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特定細胞加工物等の微生物学的安全性に関する指針第2版(案)

再生医療等評価部会 第117回 / 2026-05-28 開催 / 46ページ

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別添 特定細胞加工物等の微生物学的安全性に関する指針 令和8年5月●日 第2版 目次 1 はじめに.......................................................................3 2 特定細胞加工物等の微生物学的安全性の考え方について.............................3 (1) 従事者の無菌操作に関する知識及び手技の習熟...............................4 (2) 製造工程管理 ............................................................5 (3) 無菌試験等の確認試験 ....................................................5 3 微生物学的安全性の確保のための無菌試験の役割...................................6 (1) 工程内管理 ..............................................................6 (2) 出荷判定・投与判断 ......................................................6 (3) 培養工程のない特定細胞加工物等 ..........................................6 (4) 長期保存される特定細胞加工物等 ..........................................7 4 無菌試験の設定における検討事項.................................................7 (1) 投与方法(経路、形態、量を含む。)とリスク................................7 (2) 検出感度の考え方 ........................................................7 (3) 無菌試験実施のタイミングや被験物の選択に関する考え方.....................8 5 無菌試験の選択.................................................................9 (1) 迅速無菌試験法の方法 ....................................................9 (2) 無菌試験の検出感度の設定 ...............................................10 (3) 迅速無菌試験の妥当性の確認方法 .........................................11 (4) 無菌操作と記録 .........................................................11 6 特定細胞加工物等製造施設における環境モニタリングと清掃........................11 7 特定細胞加工物等の輸送・保管中の管理..........................................13 8 投与後の監視..................................................................13 別添1 迅速無菌試験法の具体例....................................................14 別添2 再生医療等提供計画における記載方法........................................18 別添3 迅速無菌試験法の性能と特定細胞加工物等への適用............................20 別添3補遺 無菌試験の代替として核酸増幅法(NAT)を用いる場合の考慮事項 .........21 (1) 迅速無菌試験法としてのNATの位置付け ...................................21 (2) NATの実施方法における留意点............................................21 (3) NATの設定に当たっての技術的考慮事項....................................22 (4) 被験検体からのゲノムの抽出、増幅、検出操作についての技術的考慮事項......23 別添4 無菌操作工程における無菌性を担保するために留意すべき事項 ..................27 (1) 細胞採取における留意点 .................................................27 (2) 細胞の移送における留意点 ...............................................27 (3) CPCにおける留意点......................................................27 (4) 無菌操作における留意点 .................................................27 (5) 培養CO インキュベーターの取扱い........................................28 2 (6) 無菌操作処理後の資機材等の取扱いの留意点................................28 別添5 環境モニタリングについて..................................................29 (1) 特定細胞加工物等製造区域ごとの環境管理基準値............................29 (2) 環境モニタリングの頻度 .................................................29 (3) 微粒子測定 .............................................................30 (4) 微生物測定 .............................................................30 別添6 特定細胞加工物等製造施設の清掃・消毒について..............................32 (1) CPCの清掃・消毒について................................................32 (2) CPCの清掃・消毒頻度について............................................32 (3) CPCの清掃・消毒手順について............................................32 (4) 製造に用いる機器の清掃・消毒手順について................................33 (5) 消毒剤について .........................................................33 別添7 環境モニタリングで異常値が検出された場合に求められる対応 ..................35 (1) 環境モニタリングで異常値が検出された場合の考え方........................35 1 別添 (2) 清浄度管理基準の逸脱の考え方 ........................................... 35 (3) 区域に応じた清浄度管理基準の逸脱時の対応の考え方 ........................ 37 (4) 原因解明と対策 ......................................................... 39 (5) 対策後の管理区域の清浄性の確認の考え方.................................. 40 別添8 特定細胞加工物等の輸送・保管中の管理について .............................. 43 (1) 輸送・保管における無菌性担保 ........................................... 43 (2) 輸送・保管における温度管理、輸送時間及び使用期限の管理 .................. 44 特定細胞加工物等の適切な無菌試験の実施に関する検討会議 ............................ 46 構成員 ............................................................................ 46 〔本文書で用いる略称〕 法:再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成25年法律第85号) 施行規則:再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行規則(平成26年厚生労働省令第110号) 施行通知: 「「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」、 再生医療等の安全性の確保等に関する法律施 行令」、 再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行規則」等の取扱いについて」(令和7年5月 15 日 付け医政研発0515第18号厚生労働省医政局研究開発政策課長通知)「 【第2版における主な変更内容】 ・本指針の対象を特定細胞加工物等に拡大 ・無菌試験の代替として核酸増幅法(NAT)を用いる場合の考慮事項(別添3補遺)を作 成 ・特定細胞加工物等製造施設の清掃・消毒について(別添6)を一部更新 ・環境モニタリングで異常値が検出された場合に求められる対応(別添7)を作成 ・特定細胞加工物等の輸送・保管中の管理について(別添8)を作成 2 別添 1 はじめに 滅菌工程の適用が不可能な特定細胞加工物等(法第2条第6項に規定するものをいう。 以下同じ。)の提供において、安全性を確保する上で最も重要な課題の一つは、細菌や真 菌、ウイルスなどの微生物汚染による感染症への対策である。細菌等に汚染された特定細 胞加工物等の投与により局所感染や敗血症などの重篤な有害事象が惹起される可能性があ り、特定細胞加工物等の製造工程での汚染の防止や特定細胞加工物等の無菌性を確認する 試験(無菌試験)を実施するなど、十分な安全対策が求められる。製造工程での汚染の防 止では、原料の採取から培養工程などの製造・加工操作や製造・加工における衛生環境、 さらに製造した特定細胞加工物等の患者への提供といった一連の過程において十分な管理 を実施することが求められる。また、こうした微生物学的安全性の確保においては、無菌 操作といった技術の習熟、その環境維持や業務手順の最適化による製造工程管理とともに、 特定細胞加工物等の品質管理として、無菌試験をはじめとした微生物汚染が起きていない ことを確認することが重要な柱となる。本指針は、主な対象である特定細胞加工物(法第 2条第4項に規定するものをいう。)に加え、滅菌工程の適用が不可能な核酸等(法第2 条第5項に規定するものをいう。患者由来の核酸等を含む。)を含む特定細胞加工物等を 対象とし、特定細胞加工物等の微生物学的安全性を確保するための考え方及び推奨事項を 示すものであり、個々の再生医療等のリスク、製造方法、提供体制等に応じて、科学的合 理性に基づき適切に適用されるべきものである。 2 特定細胞加工物等の微生物学的安全性の考え方について 再生医療等に用いる特定細胞加工物等の微生物汚染を防止するためには、1)「細胞の採 取、2)特定細胞加工物等の製造、3)輸送、及び4)医療機関での投与に至る一連の過 程においてリスク管理策を講じることが必要である(表1)。このため、法においては、 再生医療等提供基準に基づき、再生医療等提供計画においてこれらの過程における安全性 の確保策を規定し実施すること、特定細胞加工物等の培養加工の工程について無菌操作を 含む技術の習熟のための教育研修を履行すること、特定細胞加工物等の製造を行う特定細 胞加工物等製造施設(以下 CPC」という。)の構造設備や製造・品質管理等の規定を設け、 遵守することが義務付けられている。 本指針は、これらの法令上の義務を履行する上で、細胞の採取方法、特定細胞加工物等 の製造や投与方法等がそれぞれ異なる特定細胞加工物等について、再生医療等の提供にお ける各過程に求められる具体的な微生物汚染のリスク管理の方法を示すことを目的として いる。 表1 特定細胞加工物等の微生物学的安全性に関わるリスク管理事項 1.細胞の採取 ・細胞の採取方法に応じた無菌操作 2.特定細胞加工物等の製造 3 別添 ・特定細胞加工物等の製造従事者の無菌操作等の技術の習熟と教育 ・製造工程の管理 ・無菌性の確認試験の実施(工程内管理試験や提供の可否を判断するための試験) ・環境モニタリングと清掃・消毒 3.輸送 ・細胞を採取した施設からCPCへの輸送 ・特定細胞加工物等のCPCから医療機関への輸送 4.医療機関での保管・投与 ・医療機関での保管(有効期間) ・投与における清潔操作 なお、特定細胞加工物等に対する無菌試験その他の微生物学的安全性評価は、微生物汚 染リスクの低減を目的として実施されるものであるが、被験用量、試験法の検出感度、製 造から投与までの時間的制約等により、全ての微生物汚染リスクを完全に排除できるもの ではない。