4,590 万人 ※短時間を含む 5人以上個人事業所 の非適用業種の解消 令和2年改正までの 適用拡大の効果 厚生年金の被保険者 週所定労働時間 (短時間) 企業規模要件撤廃 20 万人 … A 4分の3(注4) 5人以上個人 非適用業種 ※短時間を含む 90 万人 20 万人 70 万人 うち 企業規模 企業規模 企業規模 … A 学生等 20時間以上 100人超 50人超100人以下 50人以下 フルタイム 380 万人 月8.8 万円 110 万人 月8.8 万円未満 … B 2 ( 0 注 万 3) 人 以外 960 万人 20時 う 間 ち 未満 410 万人 10~20 時間 賃金要件撤廃又は 最低賃金の引上げ 580 万人 180 万人 10 時間未満 適用事業所 非適用事業所 (未適用者を含む) 注1.「労働力調査2023年平均」、「令和4年公的年金加入状況等調査」、「令和4年就業構造基本調査」、「令和3年経済センサス」等の特別集計等を用いて推計したもの。 注2.斜体字は、「令和3年経済センサス」等を基にした推計値であり、他の数値と時点が異なることに留意が必要。 注3.学生等には、雇用契約期間2ヶ月以下の者(更新等で同一事業所で2ヶ月以上雇用されている者は除く)が含まれている。 23 注4.通常の労働者の週所定労働時間は、「令和5年就労条件総合調査」における労働者1人平均の値(39時間04分) としている。 令和6年12月10日 第20回年金部会における保険料負担割合を変更できる特例に対するご意見 1/2 資料1 第23回社会保障審議会 年金部会 【労使折半の原則との関係について】 ・ 現在の労使折半の仕組みから外れる特例であることから、その範囲等については限定的に考える必要がある。労働者の 保険料は自らの年金受給権を積み上げるための拠出であり、直接的な対価関係がある一方、使用者は保険料拠出による受 益は間接的であることや、財源負担の比率は労使が厚生年金において対等な立場で貢献していることを示す意味もあるた め、使用者の負担割合を当事者の合意のみによって自由に変更できる仕組みについては、年金受給権の意味や保険運営の 在り方に変異をもたらすおそれがあることに留意する必要がある。 ・ 「年収の壁」の問題による就労調整が労働力不足を招く事態があるとすれば、就労調整の生じる可能性の高い収入層に 限り、労使合意による使用者の負担割合の増加を許容することは特例措置としてあり得る。一方、この特例措置が先例と なり、年金制度において一般化していく布石とならぬように、目的を明確にした上で、時限措置で対象者も限定し、労働 者負担が当事者の合意のみで形骸化しないように、負担割合の変更限度を示す必要がある。 ・ 一番古い社会保険の仕組みである健康保険組合において、労働政策と社会保障政策が重なる部分で、社会保険の負担割 合や運営は労使自治の原則で行われていたことから、労使が社会保険料負担を交渉で調整するのは、健康保険組合同様に 本来の社会保険制度であってもいいはずではないか。 ・ 労働の需要弾力性が弱く、労働供給弾力性が強い現行の経済においては、企業への社会保険料の転嫁が大きくなっても 問題が無い。将来の年金の減額や、税で補塡するといった案と比して、やや課題も残っているが、ベターな案ではないか。 ・ 外国でも使用者負担分が労働者負担分よりも多い例があり、必ずしも労使折半でなければならないわけではない。ただ、 一部のみ調整が許されることには説明が必要だが、今回の仕組みは任意であり、労使折半を維持することも可能。昨今の 深刻な人材不足に対する対応として、優秀な人材を確保するために、社会保険料を多く負担してでもいいから働いてほし いと考える事業者の背中を押すことを可能にする環境にしておく必要性は認められるのではないか。 【制度継続等のデメリットについて】 ・ 壁の中で就業調整することが得だという考えに寄り添う形になり、誤ったメッセージになってしまう。この特例ができ てしまった場合、今度は特例の維持や上限額の引上げにつながり新たな壁となる。その中で就業調整すると男女の賃金格 差が改善されないのではないか。 24 令和6年12月10日 第20回年金部会における保険料負担割合を変更できる特例に対するご意見 2/2 資料1 第23回社会保障審議会 年金部会 【中小企業への影響・配慮について】 ・ 事業主負担割合を増やすことができるのは大企業ではないか。同じ賃金の労働者でも、大企業だと本人の保険料負担は 軽くなって、中小企業だと本人の負担は軽くならないという格差が生まれる。既に健康保険ではそのような状態が存在す るが、これを年金にまで広げることには若干の疑問がある。 ・ 健康保険においても、中小企業によって主に構成される協会けんぽには、保険料負担割合の特例はなく、健保組合のみ 認められている。これを厚生年金に当てはめたとき、事業主の負担割合を上げられる中小企業は少ないと思われる。また、 社内で社会保険料の負担割合に差をつけることは,従業員の少ない企業ではあり得ない。当該案は、企業間の待遇格差を助 長し、人材の流出を深刻化させるだけではないか。したがって、今回の提案には賛成しかねる。 ・ 当該案は、個人の保険料負担の有無や多寡が、労働者の職場選びに影響を与えるようになってしまう。そのことによる 想定外の将来のリスクが十分に考えられていないのではないか。 ・ 今回の提案を含め、労働者への負担軽減措置ばかりが取り上げられており、中小企業における保険料負担の軽減策につ いてもお願いしたい。 【その他】 ・ 実際に誰が交渉するのか、どの範囲まで、どの賃金水準まで交渉するのか、負担割合変更の許容範囲はどこまでなのか を詰めなければいけない。 ・ 一般的には、中立的な制度設計や他の被保険者との公平性を考慮する必要はあるが、特例であれば、要件や条件はかな り絞ることも必要となるのではないか。 ・ 健康保険における負担割合変更は、健康保険組合の規約によって規定されているが、今回の提案を実現する場合、健康 保険と異なり、会社固有の規約等によっては規定されないと想定される。当該案の労使間での実現方法に課題があるので はないか。 ・ 現行の年収の壁・支援強化パッケージよりは優れている。年金制度外から補填しようとしていないことは評価できる。 ・ 被用者保険の適用に伴う就業調整を抑制する必要はあり、事業主に事業主負担の割合を増加させる選択肢を特例として 与えることは、昨今の労働需給の引き締まりも勘案すると、一定の効果を持ちうる。 25 保険料負担割合を変更できる特例についての論点 1/2 保険料負担割合を変更できる特例を導入する場合の論点 保険料負担割合を変更できる特例については、年金部会等において以下の指摘があった。 1.労使折半の原則についての論点 ○ 目的を明確にした上で、時限措置で対象者も限定し、負担割合の変更限度を示す必要があるのではないか。 ○ 使用者は保険料拠出による受益は間接的であることや、財源負担の比率は労使が厚生年金において対等な立場で貢献していることを示す意味もあ るため、年金受給権の意味や保険運営の在り方に変異をもたらすおそれがあることに留意する必要があるのではないか。 → 健康保険法における負担割合変更とは異なり、組合自治の観点が無いことや、給付の性格として年金では保険料負担が給付に一定の比率で反映さ れるものであること、使用者の保険料拠出による受益の程度の差異等に鑑み、仮に年金制度において保険料負担割合を変更できる制度を導入すると しても、以下のように、時限措置とすることや対象者を被用者保険の適用に伴う「壁」を意識する可能性のある者に限定することにより、引き続き 労使折半を原則としてはどうか。 ・ 当該特例が例外的位置付けであることに加え、社会経済の変化によっては「壁」そのものの認識が変わりうることから、被用者保険の適用拡大 の施行状況も勘案した時限措置とする。 ・ 特例の対象を外れるまで長く働く場合も含めて保険料負担による手取りの減少をなだらかにする観点から、保険料負担割合を変更できる特例の 対象標準報酬月額は12.6万円以下とする。 2. 中小企業への配慮についての論点 ○ 特例を利用できるのは大企業が中心になるのではないか。 ○ 大企業と中小企業との間の待遇格差を招くのではないか。 ○ 中小企業の保険料負担の軽減策も必要ではないか。 → 企業規模によらず、利用しやすくなるようにする観点からも、まずは、特例の対象を被用者保険の適用に伴う「壁」を意識する可能性のある者に 限定してはどうか(対象範囲は1のとおり)。また、導入に向けた検討を進める場合は、企業側の保険料負担軽減についても今後検討してはどうか。 26 保険料負担割合を変更できる特例についての論点 2/2 保険料負担割合を変更できる特例を導入する場合の論点 保険料負担割合を変更できる特例については、以下の論点も考えられる。 3.賞与を特例の対象とすることについての論点 ○ 特例の対象者に支給される賞与についても、労使折半ではなく負担割合変更できる特例の対象とするのかどうか。 → 被用者保険の適用に伴い、賞与で手取り減が発生してしまうとそれ自体も社会保険加入を躊躇する要因にはなりうることや、現在の キャリアアップ助成金等の助成措置も対象に賞与を含めていること、健康保険における現行制度も賞与を対象に含めており事務負担の観 点から、特例対象者の賞与についても対象とできることとしてはどうか。 ※ 特例対象者は、標準報酬月額12.6万円以下の者を想定。 4.同一等級に属する者の負担割合をどうするかについての論点 ○ 同一等級に属する被保険者の負担割合を揃えることとするのか、個人ごとに負担割合を設定することを認めるのかどうか。 → 同一の等級に属する者同士の保険料負担の公平性を確保し、企業において導入しやすくする観点から、本特例を利用する事業所内で、 同一の等級に属する者同士の本人負担割合を揃えることとしつつ、等級ごとの具体的な割合は、事業所単位で労使合意に基づき任意に設 定可能としてはどうか。 27 令和6年12月10日 資料1 第23回社会保障審議会 健康保険組合の保険料の負担割合の特例 年金部会 • 健康保険法第162条に基づき、健康保険組合は規約で定めるところにより、事業主の負担すべき一般保険 料額又は介護保険料額の負担の割合を増加することができる。 • この規定は同法施行当時(1927年)から存在し、その趣旨は、事業主と被保険者とが合意の上、保険料 負担の割合を被保険者の利益になるように変更することを認めるものである。 規約により健康保険料の事業主負担割合を増加させている健康保険組合 保険料率負担割合別組合数(令和5年3月末時点) は895組合(64.7%)存在する。 負担割合(事業主:被保険者) 計 50:50 ~ 55:45 ~ 60:40 ~ 65:35 ~ 70:30 ~ 75:25 ~ 80:20 ~ 組合数 488 290 102 231 136 101 17 15 0 2 1 0 0 0 1,383 構成比(%) 35.3 21.0 7.4 16.7 9.8 7.3 1.2 1.1 0 0.1 0.1 0 0 0 100.0% (出典)健康保険組合連合会「健康保険組合の現勢」 参考 熊谷憲一(1927)『健康保険法詳解 訂正3版』 「七、健康保険組合に於ては其の規約を以て事業主の負担割合を増加することを得(健康保険法第七十五条)。 (前略)健康保険組合に在りては事業主が進んで規定以上の保険料を負担せんとする場合に於てを阻止するの必要なく寧ろ奨励すべきもの であるから、事業主と被保険者とが合意の上保険料負担の割合を被保険者の利益に変更することを許したのである。又健康保険法第七十三条 の規定に依る事業主の負担割合の増加に付ても施行令第九十六条及第九十七条に規定する程度以上に事業主の負担割合を増加するも差支へが ないのである。 