このため、再生医療等を提供する医師又は歯科医師は、当該再生医療等の微生 物学的安全性確保の考え方及びその限界について、再生医療等を受ける者に適切に説明す ることが望ましい。 (1) 従事者の無菌操作に関する知識及び手技の習熟 特定細胞加工物等製造事業者は、特定細胞加工物等を製造する CPC の清浄度管理区 域・無菌操作等区域等で作業に従事する職員及び特定細胞加工物等の製造に使用する細 胞又は微生物等の培養加工等に係る作業に従事する職員について、法令等に基づき、以 下の事項を順守することが求められる。なお、関係法令の改正やガイドラインの発出又 は改訂に伴い手順書等を改訂する場合には、作業に従事する職員に内容を周知徹底する こと。 ・ 微生物等による汚染を防止するために必要な措置に関する教育訓練を実施すること (施行規則第109条第3号関係) ・ 当該教育訓練に関して、作成する手順書にその詳細を定めること(施行規則第 97 条 第4項第9号関係) ・ 教育訓練担当者を指定すること(施行通知Ⅶ(72)省令第109条関係) ・ 製造手順等を変更するときは、関連する文書の改訂、職員の職業訓練その他所要の 措置を採ること(施行規則第104条第1項第2号関係) ・ 教育訓練の実施に関する記録を作成し、法令上必要な期間保管すること(施行規則 第109条第5号及び第110条第3号関係) 当該教育訓練の実施については、教育訓練を受ける各職員が有する経験と知識・技能 を踏まえた上で、少なくとも以下の事項について満たすことができるよう計画すること。 ① 教育訓練には少なくとも以下の内容を含むこと(これらの内容を全て同時に行う 必要はないが、文書化された計画に基づいて逐次実施すること)。 4 別添 (ア) 微生物学の基礎知識 (イ) 無菌操作法の知識と技術面 (ウ) 製造設備と製造環境の清浄度に関する理解 (エ) 消毒法・滅菌法・清掃などに関する理解 (オ) 作業衣のガウニングや作業者の衛生面 (カ) 汚染された無菌製品が投与された場合に起こる危険性 ② 新たに作業を行うこととなる者には、事前の教育訓練を行うこと。 ③ 既に教育訓練を行った者には、原則として年1回以上の再教育訓練を行うこと。「 ④ 教育訓練の効果は定期的に実際の手順を踏まえた技能評価※等により評価し、一定 以上の成績をおさめた者のみが作業に従事できるようにすること。 ※ 液体培地を用いて実際の無菌操作の製造手順を模擬すること等による無菌操作 プロセスシミュレーションに参加することで、作業実施者の無菌操作の技能の 習熟度を評価することが望ましい。具体的な方法については、PIC/S「GMP ガイ ド「アネックス2Aの無菌プロセスシミュレーションが参考となる。 (2) 製造工程管理 細胞培養を含む特定細胞加工物等の製造を行う者の無菌操作に関する知識及び手技の 習熟に加え、その無菌環境を含め、十分に評価された製造工程を確立すること、更に確 立された工程について特定細胞加工物等標準書(施行規則第96条関係)及び特定細胞加 工物等の適切な取扱いを定めた製造管理基準書(施行規則第97条第2項関係)を定め、 それらに基づいた製造を行うことが法令上義務付けられている。その際、製造工程の十 分な清浄性を担保するための CPC の管理(清浄な製造環境の整備)などを定めた衛生管 理基準書(施行規則第 97 条第1項関係)、特定細胞加工物等の検査手順等を定めた品質 管理基準書(施行規則第97条第3項関係。品質管理マニュアルとして定められることも ある。)及びその他の詳細な手順書(施行規則第 97 条第4項関係)を策定し、これらに 基づき、適切な管理及び試験を実施することも求められる。 (3) 無菌試験等の確認試験 これらの手順書等に基づいた工程管理や CPC の清浄性管理、そのための無菌操作技術 の習熟を通じて、無菌工程操作が十分に機能していることを確認するために、適切な製 造段階(工程内や投与前など)での微生物学的安全性を確認する試験の実施が求められ る。具体的には、細菌や真菌等の汚染の有無を確認する無菌試験やマイコプラズマによ る汚染の有無を確認するマイコプラズマ否定試験等がこれらに該当する。この中でも特 定細胞加工物等の無菌性を確認するための無菌試験は極めて重要である。 このように、特定細胞加工物等の工程管理や基準書・手順書等に基づいた無菌操作と無 5 別添 菌試験等の確認試験は、特定細胞加工物等の製造工程における微生物汚染に対する安全性 の確保の両輪として位置付けられる。 3 微生物学的安全性の確保のための無菌試験の役割 法の下での再生医療等の提供に用いられる特定細胞加工物等には、1)製造量が限られ ているテーラーメイドの加工物である場合や、2)生きた細胞を用いることから製造から 投与までの間に十分な時間を確保することが難しい場合があり、医薬品等の品質規格を定 める日本薬局方等で求められているような無菌試験(以下 局方無菌試験」という。)を 厳格に適用することが困難であることも多いという特徴がある。 局方無菌試験の適用が困難な特定細胞加工物等にも適用可能な無菌試験として様々な迅 速無菌試験法が開発されており、特定細胞加工物等の最終的な提供の可否の判定のみなら ず、工程内管理としてもこのような迅速無菌試験の実施が求められる。 (1) 工程内管理 迅速無菌試験は、製造工程における微生物汚染の早期発見、交差汚染の防止、汚染が 起きたときの原因究明などで重要な情報を提供する。特定細胞加工物等の製造における 工程管理には、採取した細胞の播種から、細胞の培養・加工、さらに投与のための細胞 の回収といった一連の工程の適切性を担保することが求められる。このような工程中で の無菌試験は、工程内管理の一貫として、微生物による汚染の早期発見のために利用さ れる。特に、細胞加工物の培養が一週間以上に及ぶ場合には、微生物による汚染に気が 付かずに細胞加工物を培養し続けてしまうことによる汚染の拡大を防止するため、工程 内管理として特定細胞加工物等の中間体の無菌試験を実施することが必要である。 (2) 出荷判定・投与判断 最終産物である特定細胞加工物等の出荷判定や投与の可否の判断のためには、適切な タイミングでの無菌試験の実施が必要である。無菌試験では、特定細胞加工物等の特性 に応じて、試験法を設定する。具体的には、使用する無菌試験法の標榜上の検出感度 (検出限界)等に加え、投与量や投与部位・経路等に応じて、検査に用いる被験検体の サンプリング方法や量も含めて無菌試験の感度等を事前に確認する。このような確認を 行った上で、特定細胞加工物等を用いた再生医療等の提供の可否を判断するための試験 法として特定細胞加工物等の製造時に適用することが必要である(別添1、図2)。詳 細については、 4.無菌試験の設定における検討事項」を参照すること。 (3) 培養工程のない特定細胞加工物等 第三種再生医療等として最も多く提供されている多血小板血漿(以下 PRP」という。) 等、培養工程がなく、製造工程そのものが非常に短時間である特定細胞加工物等がある。 このような特定細胞加工物等の場合、万が一、微生物の迷入があった場合でも製造工程 6 別添 中での増殖リスクは低いと推察されるため、製造工程での菌の増殖リスクが低いと判断 した場合には、十分な汚染防止対策を前提に無菌試験の実施を不要とする選択肢もあり 得る。ただし、製造した特定細胞加工物等を長期に保存する場合や体内で免疫細胞によ る監視が存在しない無菌的部位(関節腔、腹腔、髄腔等)への投与を行う場合には、無 菌試験の実施を考慮すること。また、製造した特定細胞加工物等の一部について定期的 に無菌試験を実施し、製造工程の無菌性の検証を行うことが求められる。 (4) 長期保存される特定細胞加工物等 製造された細胞加工物又は核酸等を極低温の安定な条件に保存し、必要に応じて解凍 して患者に投与する特定細胞加工物等では、製造した特定細胞加工物等の提供の可否を 判断する無菌試験に要する時間的制約は大きなものではないと考えられる。このような 場合、培養法を用いた感度の高い無菌試験法を実施することが望ましい。 4 無菌試験の設定における検討事項 (1) 投与方法(経路、形態、量を含む。)とリスク 通常、無菌製剤である医薬品においては、極めて高い検出感度(試験に供した被験検 体あたり1コロニー形成単位(以下 cfu」という。))を用いた無菌試験(局方無菌試 験)の実施が求められるが、時間的、量的制約のある特定細胞加工物等においては、こ うした局方無菌試験に沿った試験実施を求めることは現実的ではない場合がある。その ため、投与方法や投与量によるリスクを考慮し、局方無菌試験の実施が困難である場合 は、リスクベースの迅速無菌試験を実施することが有用である(別添1表1、図2)。 例えば、採取した細胞を培養し製造した特定細胞加工物等を血中に投与する場合には 高いリスクが想定され、無菌試験の実施が必須である。一方、数10mLの自己血液から医 療機器として承認されたキットを用いて PRP を調製し、抜歯等の後の止血や組織再生を 目的に使用(皮下投与)する場合には汚染による感染症発症のリスクは低く、無菌試験 の実施を不要とする判断が可能な場合もあり得る(別添1表2)。ただし投与部位を含 めたリスクの評価が必要である。その一方で培養工程を伴わない特定細胞加工物等であ っても定期的に無菌試験を実施し、無菌製造工程の完全性を担保することが重要である (3(3)参照)。 (2) 検出感度の考え方 無菌製剤に適用される医薬品の局方無菌試験の検出感度は、1cfu/被験検体とされ、 実質的に被験検体に対してほぼ 100%の無菌性を担保しているが、このような感度を特 定細胞加工物等に適用することは試験に供しうる被験検体量や時間的制約等から現実的 でない場合がある。一方で、非培養条件又は数日程度の培養下での濁度の目視やグラム 染色のみを、無菌試験として採用することは検出感度の点から無菌試験法として不適切 7 別添 である(ただし、培養法と併用した迅速無菌試験を工程の確認のための試験や被験検体 を濃縮して、その濃縮物に対してグラム染色試験を用いることはあり得る)。 迅速無菌試験法として利用される各種試験法の標榜上の検出限界値(Limit-of- detection:LOD)(以下、 標榜検出感度」という。)を別添1表1に例示している。こ こに示している検出感度は、各試験法での検査対象とした被験検体に含まれる細菌に対 する 標榜上の検出感度」であり、無菌試験の対象(特定細胞加工物等、その培養液又 は適切な洗浄液。以下 被験物」という。)の全体量に占める試験に供するために採取 する被験検体の用量(以下 被験用量」という。)の割合やメンブランフィルター法な どの濃縮法の適用の有無によって最終的に求めるべき被験物の全体量に対する検出限界 値(以下 目的検出感度」という。)は異なる。すなわち、標榜検出感度は、目的とす る個別の特定細胞加工物等に対して必要とされる目的検出感度を表しているわけではな いことに注意する必要がある。検出感度の考え方の詳細については、5.(2)①を参 照すること。 (3) 無菌試験実施のタイミングや被験物の選択に関する考え方 どの無菌試験をどのタイミングでどの被験物を用いて実施するかは、提供される再生 医療等のリスク分類(第一種、第二種、第三種)や製法の違いで異なる。例えば、第一 種では同種細胞から製造された特定細胞加工物等がロットを形成している場合もあり、 その場合、構成するロット中から適切な数量の被験検体をサンプリングし、無菌試験に 供することによって、構成するロット全体の無菌性を評価することも可能となる。 また製法における培養の有無や、培養期間の違い(短期か長期か)、特定細胞加工物 等の凍結保存の有無などによって適用できる無菌試験や無菌試験の最適な実施時期が異 なる。 例えば、3~4日の比較的短期の培養工程で、培養工程中に微生物培養法を用いた迅 速無菌試験を実施した場合、再生医療等の提供の可否を判断、又は提供するまでに最終 産物における無菌試験の陰性確認を行うことが不可能な場合が多い。したがって、この ような短期間しか培養しない場合には、出荷判定又は提供の可否の判断を目的として培 養法以外の迅速無菌試験を実施することが有用であり、培養法を用いた無菌試験を別途 実施する場合には、その結果は工程管理の一環である工程内試験か、中間体試験として 位置付けられる。ただし、被験検体採取以降の工程を閉鎖系の無菌化工程として実施で きることが確認でき、無菌化工程以降で菌の増殖が否定できる場合にはこの限りではな い。最終産物を被験物とする場合には試験結果が得られるまでの時間も考慮する必要が あり、試験の検出感度に加え、試験実施のタイミングについても十分に考慮すること。 また、特定細胞加工物等を外部機関に委託して製造している場合には、委託機関から の輸送に時間を要する可能性があり、迅速無菌試験法の実施から患者への投与までに時 間が空いてしまう可能性がある。このため輸送等の間に検査時点では検出限界以下であ 8 別添 ったわずかな汚染菌の増殖を引き起こす可能性も危惧される。このため、無菌試験の結 果を適用できる有効期間を規定しておくこと。また、このような迅速無菌試験法では検 出できなかったわずかな汚染が顕在化するリスク等を考慮して輸送時の温度管理(施行 規則Ⅶ(48)省令第 99 条第1項第 25 号関係)や不適切な取扱いによる汚染防止や交差汚 染の防止対策(施行規則Ⅶ(43)省令第 99 条第1項第 11 号関係)をあらかじめ検討する こと。また、実際の輸送時における温度等の記録も保管しておくこと。 なお、培養・加工工程で適用する無菌試験が増殖性の生きた微生物の有無を確認でき るものである場合には、特定細胞加工物等を用いた再生医療等が提供された後に結果が 判明するものの場合であっても、陽性反応が出た場合の迅速な患者対応が可能となる。 そのため、迅速無菌試験を実施した場合であっても、提供後を含めた包括的なリスク管 理の一環として培養法による無菌試験を実施することが有用である。 したがって、特定細胞加工物等の無菌試験として、最終産物である特定細胞加工物等 のみならず製造工程中での無菌試験の実施タイミングを含めて、どの試験をどの段階で 実施するかは、目的とする特定細胞加工物等の製造方法の特性や、工程内管理として用 いるのか、出荷判定又は人への投与判断に用いるのかという目的によっても異なる(別 添1図1)。無菌試験に求める感度の適切性については、投与する特定細胞加工物等の 量や投与部位なども考慮して判断する必要がある(別添1)。 5 無菌試験の選択 (1) 迅速無菌試験法の方法 再生医療等安全性確保法に基づく特定細胞加工物等に利用可能な迅速無菌試験用の検 査キットや検査機器が開発されている(別添1表1)が、特定細胞加工物等の細胞特性 等によって、メーカーが標榜しているような十分な感度が得られないケースもある。そ の選択に際しては、試験法の標榜検出感度や精度(得られた検査値がどれだけ真の値に 近いか)が、目的とする個別の特定細胞加工物等に適用できることをあらかじめ評価す ること。 ただし、ほとんどの迅速無菌試験法に用いられるキットや機器のバリデーションは開 発メーカーが実施しており、それを再生医療等提供機関やその製造受託を行っている特 定細胞加工物等製造事業者が再度実施することを意味するものではない。例えば、特定 細胞加工物等の製造では、様々な培地成分や薬剤が用いられており、その培地成分や培 養・加工に用いている原材料等が試験系を阻害することがないかなど、被験物が試験に 対して干渉を示さないこと、すなわち採用しようとしている標榜感度や精度が、適用し ようとしている個別の特定細胞加工物等で得られることを確認しておくことを意味する ものである。 9 別添 (2) 無菌試験の検出感度の設定 ① 特定細胞加工物等に使用する迅速無菌試験の検出感度の考え方 無菌試験で必要とされる感度の考え方としては、被験物の全体量から被験用量(試 験に供するために採取する被験検体の用量)をどれだけ設定するかが重要となる。被 験用量は無菌試験法の種類によって大きく異なっている点にも留意が必要である(別 添1表1)。例えば、100mL の培養液(細胞洗浄液なども含む。)を被験物として、そ こから1mL の被験検体を採取して試験を行う場合、使用する無菌試験の標榜検出感度 が被験用量あたり 10cfu であったとしても、被験物の全体量から考えた目的検出感度 は、1000cfuしか得られないことになる(下記式)。 [被験物の全体量] 〔目的検出感度〕=〔標榜検出感度〕× [被験用量] その一方で、例えば、被験物として培養液又は洗浄液全量を対象としてメンブラン フィルター法を適用し、混入する微生物をトラップした当該メンブランをそのまま試 験に供した場合には、被験物の全体量を用いて無菌試験法を適用したことになる。こ のように、メンブランフィルター法は無菌試験法の感度を向上させるための手法の一 つとして挙げられる。 以上のとおり、被験物の全体量における被験用量の割合の関係性によって目的検出 感度を設定することが必要である「(別添1図2)。 ② 被験物の種類 無菌試験の実施において、被験物としてどの検体を用いるかも検出感度や精度に大 きく影響する。無菌試験に供する被験物の選択に関しては、投与のタイミングとも関 連するが、特定細胞加工物等の出荷判定又は投与の判断の目的で実施する場合は製造 した細胞加工物又は核酸等を対象として検査を実施することが基本となる。一方で、 製造後に直に投与する計画の場合又は最終産物の培養上清や細胞懸濁液を被験物とし た方がより高感度に測定できる場合といった、検出感度等の点から合理的な理由があ る場合もあり得る。また、接着細胞やオルガノイド等の培養工程において無菌試験を 実施するときには、培養上清を採取し、試験に供すること、特定細胞加工物等として リンパ球などの懸濁培養を行っている場合には細胞懸濁液のまま又はその遠心上清を 試験に供することも想定される。ただし、このような場合には、無菌試験実施以降の 工程での汚染を十分に防止する工程管理上の対策が必須となる。また、このような被 験物の違いが、アッセイの手法や検出感度に大きく影響することがあり、採取した検 体により検出感度がどのように影響を受けるのかをあらかじめ確認し、適切性を評価 しておくこと。この評価においては、どの検体を用いた場合に最も効率よく汚染を検 出できるのかを踏まえて被験物の設定が求められる。 10 別添 特定細胞加工物等を採取し、出荷の判定やその投与の可否を判断するための無菌試 験としては、1)投与する細胞懸濁液以外に、2)細胞洗浄液、3)最終産物の培養上 清、などを被験物として実施することが想定される。ただし、細胞の特性や培養条件 などによっても最適な被験物が異なる可能性がある。 (3) 迅速無菌試験の妥当性の確認方法 迅速無菌試験に用いるキットや機器は、多くの場合、その開発メーカーや製造企業等 が検出感度、精度、正確性、頑健性などの評価(バリデーション)を実施していると想 定される。このような無菌試験キット等を利用する場合には、必ずしも企業等で実施さ れたバリデーションを繰り返して確認する必要はないが、目的とする特定細胞加工物等 に適用した場合に、標榜検出感度等が得られるかについては、あらかじめ個別に評価し ておくこと。 例えば、培地に抗菌性物質などが含まれている場合、培養法を併用した無菌試験を実 施したとしても、残存する抗菌性物質の静菌作用により十分な増殖が得られず偽陰性と なる可能性がある。また、培地成分に核酸増幅法(以下 NAT」という。)を阻害する因 子が含まれる場合、検体から抽出した核酸にも阻害物質が残存していれば NAT の感度が 低下する可能性がある。 (4) 無菌操作と記録 無菌試験や無菌操作については、法に基づいて、特定細胞加工物等概要書及び標準書 並びに衛生管理、製造管理、品質管理の各基準書を整備することに加え、特定細胞加工 物等の品質の照査に関する手順を手順書として具体化し、製造管理の一環として、それ に従った操作及びその記録により実効性を十分に担保すること(施行規則第103条関係)。 具体的には、実施した無菌操作の重要な工程や無菌試験の結果を記録しておくこと。ま た、試験の結果については、陰性の結果のみならず陽性コントロールや陰性コントロー ルを用いている場合には、その結果などの関連データも記録しておくこと(施行規則第 99 条第1項第3号関係)。更に、無菌試験に用いるキットのロットナンバーが更新され た際もその情報を記載し、ロット変更時等には改めて標榜検出感度等が得られるか再確 認を行うこと(施行規則第99条第1項第4号関係)。 6 特定細胞加工物等製造施設における環境モニタリングと清掃 特定細胞加工物等の製造においては、施行規則に規定される製造管理の一環として、清 浄度管理区域、無菌操作等区域及び無菌操作等区域への前室を含む作業室及び作業管理区 域の清浄性確保のために環境モニタリングを定期的に実施すること(施行規則第99条第1 項第9号関係)。環境モニタリングは、無菌操作等区域の清浄度を確認することが本来の 目的であるが、その他の作業管理区域における環境モニタリングで検出された微生物を同 11 別添 定しておくことにより、当該環境中に多く存在する微生物を把握し、どのような微生物に 対して十分な感度を持った無菌試験を実施するべきかが明確になる。特に採取時に汚染が 起こりやすい検体を取り扱わなければならない製造を行うようなケースでは重要である。 清掃や消毒は CPC の構造設備の清浄度を保ち汚染リスクを低減させるために必須である。 清掃・消毒・除染は各施設の特定細胞加工物等製造事業者が作成する標準作業手順書に定 められた方法に従い、日常的及び定期的に実施し、その結果を記録・保管すること(施行 規則第99条第1項第7号関係)。 環境モニタリングと清掃の具体的な手法については、それぞれ別添5及び別添6を参照 すること。なお、CPC の構造設備については取り扱う特定細胞加工物等の特性等に応じて 異なることから、これらの文書を基本とし、各 CPC の特性に応じてその手法を定めること。 また環境モニタリングにおいて逸脱が検出された場合には別添7を参照し、逸脱管理を 行うこと。 12 別添 7 特定細胞加工物等の輸送・保管中の管理 特定細胞加工物等の輸送・保管過程には、出荷判定規格を満たし出荷可能と判定された 後の、出荷前保管、輸送(輸送中の保管を含む。)、医療機関での投与前の保管(解凍後投 与前までの保管過程を含む。)が含まれる。出荷前保管及び再生医療等提供機関への輸送 の過程は、製造工程の一部として捉えられ、CPC での適切な管理が求められる。一方、再 生医療等提供機関における保管過程においても、その管理が不十分であれば、出荷判定に おいて無菌性を確認したにもかかわらず、微生物の混入や基準値を超える増殖等の逸脱を 引き起す可能性がある。特定細胞加工物等の輸送の過程においては、施行規則に規定する 輸送について、特定細胞加工物等の品質の確保のために必要な措置」(施行規則第 99 条 第 1 項第 25 号)として、運搬容器、運搬手順(温度管理、輸送時間管理等を含む。)等の 輸送の条件が遵守され、特定細胞加工物等標準書に規定された条件が維持されていること を確認することが必要であり、定められた輸送・保管の管理等に逸脱が生じた場合には当 該特定細胞加工物等の提供を中止する等の対応を取ることが求められる。具体的な輸送・ 保管管理の考え方については別添8を参照すること。なお、輸送業者又は保管業者に輸 送・保管の全部又は一部を委託する場合には、委託業務を適正に管理すること。 8 投与後の監視 特定細胞加工物等を投与した後の疾病等の発生の有無の把握は、提供される再生医療等 の安全性を確保する上で必須である。特定細胞加工物等の投与後に疾病等の発生を速やか に把握するため、投与後の患者の健康状態をフォローアップする体制を整備(施行規則第 18条及び第19条関係)するとともに、投与後の健康状態の確認の記録を保管すること(法 第 16 条関係)。特定細胞加工物等の過剰な目的作用や目的外作用による疾病のみならず、 特定細胞加工物等の微生物汚染によって菌血症や敗血症等の徴候が現れないかを投与後の 一定期間健康状態を監視することが重要であり、投与された微生物の菌量が少ない場合や 微生物の種類によっては、一定時間が経ってから発症することもある点に留意すること。 このため、投与後、患者が帰宅する場合にも健康状態の把握の重要性を伝え、何らかの兆 候があれば、速やかに再生医療等を提供した医療機関に連絡するように指示すること。 13 別添 別添1 迅速無菌試験法の具体例 再生医療等に用いる特定細胞加工物等の迅速無菌試験に適用可能な数多くの試験キット や検査機器が販売されている(表1)。ただし各試験法に用いられるのは単一の手法に限 られず、例えば NAT であれば、用いるゲノムの抽出法、増幅法、増幅産物の検出法などの 様々な組み合わせによる手法が用いられており、さらには一連の手法をキット化した製品 が販売されている。 生きた細胞を本質とする特定細胞加工物は製造後の有効期間が短く、十分な検出感度を 持った無菌試験の実施は難しいことが想定されており、表1に示した迅速無菌試験法では、 医薬品等の品質基準を定めた公定書が求める水準の検出感度を達成することは困難とされ ている。ただし、どれだけの検出感度を持つ無菌試験を実施すべきかについては明確な基 準はない。米国における公定書である米国薬局方(USP)では、米国における病院内の細 菌感染の調査から、投与物に100cfuを超える微生物汚染があった場合に、投与された者に 感染症が発生することを報告している。その一方で、細胞治療においては投与部位による リスクの違いがあり、皮下や皮内などは発症リスクが比較的低く、静脈注射は高リスクと され、米国薬局方(USP「GC1071)では投与量や投与部位を考慮したリスクベースの考え方 が提唱されている(表2)。 表1.迅速無菌試験法での標榜検出感度と試験に要する時間、被験用量 標榜検出感度 分析法 試験時間 被験用量(mL) (cfu) グラム染色 104~105 30分 0.1 呼吸法(CO 産生、O 消費) 1~10 1~7日間 10程度 2 2 培 ATP による生物発光(培養法と 1~10 2~7日間 1~1000 養 の併用) 法 マイクロカロリーメーター ~104 2~7日 1 (培養法との併用) ATPによる生物発光(非培養) ~103 30分 1~1000 直 6~8時間(増 フローサイトメトリー 10~100 0.1~2 接 幅) 法 核酸増幅法(NAT) 10~100 2~4時間 0.2~2 固相サイトメトリー 1~10 2~3時間 1~1000 参 局方無菌試験法(EP,「JP,「USP公 理論値:1~3 14日間 40~500 考 定書) JP:日本薬局方、EP:欧州薬局方、USP:米国薬局方 迅速無菌試験法は、検体を培養することにより高感度に検出可能(1被験検体あたり 1 ~10cfu)な試験法(培養法)と、培養を行わず、菌の有無の代替指標となるシグナルを 検出する直接法(1被験検体あたり 10~100cfu 前後)に分類される(表1)。表に示した それぞれの試験法の標榜検出感度が、そのまま目的検出感度となるわけではないことに注 14 別添 意する必要がある。表1には試験に用いることのできる被験用量の幅を記載しているが、 特定細胞加工物等の量や試験系によって被験用量は大きく異なる。このため目的とする特 定細胞加工物等やその培養上清等の被験物の全体量に対する被験用量の割合が非常に少な いと、十分な検出感度が得られない可能性がある。迅速試験法の適用にあたっては、被験 物の全体量に対する被験用量の割合と迅速試験法の標榜上の検出感度の関係性を考慮して、 十分な目的検出感度を設定する必要がある。 表2.