健康保険法第七十五条に其の規約を以てとあるは、事業主と被保険者と合意の上にて之を規定すべしとの意味である。唯組合設立の当初に 於ては規約は事業主が作成するのであるから事業主が自由に其の負担割合を増加することが出来る。法文の解釈上事業主が保険料全額を負担 し被保険者は何等負担せざる様規約を以て定め得るが如きも、健康保険が被保険者の相互扶助の精神の発揚に基くものとするときは被保険者 が何等の負担をも為さないのは如何かと考へらる。」 ※ 熊谷憲一は健康保険法の立案に参画していた内務省社会局事務官 28 令和6年12月10日 (参考)社会保険料が労使折半とされた経緯① 資料1 第23回社会保障審議会 年金部会 ① 健康保険法の解釈と運用 平成29年度版(法研)(抄) 被保険者が保険料を負担する理由は、被保険者は健康保険の受益者であり、また被保険者相互間の相互救済の精神に 基づく制度であること等によるものである。 これに対して、事業主の二分の一負担義務は、業務外の疾病についても、労働条件、工場設備等の自由が被保険者の 健康を損い疾病にかかりやすい素地をつくる一因をなすものであり、また被保険者の健康保持、すみやかな傷病の回復 は、労働能率の増進等をもたらすことにより産業上に好影響を及ぼし、事業主も共通の利益を有するものであることに よるのである。 次に二分の一の負担割合とした理由は、数理的理由と外国の立法例によったものである。数理的理由とは、法制定当 初は、業務上外と両者を総合した新形式によっており、全病傷事故のうち、業務上の事由によるものは四分の一、業務 外の事由によるものは四分の三という割合になっていた。これに対して、業務上の事由による傷病に関する費用はその 仕質上事業主の全額負担とし、業務外の事由による傷病に関する費用は、ドイツ疾病保険の例により事業主三分の一被 保険者三分の二の負担割合で負担することとし、結局、被保険者と事業主が各二分の一を負担することとなる。すなわ ち、 業務上 業務外 事業主 1/4×1+3/4×1/3=1/2 被保険者 1/4×0+3/4×2/3=1/2 また、外国の立法例をとり入れた理由は、その当時二分の一負担主義の趨勢にあったからで、その理由は、事業主お よび労働者が均等の負担を行い、保険機関の議決機関に同数ずつの議員を選出し、円滑公平に保険運営の運営を行わん がためとされていた。 ② 森荘三郎(1924)『健康保険法解説(訂正増補再版)』 「労働者及び事業主が同額の負担をすることは、統計上から見て決して労働者の利益を害ずるもので無い。加之、健康 保険組合の管理(法案要綱第二十六項)、及び其の審査会の組織(要綱第八十九条)等に就ても、労資の双方が同数の 投票権を持つことに成つて、実際の運用上にも好都合であらうと思う。労資折半主義の長所及び妙味は、寧ろ此の点に 存在すると考へた方が適当であるかもしれない。」 ※ 森荘三郎は、健康保険法案要綱が諮問された労働保険調査会の委員 29 令和6年12月10日 (参考)社会保険料が労使折半とされた経緯② 資料1 第23回社会保障審議会 年金部会 ③ 島崎謙治(2009)「健康保険の事業主負担の性格・規範性とそのあり方」、『社会保障財源の制度分析』 第2は、なぜ保険料を原則労使折半としたかである。ドイツの疾病保険法が労使折半であったためであるという説明 がなされている文献もみられるが、これは正しくない。ドィツの疾病保険の保険料負担が労使折半となったのは1949 年に制定された「社会保険調整法」によるものであり、ドィツの疾病保険法上は1883年の創設以来1949年までは、保 険料の負担割合は、労働者3分の2、事業主3分の1であったからである。 