投与量や投与部位による感染症伝播リスク 投与部位(ルート) 代表的な投与量(mL) リスクレベル 皮内 <0.1 非常に低 皮下 <1 低 筋肉内 <0.3 中程度 髄腔内 1~10 高 静脈カテーテル静注 1~60 比較的高 ピギーバック点滴静注 25~250 高 点滴静注 >250 高 また対象とする被験物の全体量に対する被験用量については、米国薬局方(USP1071) に考え方が示されている(表3)。 表3.迅速無菌試験における被験物の全体量に対する被験用量の割合の考え方 被験物の全体量 被験用量 1mL以下 複数検体の1バイアル 1~40mL 1mL 40~100mL 20mL 100mL以上 10%又は20mL以上 ただし表3は、用いる迅速無菌試験法との組合せによっては、この考え方に従う必要は なく、例えば被験物全体をメンブランフィルターで濾過することによって微生物をトラッ プした場合は、被験用量にかかわらず、被験物全体を対象に検査を行ったことと同等の検 出感度が得られると考えてよく、それに ATP 産生を測定する生体蛍光法を適用することに より高感度な検出が可能になる。 (1)培養法 表1に例示した培養法を併用した迅速無菌試験法は、菌を培養して増幅し、それを高 感度な手法を用いて検出しようとする方法であり、公定書である日本薬局方(JP)無菌 試験法で提示されている14日間の培養をより短時間の培養で置き換えようとする手法と 考えることもできる。検出手法の改良(ATP 産生、O 消費・CO 産生、微小カロリー産生) 2 2 15 別添 により短期間で判定が可能であるが、菌の特性(好気性菌か嫌気性菌か、至適培養温度、 培地成分、糖質の資化性)が異なるため、できるだけ多くの菌種を増幅可能な複数の条 件で培養することが重要となる。いずれにしても2~7日間の培養を行うことで直接法 より高感度な測定が可能である。ただし、特定細胞加工物等の出荷判定や投与の可否の 判断に用いるには時間的制限がある。このため、このような手法は、むしろ、製造工程 での無菌性を保証するための工程内管理試験として有用性がある。さらに基準書に従っ た特定細胞加工物等の製造の妥当性を示すことにもなる(図1)。 細胞採取(採血、骨髄採血、脂肪吸引等) 細胞加工物の回収 長期培養工程(2~3週以上) 工程内管理試験 工程内管理試験 出 荷 工程内管理試験により汚染の早期 判 採 検出、交差汚染リスクの低減化 定 取 試 細 胞 培養工程(3~4日程度) 凍結保存 解凍 験 ・ の 出 投 無 荷 菌 細胞加工物の回収 工程内管理試験(凍結中) 与 / 判 性 投 断 確 培養工程(3~4日程度) 与 目 認 的 の 細胞加工物の回収 試 験 最小限の加工工程(培養以外.細胞の純化等) 回収直後に投与する場合は 採取 NATなどの迅速無菌試験法 図1 製法の違いに応じた無菌試験の適用(例) 一方、特定細胞加工物等を製造後、一定期間超低温で安定に保存し、必要に応じて解 凍後、患者に投与する場合には、その出荷判定や投与の可否を判断するための試験とし て迅速無菌試験法(培養法)を用いることが可能である。ただし、細胞を解凍後、さら に一定期間培養後に投与する場合には、出荷判定又は患者への投与可否を判断するため、 追加的に迅速無菌試験を行うことが求められる(図1)。 (2)直接法 一方、直接法では、細菌や真菌に特異的なリボゾーマル RNA(rRNA)の遺伝子が種間 の保存性が高いことを利用し、これらの遺伝子の特定共通配列を PCR 等により増幅して 検出する NAT や、生きた菌体が産生する ATP を生物発光の原理を用いて高感度に検出す 16 別添 る方法、あるいは、生きた菌体の中で菌の酵素により強い蛍光物質に代謝される化学物 質を菌に取り込ませ、生成した蛍光物質の有無を固相サイトメトリーによって検出する 方法がある。 いずれの試験法も数時間から8時間ほどで結果が得られることから、調製した特定細 胞加工物等の投与の可否を判断する試験として使用が可能とされている。ただし、NAT やフローサイトメトリー法に適用できる被験用量には制限(表1)があり、表2に例示 したような十分な被験用量を用いた試験が適用できない可能性がある。この場合、適切 な検出感度を担保するための方策としては、1)大量の培養上清等から多数(大用量) の被験検体を採取し、試験を実施する、2)被験検体を濃縮して試験を実施することな どの対応が必要となる。対象とする被験物からどの程度の被験用量を採取するかという ことと、標榜検出感度によってどれだけの目的検出感度で無菌性を確認できるかについ ての関係の具体例は図2を参照すること。 標榜検出感度 被験物100mLに含ま 被験検体 1mL(被験用量) れる微生物量 に含まれる微生物量 10 2 「cfu 10「cfu 1「cfu 1mLを無菌試験用に採取 試験結果 10 4 「cfu 10 2 「cfu 陽性 陽性 陽性 10 3 「cfu 10「cfu 陰性 陽性 陽性 無菌試験 10 2「 cfu 1「cfu 陰性 陰性 陽性 10「cfu <「1a「 cfu 陰性 陰性 陰性 図2 被験物の採取量(被験用量)、標榜検出感度と試験結果の関係 上記(1)培養法や(2)直接法による迅速無菌試験法に関しては、高感度化を含め て様々な試験法が開発されており、濃縮等による高感度化、検出手法の高感度化、アッ セイの自動化や検出手法の迅速化など、様々な手法が提案されている。用いる特定細胞 加工物等の製造工程やその特徴に応じて、利用可能であることを評価することが重要で あり、個別にバリデーションを求めるものではないが、特定細胞加工物等に適用した時 に、採用しようとする迅速無菌試験法が標榜検出感度や精度が担保できることを確認す る必要がある。 17 別添 別添2 再生医療等提供計画における記載方法 再生医療等提供計画においては、再生医療等提供機関が作成する 特定細胞加工物等概 要書」、CPC が作成する 特定細胞加工物等標準書」及び各基準書(無菌操作を担保するた めの 衛生管理基準書」、細胞加工物等の無菌操作や製造工程において操作法や操作にお ける確実性を担保する管理法などを定める 製造管理基準書」及び工程内試験や投与の可 否を判断するための 品質管理基準書」をいう。)に、無菌性を担保するための操作法や 試験法などを記載する必要がある(施行規則第8条、第96条及び第97条関係)。 以下に、特定細胞加工物等標準書における記載例を示す。 記載例 特定細胞加工物等の製造工程 製造工程 製造工程の概略 製造工程での操作法や検査 (1) 細胞分離・単離工程 ・・・ (工程管理①) 工程管理試験②:培養上清2mLを無菌的に 採取し、メンブランフィルターでろ過す (2) 細胞培養工程 る。ろ過後メンブランフィルターを無菌的 (工程管理②、中間体①) に取出し、2~7日間30℃で、2種類の培地 を添加して培養。培養後ATPによる生物発 光の有無を検査:判定基準 陰性 (3) 遺伝子導入工程 ・・・ (工程管理③、中間体②) (4) 最終培養工程 ・・・ (工程管理④) (5) 充填工程 ・・・ 特定細胞加工物等の規格・試験法 規格 判定基準 試験方法 1)細胞数:○○個以上 2) 細胞生存率:〇%以上 3) 細胞マーカー:〇+細胞 ○○%以上 4) 感染症検査(提供1日目 と4時間前) 培養上清2mlを無菌的に採取し、抽出キッ (1) 無菌試験:陰性 トAによりDNAを調製(100µL)。調製し 18 別添 たDNA溶液5µLを用いて16SrRNAゲノム検 出用qPCRにより検査:判定基準 陰性 (2) マイコプラズマ否定試 験:陰性 (3) エンドトキシン試験: 〇EU/mL未満 5) … *感染症検査は提供4時間前と 出荷当日に培養液を用いて行 うが、提供の可否は提供4時 間前の結果を持って行う。 19 別添 別添3 迅速無菌試験法の性能と特定細胞加工物等への適用 迅速無菌試験の実施に際しては、市販されている測定キットや専用の機器が用いられて いることが多い。その一方で、試験に供する特定細胞加工物等や培養液の違いによって、 その適用方法が異なる可能性がある。このために、適用する特定細胞加工物等の特性に応 じて、市販されている機器等のプロトコールを最適化する必要がある。すなわち、検査キ ットや機器等が標榜する検出感度や精度が得られることを確認するとともに、常に目的と する検出感度が得られていることを試験ごとに確認することが重要である。 このためには、適切な陽性ランコントロール及び陰性ランコントロール*1 を設定し、試 験の成立を確認することが必要である。また得られた結果は、単に陰性の確認のみを記載 するのではなく、用いたランコントロールの結果についても記録として保存しておく必要 がある。 無菌試験において微生物の増殖アッセイの評価に用いるモデル菌種としては、以下の表 4のものが挙げられることから、無菌試験の性能評価にあたっては参考とすること。 表4.微生物の増殖アッセイの評価に用いる代表的なモデル菌種 (EP細胞培養製品の迅速無菌試験 EP2.6.27) 菌種 推奨菌株 好気性培地 Staphylococcus aureus ATCC 6538, NCTC 10788, NCIMB 9518 Bacillus subtilis ATCC 6633, Pseudomonas aeruginosa ATCC 9027, NCIMB 8626, CIP 82.118 Candida albicans ATCC 10231, IP 48.72, NCPF3179 Aspergillus brasiliensis ATCC 16404, IP 1431.83, IMI 149007 嫌気性培地 Clostridium sporogenes ATCC 19404, CIP 79.3, NCTC 532 or ATCC 11437 Bacteroides fragilis ATCC 25285, CIP 77.16, NCTC 9343 *1:核酸増幅試験では、対象とする検体からのゲノムの抽出、増幅操作の日内変動や日間 変動等を管理するために規定値(一般的には定量限界量)を含む陽性ランコントロール及 び陰性ランコントロールを同時に検査し、試験の成立の確認に用いる。 20 別添 別添3補遺 無菌試験の代替として核酸増幅法(NAT)を用いる場合の考慮事項 迅速無菌試験としてのNATの選択と試験結果の取扱い (1) 迅速無菌試験法としてのNATの位置付け 迅速無菌試験法として NAT を利用する場合はゲノム配列の保存性が高いリボゾーマル RNA(rRNA)をコードする DNA 配列(rDNA)を標的として設定されることが多い。これは rDNA が複数のコピーを持っていることが多く、より高感度に検出が可能であることもそ の要因である。一方、さらに高感度な測定を目指して 16S「rRNA を標的として RT-PCR 法 等により増幅反応を実施する試みもされているが、非常に不安定な RNA を標的とするた めに技術的な課題が多い。また、無菌検査法としては必ずしも広く使用されているわけ ではない。「 NAT で rDNA を検出する場合には、菌種によらず広く測定可能な保存配列が選択される ことが多い。また、そのような保存配列を標的としたプライマーが設計されたキットも 市販されている。一つのプライマー・プローブセットではなく複数の配列を標的とした マルチプレックスプライマー・プローブセットを用いたキットも開発されているが、幅 広い菌種を全て網羅する測定系の開発は容易ではないとされる。ただし、特定細胞加工 物等の迅速無菌試験として、自然界の全ての菌種を標的とすることは必ずしも求められ ているわけではなく、表4.微生物の増殖アッセイの評価に用いる代表的なモデル菌種 を参考として、CPC 等における製造工程、細胞採取、さらには用いる全材料や皮膚常在 菌などから汚染が生じる可能性のある菌種が確実に検出できる NAT を採用することが有 用である。 (2) NATの実施方法における留意点 ① CPCにおいてNATを行う場合の留意点 CPC内において、迅速無菌試験としてNATを実施する場合、後述するようにNATによ って増幅した産物による施設内の汚染を防止することが検査を適切に実施する上で重 要なポイントとなる。すなわち、NAT は数コピーという非常に少量の標的配列までを 増幅できる技術であり、増幅産物が施設内に漏れ出した場合に、重大な汚染を起こし、 本来陰性となるべきランコントロールまで陽性になってしまうことがある。このため に空間的な汚染防止対策が非常に重要となる。また迅速無菌試験として NAT を適用す る際には、実施者の技術的な習熟度が非常に重要であり、教育のみならず実際の技術 習熟度を評価するための検定も実施する必要がある。「 一方、施設内で NAT による検査を実施することにより、最終産物やそれに近い工程 での検査が可能になり、より投与に近いタイミングで試験が実施できるという利点は ある。 21 別添 ② 外部委託でNATを行う場合の留意点 外部検査機関等で NAT による無菌試験を実施する場合には、十分な施設要件を満た すとともに、高感度な NAT を実施することができる専門性を有する者によって試験が 実施されるべきである。陽性コントロールの取り扱いなどの懸念点もあることから、 NAT のために限定した施設を用いることが望ましい。また試験の委託に際しては、被 験検体の移送や被験検体からの抽出のタイミングを含めて試験結果に影響を与えない ことを確認しておく必要がある。一方で、外部検査機関で NAT を行う場合には、被験 検体の輸送を含めて判定結果が得られるまでに時間を要するために、迅速に結果が得 られないという欠点がある。 さらに試験結果が得られるまで、製造した特定細胞加工物等を保管する場合、保管 期間中に微量な汚染菌の増殖が起こる可能性についても検討しておく必要がある。 NAT は局方無菌試験に比べると、検出限界値が高く微量の汚染を見逃がす可能性があ ることを念頭に置く必要がある。このため、例えば、NAT で検出できない微量の汚染 が起きている可能性も想定し、委託先の外部検査機関での試験終了までの保管条件に も十分に配慮する必要がある。さらに、特性細胞加工物等の機能等に影響しない範囲 で、微量の汚染が生じていたとしてもその増殖が起こらないような条件に保管してお くことが望ましい。 (3) NATの設定に当たっての技術的考慮事項 NAT を特定細胞加工物等の迅速無菌試験法として採用する際には、その NAT が目的に 照らして十分な検出感度や精度をもっていることを確認するために、1)検出可能な菌 種、2)どのような被験物に適用可能か、3)被験検体からの核酸抽出操作法・抽出効率、 4)核酸抽出した被験検体の核酸増幅機序と増幅産物の検出法、5)「キャリーオーバーな どの妨害要因の排除、6)「得られた結果からの判定基準やアルゴリズム、などを評価して おく必要がある。 ① 標榜検出感度や精度が得られるかの確認 迅速無菌試験用 NAT キットとして当該キットを開発した企業がすでに十分なバリデ ーションを実施している場合には、試験法全体のバリデーションを再度実施する必要 はないが、適用しようとする特定細胞加工物等に対して開発企業が標榜する標榜検出 感度や精度が得られることを確認する必要がある。検出感度は通常 95%以上の感度で 検出されるゲノム量を検出限界値(Limit-of-detection;LOD)として規定されるこ とが多く、これは定性的検出限界と定義されている。一方、定性的検出限界の3倍量 が定量的検出限界とされ、この定量的検出限界の被験用量(ゲノム量)については採用 した NAT で必ず検出できなければならない量として検出系の感度設定が行われる。ま た後述する各試験における陽性ランコントロールは基本的にこの定量的検出限界量を 用いて行うことになる。ただし、このような非常に低濃度ランコントロールを正確に 22 別添 調製する難しさもあり、より高濃度(例えば定性的限界の10倍量)のランコントロー ルを同時に測定することも有用である。 採用した NAT を目的とする検体に適用した場合に十分な標榜検出感度をもった検出 手法であること確認する必要がある。例えば、市販されている迅速無菌試験法用の NAT キットを採用する際には、適用しようとしている特定細胞加工物等(又は代替と なる被験物等)を用いて、キットの標榜検出感度が得られることを確認することが重 要である。 ② 被験物において目的検出感度が得られるかの確認 NAT による検出では、5.(2)①の考え方に基づき、標的配列の増幅効率だけでな く、被験物のうち被験検体としてどれだけの量(被験用量)をサンプリングして NAT の検査に供するのか、さらに適切なゲノム抽出手法となっているのかを確認すること が高感度に検出するために重要となる。すなわち、NAT の増幅効率がいかに高くても、 目的ゲノムの抽出効率が十分ではない場合や、被験物全体量に対する被験用量の割合 が非常に小さい場合には目的とする被験物に対して十分な目的検出感度が得られない ことが想定される(別添1図1)。 このため用いる NAT の標榜検出感度の評価に際しては、どのような抽出法を用いる のかを十分に検討した上で、被験物に対して十分な目的検出感度で微生物汚染の検出 ができる被験用量、抽出法となっているかを確認する必要がある。これは、核酸抽出 用キットを用いた場合に、適用する被験物の種類(例えば細胞懸濁液を用いるのか、 その代替として培養上清液や細胞洗浄液などを用いるのか)によって核酸抽出効率が 大きく変わる可能性があり、このため、NAT を用いた迅速無菌試験を実施する場合に は、核酸抽出効率を踏まえた被験物に対する目的検出感度を評価することが重要であ る。 (4) 被験検体からのゲノムの抽出、増幅、検出操作についての技術的考慮事項 ① 増幅産物による環境汚染・偽陽性リスクの低減 核酸増幅の検出方法としては、増幅産物を電気泳動により分離検出する方法やクロ マトチップなどを用いて検出する手法など多様な手法が開発されている。ただし、こ のような検出手段は増幅産物を開放系に持ち出して検出する必要があり、そのために 増幅産物の検査環境への汚染を防止する対応が必要になることに注意が必要である。 すなわち増幅産物が環境へ放出され、検査環境そのものが汚染されると、次の NAT に よる増幅検査で前回の増幅産物の持ち込みによる偽陽性を起こす可能性が生じる。こ のために、NAT の試薬調製、検体からのゲノム抽出、抽出したゲノム検体を用いた増 幅反応液の調製、最後に核酸増幅とその検出を上流から下流に流れるような一方向の 操作を行い、最終的な増幅産物が逆流しないようなシステムを構築する必要がある (図3)。 23 別添 real-time「PCR のように増幅産物を開放して扱う操作がない場合にはこのような汚 染リスクは少ないが、用いた反応プレートのシールの剥がれなどが起きないようにし、 使用済みのプレート等を適切に廃棄することにより増幅産物の汚染を防止することが 非常に重要である。いずれにしても、核酸増幅産物等の環境汚染を防ぐための対策が、 再現性のある、高感度な検査の実施において重要であり、図3に示したような安全対 策が強く推奨される。 ② 環境常在微生物の菌種の確認 採用しようとする NAT の妥当性及び検出可能な菌種の情報に関しては、CPC におけ る環境モニタリングによる環境常在微生物の菌種の情報や細胞採取、原材料からの汚 染の可能性等を含めて選択する必要がある。汚染の要因としては採取時、細胞加工時、 培養工程、原材料からの汚染などが想定される。このために環境モニタリングによっ てどのような菌種が検出されることがあるのかを確認しておくことも重要である。ま た皮膚常在菌など高頻度で汚染を起こす菌種が確実に検出できることを示すことも重 要である。 ③ 検出された環境常在微生物を用いた確認 NAT での検出感度の確認においてはこれらの菌種を被験検体に添加して抽出、増幅 試験を行い、十分に微生物のゲノムの回収・検出が可能であることを示すことも重要 である。 ④ 核酸抽出に用いる資材のDNA汚染リスク 被験検体から用手法により核酸抽出を行う場合には、用いるチップやチューブなど のプラスチック製品が、細菌由来 DNA に汚染されていることがしばしばある。このた めに、DNA 汚染のないプラスチック製品を選択する必要がある。すなわち一部のプラ スチック製品は製造環境や保存、流通などの環境からの細菌由来 DNA の汚染があるこ とが知られており、そのために DNA 汚染のないものを選択することにより検出のバッ クグランドを低減する必要がある。 ⑤ 特定細胞加工物等に由来するゲノムの目的検出感度への影響 被験物の選択については、例えば迅速無菌試験に供する特定細胞加工物等が浮遊培 養か接着培養で増幅する細胞であるかなども考慮する必要がある。基本的には製造し た特定細胞加工物等からサンプリングして試験を行うべきではあるが、製造後にでき るだけ早く患者に投与しなければならないケースなど時間的な制限から、最終工程に おける培養上清や細胞洗浄液などを代替として用いるケースも多い。例えば培養上清 から採取する場合でも浮遊培養を行う場合では汚染菌と特定細胞加工物等の細胞成分 を分離することは困難であり、目的とする細胞ごと核酸抽出を行う必要があることも 想定される。このような場合、核酸抽出した被験物には共存する特定細胞加工物等か らのゲノムが多く混在することにより感度が大きく影響される可能性がある。そのた めに細胞量を変化させた標準菌を細胞懸濁液に播種して核酸抽出を行い、最適な被験 24 別添 細胞量を決定する必要がある。一方接着細胞であれば、培養上清を被験物とすること によりかなりの量の検体から汚染微生物由来のゲノムを抽出可能である。また、回収 した培養上清の遠心操作等により菌を濃縮することもでき、より高感度な解析が可能 となる。 ⑥ 自動核酸抽出装置を用いる場合の留意点 被験物からの汚染微生物由来のゲノムの抽出操作法としては、キット化された核酸 抽出法が用いられることも多い。あるいはキットと自動核酸抽出装置の組合せにより、 サンプリングした被験検体を装置にセットするだけで、抽出操作が完了できるものも ある。ただし、このような自動化装置では、最終的に得られる核酸抽出液量が機器の 設定上相当量のボリュームを持っているために、抽出液の一部しか核酸増幅反応に用 いることができないこともあり、このような抽出機器の設計のために目的検出感度の 制限が生じることがある。 ⑦ 被験用量と目的検出感度の関係 最終産物である特定細胞加工物等によっては量的に制限があるが、迅速無菌試験に 供する被験用量によって目的検出感度が異なる。目的とする被験物から非常に少ない 被験検体を採取する場合には偽陰性を生じるリスクがある(別添1図2)。適切な被 験用量を採取して試験を実施することが重要である。 ⑧ Direct「NATの留意点 核酸(ゲノム)を抽出後に NAT を実施するのではなく、被験検体に含まれる汚染微 生物を特殊な検体溶解液で可溶化し、その可溶化された溶解液中のゲノムの一定量を 直接反応液に添加し、NAT により増幅する方法(例えば Direct「PCR)も開発されてい る。ただ、ゲノムを溶出させるための溶解液に含まれる菌体を溶解させる成分(溶解 剤)が NAT 反応を阻害することが知られており、NAT 反応を行う際にはこのような溶 解剤の影響を避けるために希釈を行った上で増幅反応を実施する必要がある。したが って、その希釈操作による感度の低下を含め、どれほどの目的検出感度が得られるか について、被験物に標準菌などを播種して確認しておくことが必要である。 ⑨ 等温増幅法(LAMP法等)の留意点 増幅反応としてはアニーリングとポリメラーゼ反応の温度サイクルを繰り返す PCR 反応ばかりでなく、LAMP 法や SmartAmp 法等の等温増幅反応も知られている。いずれ の NAT 反応においてもターゲットとする目的ゲノム配列を増幅するためのプライマー セットの選択が非常に重要となる。例えば一対のプライマーセットだけではなく、よ り広範な微生物を検出するために複数のプライマーセットを用いることも多い。市販 キットを用いる場合にも、プライマーセットが検出可能な微生物を考慮して選択する 必要がある。 ⑩ カットオフ値の設定 増幅反応での考慮事項として、例えば PCR 反応では増幅サイクル数が多くなるほど 25 別添 非特異反応も増加することが知られており、適切なカットオフ値を設定する必要があ る。特に real-time「PCR ではサイクル数のカットオフ値を設定し、陽性の判定基準を 明確にしておく必要がある。さらに、陰性コントロールは必ず陰性として判定できる カットオフ値となるサイクル数として設定するべきである。 ⑪ ランコントロールの考え方 NAT による微生物の検出では、陽性ランコントロールや陰性ランコントロールを同 時に測定し、適切な判定ができていることが確認された時に初めて汚染の有無を判定 できる。すなわち、用いる陽性ランコントロールや陰性ランコントロールは被験検体 と同様の被験物に添加し、抽出操作を含めて陽性、陰性の判断基準とする必要がある。 陽性ランコントロールや陰性ランコントロールを核酸増幅工程だけに用いたのでは抽 出操作が適切に実施できているのかの確認ができていないことになる。ただ検査室の 設定上、生きた菌体を陽性ランコントロールとして用いることが困難な場合には、煮 沸不活化した被験検体や凍結検体を用いて生きた被験検体をオープンに取り扱わない ような対応を行うことが想定される。 ⑫ 判定基準やアルゴリズムの設定 例えば被験物を複数用いて NAT を行う場合などでは、それぞれの試験結果が異なっ た場合に判定基準や再検査の規定(手順)を設定しておく必要がある。さらにそれぞ れの試験結果を記録に残しておくことが求められる。 CPC 無菌試験用検体 2 ゲノム抽出 1 試薬保管・調製 抽出試薬 ゲノム抽出後の検体 3 4 核酸増幅試薬 NAT反応液作製 増幅反応・検出 図3 一連のNAT工程 「 26 別添 別添4 無菌操作工程における無菌性を担保するために留意すべき事項 (1) 細胞採取における留意点 ・ 清潔な採取:原料である細胞・組織は、滅菌済みの医療機器や資機材を用い、必要な ガウンテクニックにより無菌的に採取を行うこと。 (2) 細胞の移送における留意点 ・ 清潔な移送:採取した検体は無菌性が担保できる容器に保存すること。採取した容器 は専用の清浄なボックスに入れて、適切な温度管理の下CPCまで移送すること。 (3) CPCにおける留意点 ・ 無菌操作における着衣:オートクレーブ等の処理がされた無塵衣、シューズ又はオー バーシューズ、キャップなどを着用すること。 ・ CPC 内使用物品(消耗品、什器備品等)の消毒処理等:洗浄、消毒用アルコール、紫 外線(UV)処理等によりCPC内の使用物品を消毒処理し、適切な換気を行うこと。 ・ 設備床面及び壁面の材質・構造:洗浄、殺菌処理が容易なコーティング処理等を行う こと。定期清掃や衛生管理検査を実施するとともにその記録を行うこと。 ・ 外部から基材等の持ち込み:パスボックス等を用いた搬入・搬出を実施し、ヒトの導 線と区別すること。 (4) 無菌操作における留意点 ・ 無菌操作前の準備及び終了時:クリーンベンチ等は UV 照射(10~30 分、終了後5~ 20分)及び、換気をすること。 ・ 細胞処理:培養液・細胞処理酵素類、ピペット等(ピペット等はオートクレーブ等に より滅菌)、チップ等の搬入:クリーンベンチ等への搬入直前に消毒用アルコールの 噴霧及び拭き取りをすること。 ・ 原料細胞・組織のクリーンベンチ等への搬入に容器等の表面の除染を行い、汚染防止 に留意すること。 ・ 細胞操作前の準備:清浄度管理区域への入室の際には手袋(手術用等)を装着するこ と。加えて、クリーンベンチ等での作業にあたっては追加の無菌手袋を装着すること が望ましいこと。 ・ 細胞加工操作:細胞・組織を入れた容器を取り出し、汚染が生じないように細胞加工 操作を実施すること。 ・ 分離操作における汚染防止対策:遠心操作、フローサイトメトリー、磁気ビーズ分離 では操作中の汚染が生じやすいことから、細心の注意を払って操作を実施すること。 