労使折半に関する労働保険調査会における当局側の説明は,「業務上の疾病負傷に付ては事業主に全部の負担を負はし め業務外の疾病負傷に付ては労働者に3分の2、事業主に3分の1を負担せしめ而して業務上の疾病負傷と業務外の疾 病負傷との比は1と4との割合なるを以て此の両者を平均するときは事業主労働者各2分の1宛負担すべきこととなる なり」(内務省,1935,64頁)とされている。要するに、ドィツと異なり、わが国は全額事業主負担とすべき業務上傷病 も健康保険で取り込んだため、業務上傷病と業務外傷病の事故発生率の比(1対4)をドィッの労災保険法と疾病保険 法の事業主負担割合に乗じた結果、ほぼ労使折半となるというものである。ただし、他方で、保険統計データの蓄積が 不十分であるといった説明が行われていること(内務省,1935,232-233頁)を踏まえれば、この統計数理上の理由は、や や理屈の後付けの感が否めない。実際の理由は、むしろ熊谷が「其の他の理由」として指摘する「(1)外国立法例が最 近事業主労働者2分の1主義の趨勢に在ること、(2)2分の1主義が最も公平にして協調の精神を助成すること、(3)各 2分の1の負担を為し事業主と労働者とが協力して健康保険組合の管理を為すに適すること」(熊谷,1926,428-429頁) にあったと思われる。 ちなみに、時代が多少前後するが、1927年に開催された国際労働機関(ILO)総会では、「疾病保険の一般原則に関す る勧告」が採択されており、その中で、保険組織(保険者)は自治の原則に従い管理すべきこと、保険制度の財源は原 則として被保険者の掛金および使用者の掛金により賄うこと等が規定されている。そして、この後出版された熊谷の別 の解説書では、折半負担の理由として、「事業主及労働者が均等の負担を為し保険機関の議決機関に同数宛の議員を選 出し以て円満公平に保険機関の目的を行はむが為である」ことが強調されている(熊谷,1935,633頁)。 以上をまとめると、事業主負担の労使折半の理由としては、統計数理上の理由もさることながら、立案者らは、労使 協調の重視とりわけ健保組合における表決権の労使対等原則を重視していたと考えるべきである。 30 いわゆる「106万円の壁」を意識している第3号被保険者の推計 令和6年12月10日 資料1 第23回社会保障審議会 年金部会 ○ 週所定労働時間が15時間以上であって、いわゆる「106万円の壁」を意識している可能性がある第3号被保険者 は、企業規模100人超で約50万人と見込まれ、さらに今年10月の50人超への拡大で新たに約15万人が加わって、 合計で約65万人と推計される。 ○ この約65万人のうちには、就業調整を行わず厚生年金の適用を希望する方や、たまたま年収がこの水準にとど まっている方がおり、手取り収入の減少を回避して就業調整する方は、さらに少ないことが見込まれる。 年 厚生年金保険料:8,052円 国民年金保険料:16,980円(R6年度) 非 (標報8.8万円の場合の本人負担) 扶 収 2号(令和6.10~) 養 1号 1号(~令和6.9) 1号 2号 130万円 現2号 約13万人 10万人(※1) 31万人(※1) 3万人(※1) (※3) 3号 3号 扶 106万円 養 50万人(※2) 5万人(※2) 21万人(※2) 3万人(※2) 3号 3号 3号 3号 100人以下 勤務先 100人超 ~ 50人以下 非適用個人事業所 企業規模 50人超 ※1 令和4年の基本月給が8.8万~10.8万円かつ週所定労働時間が15時間以上である第3号被保険者の人数 ※2 令和4年の基本月給が7.8万~8.8万円かつ週所定労働時間が15~30時間である第3号被保険者の人数 ※3 令和6年4月時点で、標準報酬月額8.8万~10.4万円の短時間被保険者の人数 (出所)第3号被保険者の人数は「令和4年公的年金加入状況等調査」を用いて特別集計したもの。第2号被保険者の人数は「厚生年金保険・国民年金事業状況」31

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