27 別添 (5) 培養CO インキュベーターの取扱い 2 ・ CO インキュベーターの庫内エアーをUV処理すること。 2 ・ 交差汚染防止、取違防止のため、可能な限り1品目ごとに使用し、共用を回避するこ と。やむを得ない場合には庫内での交差汚染防止策をとること。 (6) 無菌操作処理後の資機材等の取扱いの留意点 ・ ヒト細胞と接触した基材(消耗品):搬出搬入は別ルートで外部へ持ち出すとともに 感染性廃棄物として処理すること。 ・ 再使用機器:洗浄処置するとともにオートクレーブ等で滅菌処理すること。 ・ 培地成分等:培地容器は細胞加工物ごとに使用し共用しないこと。少量の培地や酵素 類は分注して保管し、一回ごとに使いきること。 28 別添 別添5 環境モニタリングについて 特定細胞加工物等製造区域の環境モニタリング 特定細胞加工物等製造区域の環境モニタリングの主な目的は、①特定細胞加工物等製造 区域がそれぞれ設計された十分な清浄度、微生物制御能が達成され、維持されていること を確認すること、及び②特定細胞加工物等製造環境中の微粒子数、微生物数が適切に制御 されていることを確認することである。 (1) 特定細胞加工物等製造区域ごとの環境管理基準値 特定細胞加工物等製造環境の空中浮遊微粒子は、空調システムの稼動状況を把握する 重要な指標の一つであり、生物学的には微生物の担体となり得る。製造区域ごとに要求 される作業中の空気の清浄度及び環境微生物の許容基準を表6及び表7に示す。 表6.空気の清浄度 作業時許容空中 浮遊微粒子 適用する清浄度 作業区域・領域の名称 区域・領域環境の役割 (0.5µm以上) レベル (個/m3) 汚染リスクが十分に低減 無菌操作等区域 され、細胞加工物を開放 3520 A 可能な環境 隣接する無菌操作区域の 清浄度管理区域(1) 清浄度への影響を考慮す 352000 B べき環境 無菌操作区域に隣接せ 3520000/予め 清浄度管理区域(2) ず、製造作業の品質を考 C/D 決めず 慮する環境 表7.環境微生物の許容基準(作業時) 空中微生物 表面付着微生物 Grade 浮遊菌 落下菌 コンタクトプレート手袋 (CFU/m3) (CFU/プレート) (CFU/24~30cm3) (CFU/手袋) A 生育なし B 10 5 5 5 C 100 50 25 - D 200 100 50 - (2) 環境モニタリングの頻度 特定細胞加工物等製造区域では、浮遊微粒子及び微生物のモニタリングが必要であり、 29 別添 細胞加工物や核酸等が環境空気と直接接触するグレード A においては、適切な頻度で浮 遊微粒子や微生物のモニタリングを行うこと。作業時のモニタリング頻度は作業シフト ごと、作業終了時等において実施すること。 (3) 微粒子測定 微粒子数の測定には、粒径別に計測できるパーティクルカウンター(微粒子計測器)を 用い、0.5µm 以上及び 5µm 以上の大きさに分類して適切な清浄度が得られていることを 確認すること。無菌操作等区域における作業時の微粒子モニタリングにおいては、原則 として作業準備を含め連続モニタリングとすること。 (4) 微生物測定 環境モニタリングに用いられる微生物測定法には、浮遊菌数測定法、表面付着菌数測 定、落下菌数測定法などがある。浮遊菌又は表面付着菌の捕集や測定に関しては、種々 のサンプリング装置及び方法があるため、モニタリングの目的及び対象物によって、適 切なサンプリング装置及び方法を選定する。 ① 培養による測定 1. 浮遊菌数測定 一定量の空気を吸引する方法で、サンプリングした空気の容量あたりの菌数を測定 する。浮遊菌数測定のサンプリング量は、モニタリング対象区域の清浄度やモニタリ ング頻度などの総合的な根拠考察により、適切なサンプリング量とする。特に、グレ ードAでは、浮遊菌の1回のサンプリング量は1m3とする。 2. 表面付着菌数測定 付着微生物のサンプリング面積は採取する対象物の形状や状態により適宜選定する。 i) コンタクトプレート法 原則として機器や器具表面からの採取面積は24「~「30cm2とし、サンプリング箇 所に、コンタクトプレート全体を均等に数秒間接触させる。 ii) スワブ法 無菌材質のスワブを適切なリンス液に浸し,あらかじめ規定された表面積を拭 き取ることによってサンプリングを行う。サンプリング後、スワブを適切な一定 量のリンス液に入れて攪拌し、適切な方法で微生物数を測定する。 iii) 粘着集菌法 粘着剤を塗布したサンプリングシートを検査対象物に均等に貼付し、剝がす。 この操作を同一箇所について。複数回繰り返す。 3. 落下菌数測定 測定場所でカンテン培地を入れた一定の大きさのペトリ皿(通例,直径 9cm)の蓋を とり、一定時間放置後,表面に落下した微生物を培養し、集落数を計数する。本法は、 30 別添 一定体積中の微生物の総数を定量的にモニタリングするには有効でないが、製品又は 装置が空中に浮遊する微生物によって汚染される可能性を、長時間モニタリングでき る利点がある。使用時の注意点として長時間の曝露条件で、培地が乾燥して菌の発育 を阻害することがないことを確認すること。落下菌数測定で得たデータは、これ以外 の浮遊菌数測定の結果と組み合わせて考えることが有用である。 4. 培養 環境モニタリングでは,微生物を再現性よく検出する培養条件を採用する。培地と その培養条件は、目的とした微生物によって異なる。培養日数については、通例5日 間以上とされるが、信頼性の高い集落数の計測値が得られたと判断される場合に限り, 培養5日間以前の計測値を採用してもよい。また、嫌気性細菌を対象とする場合には、 嫌気培養とする。 ② 迅速法による微生物測定 迅速法においては多くの場合、従来の培養法と比較して短時間のうちに測定結果を 得ることが可能である。一般に以下の三つの観点から科学的に検証された装置を使用 する. i) 捕集法(ろ過,衝突,粘着,空気の吸引など) ii) 検出シグナル(蛍光,発光など) iii) 検出装置 なお,迅速法においては従来の培養法よりも、多くの場合,得られる微生物の測定 値は高くなることから、使用に際しては、機器の適格性評価、校正方法についても十 分に検討すること。また,培養法とは測定原理が異なるため、許容基準に関しては科 学的論拠を基にそれぞれ設定する必要がある。その際、結果として従来法に比較して、 同等以上の微生物管理ができるように設定すること。 31 別添 別添6 特定細胞加工物等製造施設の清掃・消毒について (1) CPCの清掃・消毒について CPC の清浄度管理にとって、清掃・消毒は重要な項目の一つである。衛生管理基準書 には、構造設備の衛生管理に関する事項として、次の事項を記載するよう求められる。 i) 清浄を確保すべき構造設備に関する事項 ii) 構造設備の清浄の頻度に関する事項 iii) 構造設備の清浄作業の手順に関する事項 製造機器及び作業室に関し、清浄度を維持管理し、特定細胞加工物等への汚染防止を 行うために、清掃方法について留意する必要がある。清掃は、清掃だけに留まらず、そ の後に行う消毒作業の前処理としても重要な作業である。CPC では、清掃作業時に発生 する菌汚染が懸念されるため、清掃と消毒をセットにして作業を行うのが、清浄度維持 に効果的である。 (2) CPCの清掃・消毒頻度について 清掃・消毒の頻度については、清浄度区分、作業室の換気回数、作業室の使用頻度、 動線、入室した作業員の延べ人数、入室時の装備等、様々な要因により、CPC の汚染状 態が異なると想定されるため、施設毎の作業頻度や作業内容を考慮した設定が不可欠で ある。 すなわち、作業室で模擬操作あるいは製造を行い、浮遊塵埃及び付着菌、浮遊菌、落 下菌の検査を実施して汚染状態の測定を行い、その結果に基づき、清掃・消毒の頻度を 決定するのが望ましい。頻度については、製造時のみならず非製造時についても設定を 行う。CPC の清浄度を保つには、ただ漠然と、頻度を設定するのではなく、測定データ に基づき、設定するのが望ましい。 (3) CPCの清掃・消毒手順について 清掃手順は、施設により異なるが、代表的な手順を記す。 ① 床・壁・天井 1. 事前に滅菌が必要な清掃器具等は、二重包装した滅菌バッグ等に入れ、高圧蒸気滅 菌で滅菌を行う。また、マイクロファイバークロス等の医療機器を用いる場合は、 ステンレス容器等に蒸留水等を入れたものに浸し、高圧蒸気滅菌で滅菌を行う。 2. 製造作業の終了を確認する。 3. 空調機の稼動を確認する。 4. 消毒剤を吸い込まないよう、モニタリングシステムのパーティクルカウンター用の 吸引ポンプを停止するとともに、パーティクルカウンターの吸い込み口を密閉する。 5. 製造機器、備品、火災報知機や各種センサー等、消毒剤がかかると錆など影響があ 32 別添 るものには、必要に応じてポリエチレンフィルムで養生を行う。 6. HEPAフィルター又はULPAフィルター付きの掃除機で吸引清掃を行う。 7. 消毒剤塗布器で消毒剤を塗布し、所定時間放置する。消毒剤塗布器で塗布し難い場 所は、手で塗布する。 8. 所定時間放置後、ディスポーザブルのマイクロファイバークロス等をセットし、消 毒用アルコールを染み込ませたモップで清拭する。モップで清拭しにくい場所は、 手で清拭を行う。 9.パスボックス等は滅菌物を搬入するための重要な設備であり、使用ごとに清掃と除菌 を行うこと。 ② 作業机・ドア・ドアノブ・その他備品 1. 滅菌されたディスポーザブルのマイクロファイバークロス等に消毒用アルコールを 染み込ませたもので、塵埃や汚れを除去する。 2. 滅菌されたマイクロファイバークロス等に消毒剤を染み込ませたもので、拭き上げ、 所定時間放置する。 3. 滅菌されたマイクロファイバークロス等に消毒用アルコールを染み込ませたもので、 清拭する。 (4) 製造に用いる機器の清掃・消毒手順について ① 外装 1. 予め、滅菌されたディスポーザブルのマイクロファイバークロス等に消毒剤を染み 込ませたもので、外装を拭き上げ、所定時間放置する。 2. 所定時間放置後、滅菌されたマイクロファイバークロス等に消毒用アルコールを染 み込ませたもので、清拭する。 ② 内部 1. 予め、滅菌されたディスポーザブルのマイクロファイバークロス等に消毒剤を染み 込ませたもので、内部を拭き上げ、所定時間放置する。 2. 所定時間放置後、滅菌されたマイクロファイバークロス等に消毒用アルコールを染 み込ませたもので、清拭する。清拭は、奥から手前方向に一度拭きし、折り返すな どして面を変える。汚染防止のため、同一面で、一度清拭した箇所を再度拭き上げ ることが無いように注意する。 3. 消毒が困難な部品や棚は、二重包装した滅菌バッグ等に入れ、高圧蒸気滅菌を行う。 (5) 消毒剤について CPC で微生物管理を実施するにあたり、各作業室の清浄度や作業内容に応じ、消毒剤 33 別添 を使用する必要がある。また、環境測定で検出された微生物の種類に対応する消毒剤の 選定は、微生物による汚染防止から、慎重かつ適切に行う必要がある。無菌操作等区域 及び無菌操作等区域に隣接する清浄度管理区域で使用する消毒剤については、無菌であ ることを保証したものを使用すること。なお、消毒剤には腐食性の高いものもあること から、その特性を理解した上で選択すること。 [消毒剤の選定] 一般的な消毒剤選定の基準は、以下の項目を念頭に選択する。 i) 対象微生物に対して、殺菌力が優れるもの ii) 作業性が良いもの iii) CPCという特殊な作業環境に対して、安全性が高く、効力が安定しているもの iv) 消毒剤の原液が化学的に安定で、保存時に効力の低下が少ないもの v) 低濃度で殺菌力があり、殺菌時間が短いもの vi) 製造機器等への残存性や吸着性が少ないもの vii) 構造設備や製造機器に対して、腐食性が少ないもの viii) CPC及び周辺に対し、環境汚染上問題がないもの ix) 作業者(清掃・消毒作業者を含む)の健康に悪影響を及ぼす可能性の低いもの 以上は一般的な消毒剤選定の基準であるが、施設の状況や環境測定時の検出微生物の 対応等、用途に応じ、重要とする項目が異なる点に留意すること。 34 別添 別添7 環境モニタリングで異常値が検出された場合に求められる対応 CPC の清浄性を確保し、無菌操作を行う無菌操作等区域での汚染を防止するためには定 期的な環境モニタリングを実施するとともに、何らかの異常値が検出された場合には適切 な対策をとることが特定細胞加工物等の無菌性確保の重要な柱である。一方、CPC の微生 物の汚染は、HEPA フィルターや外気からの空気の流通によるものなど様々な要因が想定さ れるが、作業者である人を介した流入と安全キャビネットの操作における理解が不十分な ことが大きな要因になっていることが多い。このために作業者の導線を踏まえた上で適切 な操作を行うための教育の重要性と、安全キャビネットの構造とエアバリアなどの気流特 性を十分理解した操作が求められる(別添7の 参考」)。 (1) 環境モニタリングで異常値が検出された場合の考え方 特定細胞加工物等の無菌性を担保するため、被験物の一部を用いた無菌試験が求めら れている。しかしながら、被験用量の限界や患者への投与までの時間的制約や被験検体 の状況、採用した試験法等の特性によっても、全ての微生物を検出することは困難であ り、CPC での環境モニタリングを実施することにより、製造工程での微生物の混入リス クを可能な限り低減すること、具体的には、定期的、あるいは製造の状況に応じて適切 な環境モニタリングを実施し、その結果に基づいて製造環境の清浄性を十分に担保する ことが求められる(別添5)。 製造環境での清浄性の維持には,浮遊微粒子と微生物に対する清浄度を設定すること とその管理を行う環境モニタリングを行うことが必要である。さらに、管理基準から逸 脱した際の対応手順については、CPC 毎に作成し、保管されている逸脱管理に関する手 順書の中で明確にする(施行規則第97条第4項第5号関係)とともに、製造手順等から の逸脱として取り扱う(施行規則第105条関係)ことが必要である。 本文書では、環境モニタリングにおける逸脱の考え方と逸脱時の特定細胞加工物等と その製造工程中間体ならびに前後ロットの取り扱い、逸脱の原因解明と対策について解 説する。 (2) 清浄度管理基準の逸脱の考え方 管理区域には、無菌操作等区域(Grade「A)のみならず、無菌操作等区域に隣接する清 浄度管理区域、およびその他の清浄度管理区域が含まれる。無菌操作等区域は、特定細 胞加工物等やその製造工程中間体が開放された状態で環境と直接触れる可能性のある空 間であるため、厳密な空気清浄度や環境微生物の許容基準(菌非検出)が求められる (別添5「表6及び7)。清浄度管理区域以下は、無菌操作等区域(Grade「A)の浮遊微粒 子及び微生物を許容レベル以下に担保するためのバッファ区域であり、Grade「D、C、B の順に清浄度を段階的に高める設定とすることが重要である。特に Grade「B は無菌操作 35 別添 等区域に接続する空間であり、基本的に機材等については滅菌して持ち込むこと、滅菌 が不可能な機材等を持ち込むときにはそれによるリスクを考慮することが求められる。 これらの区域での管理基準値からの逸脱は、その逸脱のリスクの程度に応じて アク シデント」、 重大なインシデント」、 インシデント」、 軽微なインシデント」として捉 えることが可能である(表8)。 重大なインシデント」は、例えば、特定細胞加工物等 の微生物汚染に直結する事案や微生物汚染が発生したが投与がなされなかったような事 案、また、無菌操作等区域(Grade「A)での衛生基準値逸脱等のインシデントが確認され、 対策を講じたにもかかわらず継続して逸脱が認められた場合が該当する。このような場 合は細胞加工の中止や工程の迅速な見直しが必要であり、必ず 重大な逸脱」として対 応することが求められる(施行規則第 105 条第1項第2号関係)。 軽微なインシデント」 は工程での確認検査などで対応可能なインシデントと捉えることができる。これらのイ ンシデントの発生は、CPC における重大事態であり、再生医療等提供機関における重大 な不適合又は疾病等の発生に該当する アクシデント」(施行規則第107条)の発生につ ながり得るものであり、その発生を防ぐ対策を講じるための重要な情報である。なお、 表8には アクシデント」の例を示すが、これらは、特定細胞加工物等の安全性の確保 に重大な影響を及ぼすおそれがある事態として提供先の再生医療等提供機関及び厚生労 働大臣への報告が必要となる事態の例示であり(施行規則第107条)、本例示以外にも、 個々の逸脱の内容等を踏まえ、同条の規定する重大事態報告を行う必要があることに留 意されたい。 表8 逸脱のリスクに応じた分類の例 分類 逸脱の例 対応 アクシデント ・微生物汚染した特定細胞加 患者の健康状態の確認、治療的 工物等を患者へ投与した事案 介入の必要性確認等の適切な処 ・製造した特定細胞加工物等 置、前後の製造ロットへの対応 や製造工程中間体で微生物汚 等を検討する 染が検出された特定細胞加工 ・重大事態報告 物等を出荷した事案 ・逸脱報告 ・プロセスシミュレーションテ スト ・操作手順(衛生管理手順書/ 必要に応じて標準業務手順 (SOP))の見直し ・CPCの稼働停止 ・清掃・消毒 重大なインシデント ・製造した特定細胞加工物等 ・逸脱報告(重大な逸脱) や製造工程中間体で微生物汚 ・プロセスシミュレーションテ 染が検出され出荷されなかっ スト た事案(口腔粘膜細胞や角膜 ・操作手順(衛生管理手順書/ 細胞など採取した細胞の特性 必要に応じて標準業務手順 36 別添 から微生物の混入が避けられ (SOP))の見直し ない場合を除く。) ・CPCの稼働停止・清掃・消毒 ・インシデントが確認され、 対策を講じたにもかかわらず 継続して逸脱が認められた場 合 インシデント ・無菌操作等区域(Grade「 ・逸脱報告 A)での微生物モニタリング ・操作手順(衛生管理手順書/ で衛生基準値の逸脱が確認さ 必要に応じてSOP)の見直し れた事案 ・CPCの清掃・消毒 軽微なインシデント ・無菌操作等区域に隣接する ・逸脱報告 清浄度管理区域での微生物モ ・CPCの清掃・消毒 ニタリングで衛生基準値の逸 脱が確認された事案 (3) 区域に応じた清浄度管理基準の逸脱時の対応の考え方 ① 無菌操作等区域(Grade「A) 1.特定細胞加工物等及びその製造工程中間体の取り扱い 無菌操作等区域(Grade「A)は汚染リスクが十分に低減されていることを確認する必 要がある空間であり、製造中に衛生管理基準を逸脱した場合、特定細胞加工物等の由 来を問わず、特定細胞加工物等及びその製造工程中間体は原則として廃棄すべきであ る。ただし、科学的に合理的な方法をもって特定細胞加工物等の無菌性を十分に担保 できる場合にはこの限りではない。例えば、科学的に合理的な方法をもって特定細胞 加工物等の無菌性を十分に担保できる場合とは、逸脱が生じた際に製造した当該特定 細胞加工物等を検体として局方無菌試験を実施し、その無菌性を確認した場合(迅速 無菌試験法での不十分な感度での試験を除く。)や、衛生管理基準から逸脱した環境 モニタリング時点よりも下流工程の中間体や培養液廃液について適切な手法で無菌性 を確認した場合などが挙げられる。「 これらの十分な検出感度及び精度をもった試験で微生物が検出されなければ、特定 細胞加工物等あるいはその中間体の製造を続行することは否定されないが、微生物が 検出された場合は廃棄すること。 2.逸脱発生時の報告等 本逸脱は、施行規則第 105 条に規定する重大な逸脱に該当するとともに、特定細胞 加工物等の品質に直結することから、施行規則第 106 条に規定する品質情報として取 り扱い、逸脱管理に関する手順書及び品質等に関する情報及び品質不良等の処理に関 する手順書に基づく対応を行うことが必要である。再生医療等提供機関の医師・歯科 医師に報告することが必要であり(施行規則第 105 条第3項及び施行規則第 106 条第 37 別添 3 項関係)、廃棄を行わない判断となった場合であっても、当該ロットの取り扱いの判 断を受けること。また、最終的に提供が可能と判断した場合には、投与の適切性を判 断した根拠についてデータ等を記録して保管すること。「 また本逸脱が、出荷後又は患者への投与後に明らかになった場合は、特定細胞加工 物等の安全性の確保に重大な影響を及ぼすおそれがある事態が生じた場合として、重 大事態報告を行うこと(施行規則第107条関係)。 なお、患者への投与後に明らかになった場合は、再生医療等提供機関の管理者は、 患者の健康状態の確認を能動的に行い、疾病等の発生の有無を確認し、その結果、患 者に疾病等の発生が見られた場合は、必要な処置を行うとともに疾病等の発生の報告 を、また、発生がみられなかった場合は、重大な不適合の発生の報告を行う必要があ ること(法第17条及び第18条並びに施行規則第第20条の2関係)に留意されたい。 3.原因究明 本逸脱については品質の重大なリスク情報として取り扱い、当該逸脱を検出した経 緯、その内容や確認方法とその結果などについてデータを記録し、(4)原因究明と 対策に示す方法を参考に、その原因を究明して対策を講じること(施行規則第 106 条 第1項第1号関係)。「 逸脱を確認した同日作業の前後ロット(その前後の日に製造した特定細胞加工物等 を含む。)に関しては、前ロットからの汚染リスクの持ち込み、あるいは後ロットへ の持ち込みの可能性を考慮する必要がある。これらのロットについて逸脱として再生 医療等提供機関に報告し、前後ロットの投与可否の判断を受ける必要はないものの、 当該ロットを検体とした無菌試験の実施や、下流工程の製造工程中間体や培養上清に ついて適切な手法で無菌試験を行うことが推奨される。 ② 清浄度管理区域 清浄度管理区域での清浄度の管理基準の逸脱が認められた場合、管理基準から逸脱 した環境モニタリング時点で当該特定細胞加工物等又はその製造工程中間体の無菌性 が確認され、無菌操作等区域での環境モニタリングで基準値内にある場合は、必ずし も廃棄する必要はない。ただし、検出された微生物が無菌操作等区域に持ち込まれる 可能性もあることを考慮し、逸脱管理に関する手順書に則り対応を行うとともに、逸 脱として再生医療等提供医師・歯科医師に報告する必要がある。また報告内容につい ては、逸脱の状況とともにどのような対応を行ったのかも記録に残し、原因究明につ とめ、その結果を踏まえて対策を講じること。「 その他の清浄度管理区域においても、清浄度による環境モニタリングに加え、定期 的に浮遊菌および落下菌の調査が行われる。これら環境モニタリングで限度値を超え た微生物やリスクの高い微生物の特性を考慮し、検出された菌種の持ち込み経路につ いて検討を行い、清掃・消毒の実施や実施後の確認のモニタリングを行うこと。また、 無菌操作等区域に持ち込まないための方策を検討し、作業手順書の改訂を行うこと。 38 別添 (4) 原因解明と対策 ① 清浄度モニタリング 1.浮遊微粒子の管理基準値逸脱の原因 無菌操作等区域および清浄度管理区域の浮遊微粒子に対する清浄度は、HEPA フィル ター(プレフィルター等を含む。)を介して空気が取り入れられることにより求めら れる清浄度が担保されている。浮遊微粒子の清浄度が管理基準を満たしていない場合、 空気のフィルター処理が不十分であることを示すものである。特にフィルターを介し て直接外気を取入れている区域において清浄度が管理基準を上回っている場合、フィ ルターに破断が生じ、外気の一部がフィルターでトラップできずに区域に流入してい る可能性が高い。通常、フィルターのピンホールなどの破断は、外気取入れフィルタ ー(プレフィルター)の清掃やその他のフィルターについて所定の有効期間内に適切 に交換を行っていれば生じる可能性は低いが、定期的な検査を実施することが強く推 奨される。HEPA フィルターへの過剰な負荷を引き起こす要因としては、上記の他に、 塵埃を発生する資材の持ち込みや塵埃を発する作業に原因がある場合も想定される。「 2.浮遊微粒子の管理基準値逸脱時の対策の考え方 管理する区域の浮遊微粒子に対する清浄度の継続的な悪化は、外気からの微生物の 流入を示唆しており、速やかに CPC をシャットダウンし、フィルターを交換、洗浄・ 清掃を行い、必要に応じて防カビ燻蒸等も行う。空調システム運用手順の見直しも必 要となる。 清浄度管理区域は、無菌操作区域の空気清浄度を許容基準内に収めるためのバッフ ァ区域であり、清浄度管理区域の階層構造をもって清浄度の許容基準値が設定される ことから、これらの清浄度管理区域が適切に管理されていれば、無菌操作等区域 (Grade「A 区域)への過剰な負荷は起こりにくいと考えられる。このためにも清浄度 管理区域の管理が重要となる。 塵埃を発生する資材の持ち込みや塵埃を発する作業に原因がある場合、資材又は作 業工程の見直しが必要となることもある。また、特定細胞加工物等の種類、製造方法 や作業によって求められる清浄度水準は異なるため、室圧を見直す必要もあり得る。「 ② 環境モニタリング 1.環境微生物の清浄度管理基準値逸脱の原因 清浄度管理区域は無菌操作等区域の厳密な微生物管理を担保するために適切な微生 物管理が求められている。一方、無菌操作等区域における環境モニタリングで微生物 等が検出される場合は、清浄度管理区域のみならず想定外の流入経路も含めた微生物 等の持ち込みとその増殖が想定される。無菌操作等区域で検出された微生物等の種を 同定することで、その特性から、環境微生物迷入経路が想定でき、導入経路の遮断や 除菌対象とすべき構造物は何なのかが明らかにできる可能性があり、その結果は逸脱 39 別添 後手順改訂に有益な情報となる。 微生物等の持ち込みは、作業者等 CPC 入室者、特定細胞加工物等の製造に用いる原 料等あるいは資材等によって生じる可能性がある。微生物等の増殖は、持ち込まれた 微生物が、無菌操作等区域や清浄度管理区域の安全キャビネットや壁床が微生物等に 汚染した場合に起こると想定される。 2.微生物管理基準値逸脱時の対策の考え方 作業者等による持ち込みでは、不適切な無塵衣更衣等に加え、手袋を介した汚染の 頻度が高いことが知られていることから、無塵衣ならびに手指・手掌の付着菌モニタ リングを実施すること。また、CPC 内使用物品(消耗品、什器備品等)の消毒処理等 (洗浄、消毒用アルコール、紫外線(UV)処理等)により微生物の持ち込みを防止する こと。例えば、無滅菌手袋にアルコール噴霧・塗布するのみでは滅菌は不十分であり、 滅菌済の手術用手袋などを使用する必要がある。資材等による微生物等の持ち込みが 想定される場合、原料等の無菌性の確認、資材等を持ち込む際に十分な殺菌効果のあ る液剤等を用いた拭き上げ等など作業の見直しにむけた検討が必要となる。当該検討 により、特定の資材等や操作等による汚染が原因の可能性がある場合には、ヒト・モ ノの動線を含む操作工程の見直しや用いる資材等の変更を検討すること。 別添6に示す定期的又は作業工程終了ごとに実施すべき清掃・消毒が不十分である ことや、培地・廃液等液体が付着した際に適切に拭き上げ・洗浄・清掃・消毒できて いないことが想定されるため、以下の点に留意すること。 ・ 作業ごとの清掃作業(床・壁、使用機器の拭き上げ・消毒)は必須であるが、加 えて清掃・消毒作業手順の見直しを行う必要がある。 ・ 特に機器の裏面や壁面との隙間など、点検や洗浄の難しい箇所での結露などによ り微生物の増殖が起こる可能性がある。 ・ 拭き上げ・洗浄・清掃・消毒を実施している場合でも、手の届く範囲や目視範囲 にとどまっていては不十分である可能性がある。 ・ 清掃・消毒の実施後の確認のモニタリングも必要である。実施後も環境微生物モ ニタリングが許容基準を上回る場合は、規定の清掃・消毒手順が効果的でないこと が示唆される。 ・ 環境モニタリングで課題が明らかになった汚染リスクについて、低減のため作業 の見直しを検討する必要があり、適宜教育訓練の内容にも反映させる必要がある。 (5) 対策後の管理区域の清浄性の確認の考え方 微生物汚染された特定細胞加工物等を患者へ投与したような重大なアクシデントが発 生した場合や、そのような汚染された細胞加工物等を製造・出荷した場合には、CPC の 稼働を停止し、汚染原因の究明を行う必要がある。さらに、別添6に示す施設全体の洗 浄と消毒(クリーンアップ)を実施する必要がある。特に交差汚染が起きたような場合 40 別添 には施設の機器が汚染の原因になっていないか確認するとともに、必要に応じて、機器 の交換等の検討や製造工程の見直しを行うこと等も必要となる。その上で、加工を行う 細胞の代わりに無菌培地などを用いて無菌性を検証する培地充てん試験(プロセスシミ ュレーションテスト)に相当する試験等を実施することにより十分な対応ができている ことを確認することが重要である。なお、プロセスシミュレーションテストの具体的な 実施方法については、PIC/S「GMPガイド「アネックス2Aの無菌プロセスシミュレーション が参考となる。 製造した特定細胞加工物等や製造工程中間体で微生物汚染が検出された場合(患者へ の投与や出荷前での判明)、その時点で製造工程を中止し、検出前の工程を見直し、汚 染原因を究明する。汚染の原因が明確に特定できた場合には、その原因に応じて工程の 見直しやクリーンアップを行う。特定の操作過程で汚染が起きていた可能性が高い場合 には工程の見直しを実施するとともに、その工程に携わる作業者の教育を徹底し、当該 行程における作業の習熟度について評価を行うこと。一方、原因が明確に特定できない 場合には、微生物汚染された特定細胞加工物等を患者へ投与してしまった場合と同様に、 全工程の洗浄と消毒を行った上で、培地充てん試験に相当する試験を実施すること。 無菌操作等区域での手袋のモニタリングで微生物汚染が確認されたような場合には、 無菌操作等区域を含めてクリーンアップを実施すること。また汚染の原因が特定できた 場合には、その手順を含めて操作手順の見直しを実施すること。 清浄度管理区域(1)において微生物モニタリングで衛生管理基準値からの逸脱が確 認されたような場合には、当該区域のクリーンアップを実施すること。 参考: 「安全キャビネットとクリーンベンチの違いについて」 生物学的安全キャビネット(Biological「 Safety「 Cabinet;「 BSC)とクリーンベンチ (Laminar「Flow「Clean「Bench)は、いずれもHEPAフィルターを用いて清浄空気環境を形成 する装置であるが、その目的及び安全機能は本質的に異なる。 世界保健機関(WHO)の実験室安全指針では、 生物学的安全キャビネットは感染性微生物 や生物由来材料を取り扱う際の一次封じ込め装置(primary「containment「device)として 設計されており、HEPA フィルターを用いた空気循環および排気処理によって、 作業者、 環境、および試料の三者を同時に保護する」機能を有する。特にClass「II安全キャビネッ トでは、作業開口部から室内空気を吸引してエアカーテンを形成し、エアロゾルの漏出を 防止するとともに、内部循環空気および排気空気をHEPAフィルターで処理する構造」と説 明されている。 一方、 クリーンベンチは HEPA フィルターを通過した層流空気を作業面へ供給すること で、作業空間への微粒子や微生物の混入を防止し、 試料の無菌性を維持することを目的」 とした装置」としている。そのため、装置内部の空気は作業者方向へ流れる構造となって おり、作業者や環境を保護する機能は備えていない。 41 別添 米国疾病対策予防センター(CDC)および国立衛生研究所(NIH)が発行する実験室バイオセ ーフティ指針(Biosafety「in「Microbiological「and「Biomedical「Laboratories,「6th「ed.,「 2020)でも、クリーンベンチについて、 バイオセーフティ対応が必要な操作には用いるべ きでない」と明記されており、感染性物質やエアロゾル発生の可能性がある実験には使用 すべきではないとされている。 以上のように、クリーンベンチは試料の保護(product「protection)を目的とした装置 であるのに対し、生物学的安全キャビネットは生物学的封じ込め(containment)を目的 とした安全装置である点が両者の本質的な違いである。したがって、ウイルス、細菌、遺 伝子組換え体、患者由来検体などの感染性材料を扱う実験では、生物学的安全キャビネッ トを使用することが推奨されている。 42 別添 別添8 特定細胞加工物等の輸送・保管中の管理について (1) 輸送・保管における無菌性担保 特定細胞加工物等製造施設内で加工・製造された特定細胞加工物等は、あらかじめ定 められた容器に充てんされ、汚染防止のため密封状態で保管される。別途、出荷判定の 試験結果に基づき出荷が可能と判断された上で、提供医療機関へ輸送されことになる。 この輸送・医療機関での保管過程においては、出荷時に担保された無菌性が維持される ことが求められる。このため、出荷前の保管過程と同様に、輸送時、医療機関での保管 時、更に投与直前まで、充てん容器は微生物等が混入しない方策がとられ、この方策が 正しく機能していることを担保するために輸送容器等が密封状態にあることを確認する こと。 輸送・保管過程における無菌性担保では、容器、包装の破損やゆるみ、液体(特定細 胞加工物等)の漏れなど、密封状態が確認できない場合は、無菌性は維持されていない と判断する必要があり、このような事態は、再生医療等を受ける者の安全性に影響を与 え得ることから、このような逸脱が報告された場合、当該特定細胞加工物等の投与は中 止すること。また、充てん工程や容器・資材だけでなく、保管・輸送過程の見直しの検 討を進める必要があり、当該再生医療等提供計画については原因の同定と対策を実施し、 その対策が有効に機能していることが確認されるまで中止すること。 上記のような重大な逸脱又は重大な不適合に該当する。具体的には、輸送過程につい ては、施行規則第 99 条第 1 項第 25 項に係る製造管理の一部であり、重大な逸脱に該当 する。保管については、保管過程が製造工程の一部である場合は重大な逸脱として、そ の他の場合は施行規則第20条の2第4項に規定する重大な不適合に該当する。輸送過程 又は製造工程における保管中に発生した場合には、速やかに再生医療等提供機関に報告 を行うこと(施行規則第105条第3項関係)。その他の保管過程(再生医療等提供機関又 はその他の保管機関における保管中)に発生した場合には、速やかに再生医療等提供機 関の管理者及び実施責任者に報告すること(施行規則第20条の2関係)。 再生医療等提供機関に輸送後(保管を経る場合を含む。)、当該医療機関内で特定細胞 加工物等に対して、何らかの処理を行い、患者に投与する場合は、特定細胞加工物等に 対する無菌性を確認し、微生物汚染に細心の注意を払い、汚染を防止する環境で操作を 行うこと。また、あらかじめ無菌性が維持される手順であることを確認しておく必要が ある。逸脱が認められた場合には当該特定細胞加工物等を廃棄し、手順の見直しを検討 すること。 なお、輸送・保管の全部又は一部を専門業者に外部委託する場合には、トレーサビリ ティの確保も含め、委託者の責任において当該業務の適正管理を行うこと。一方、特定 細胞加工物等の輸送又は保管を外部委託する場合には、運送業に関する関係法令や倉庫 43 別添 業法(昭和31年法律第121号)等、関係法令を遵守する必要があることに留意するこ と。 (2) 輸送・保管における温度管理、輸送時間及び使用期限の管理 輸送・保管における温度管理、輸送時間及び特定細胞加工物等の使用期限はあらかじ め再生医療等提供計画に明示される必要がある(施行通知Ⅶ.(48)省令第「99「条第1項 第「25「号関係)。輸送・保管における温度管理、輸送時間及び特定細胞加工物等の使用期 限を含む再生医療等提供計画からの逸脱は、特定細胞加工物等の品質劣化の原因となり、 再生医療等を受ける者の安全性に影響を与え得ることから、重大な逸脱又は重大な不適 合に該当する。速やかに逸脱報告を行い、それら逸脱が報告されても投与が許容される かは、逸脱の程度や特定細胞加工物等の種類によるところであるが、当該特定細胞加工 物等の投与による重篤な有害事象の発生の可能性を考慮し、再生医療等を提供する医 師・歯科医師が自らの責により投与の可否を判断し、投与を受ける者の同意を取得する べきである。 ① 特定細胞加工物等が凍結状態にて保管・輸送される場合 特定細胞加工物等を凍結状態にて保管・輸送する場合、保管状態・場所、輸送状 態・時間など、あらかじめ輸送後の細胞生存率や細胞の生物活性など細胞加工物に求 められる細胞機能の評価などの科学的な検討に基づいて、あらかじめ設定した許容温 度及び特定細胞加工物等の使用期限の範囲内にあることを確認すること。凍結状態で 保管・輸送する場合においても、保管・輸送容器内の温度をモニタリングすること。 輸送後の細胞加工物等の機能の評価を実施するなどの代替法を講ずることにより妥当 性が示されれば、その限りではない。「 許容温度及び特定細胞加工物等の使用期限から逸脱した場合には、前述の原則に則 って責任医師が使用の可否を判断すること。また逸脱の内容については記録に残して おくこと。特に、凍結されているべき特定細胞加工物等が融解している逸脱が確認さ れた場合は、再生医療等を受ける者の安全性に影響を与え得ることから、重大な逸脱 に該当し、当該特定細胞加工物等の投与は中止する必要がある。 凍結保存にて輸送された特定細胞加工物等が再生医療等提供医療機関において解凍 されて投与される場合については、提供医療機関へ輸送された後、決められた操作法 による解凍後、患者に投与されるまでの時間における細胞の品質安定性のみならず、 細菌の増殖が起きないような作業方法で温度や輸送時間、保管期限等の管理が必要で あり、あらかじめ管理条件を設定すること。凍結保護剤は、細胞毒性があるために速 やかな洗浄除去が推奨されるが、解凍と同時に希釈操作を伴う投与を行うなどの操作 により凍結保護剤の有害な影響を回避できるなどにより科学的合理性及び妥当性が示 されれば、その限りではない。 44 別添 ② 特定細胞加工物等が非凍結状態にて保管・輸送される場合 特定細胞加工物等を非凍結状態にて保管・輸送する場合、保管場所及び輸送中の輸 送容器内の温度をモニタリングし、科学的検討に基づいてあらかじめ設定した許容温 度の範囲から逸脱していないことを確認すること。非凍結保存にて輸送された特定細 胞加工物等を投与する場合、出荷後・輸送中・医療機関において、特定細胞加工物等 の品質安定性のみならず、微生物の増殖が起きないような温度及び保管期限内での管 理が必要であり、出荷時品質を担保すべくあらかじめ管理条件を設定すること。 特に、特定細胞加工物等の無菌性が脆弱であり、温度管理についても常温以上の温 度での保存条件を用いる場合には、汚染微生物の増殖が起きてしまう可能性があり、 重大な感染事故につながる可能性があるために、保管期間は必要最低限の時間に設定 すべきである。例えば細菌では最適条件であれば5~6時間で1,000~10,000倍に増殖 することが知られている。また一定期間、常温以上で保管する場合には、出荷から投 与における保管時間について記録に残すことが求められる。もし規定された保管期間 を過ぎてしまった場合には、当該特定細胞加工物等を廃棄することが求められる。「 ③ 輸送・保管における取り違え防止 再生医療等提供計画に記載の特定細胞加工物等が投与されるよう、保管・輸送にお ける取り違えを防ぐ必要がある。自己由来特定細胞加工物等の品質管理では、自己由 来細胞を投与することを根拠にウイルス試験を実施しないケースがあるほか、免疫原 性についても、他家細胞の水準の評価や緩和策がとられている訳ではない。他家細胞 の取り違え、誤投与により他家由来のウイルス等感染症伝播や免疫拒絶反応による重 篤な有害事象のリスクが生じる。 特定細胞加工物等の充てん容器およびその包装、外挿等に取り違え防止を目的とし た方策(バーコード管理やタグチップによる確認など)がとられる必要がある。 このような対策を実施していたにもかかわらず、万が一取り違え事故が発生した場 合には、施行規則第20条の2第4項に規定する重大な不適合に該当する。また、投 与後に患者に疾病等が発生した場合には、再生医療等提供機関の管理者は、法第17 条及び第18条の規定に基づく疾病等報告を行うこと。 45 別添 特定細胞加工物等の適切な無菌試験の実施に関する検討会議 構成員 氏名 所属・役職 内田 恵理子 国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子医薬部 客員研究員 大阪大学大学院医学系研究科・医学部附属病院 産学連携・クロス 岡田 潔 イノベーションイニシアティブ 特任教授 一般社団法人再生医療イノベーションフォーラム 菊野 茂 サポーティングインダストリー委員会 検査部会 部会長 ○ 紀ノ岡 正博 大阪大学大学院工学研究科生物工学専攻 教授 一般社団法人再生医療イノベーションフォーラム 辻 晋作 特定細胞加工物等委員会 細胞加工部会長 前部会長 飛田 護邦 順天堂大学 革新的医療技術開発研究センター 先任准教授 地方独立行政法人大阪府立病院機構「大阪はびきの医療センター 松山 晃文 次世代創薬創生センター長 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 丸山 良亮 再生医療製品等審査部 部長 国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所薬剤耐性研究センター 山岸 拓也 第四室 併任 応用疫学研究センター 室長 山口 照英 日本薬科大学 客員教授 ◎ (令和8年5月現在) ◎座長 〇副座長 (五十音順、敬称略) 46

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