再生医療等安全性確保法に基づきウイルスベクタ-を製造する施設における作業者の健康管理等について(案)
再生医療等評価部会 第119回 / 2026-08-19 開催 / 16ページ
この資料の本物(PDF)は厚生労働省にあります。
図や表を含め、正しい形で読めるのはこちらです。
取り出した文字を見る(18,841字)
⚠️ これはPDFから文字だけを取り出したものです。 表や図の形は失われ、行が入り組んで読みにくくなっています。 探すためのものとお考えください。 内容を確かめるときは、上のPDFをご覧ください。
再生医療等安全性確保法に基づきウイルスベクターを製造する施設における
作業者の健康管理等について(案)
1. はじめに
再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成 25 年法律第 85 号。以下「法」という。)は、再
生医療等に用いられる再生医療等技術の安全性の確保及び生命倫理への配慮に関する措置その他の
再生医療等を提供しようとする者が講ずべき措置を明らかにするとともに、特定細胞加工物等の製造
の許可等の制度を定めること等により、再生医療等の迅速かつ安全な提供及び普及の促進を図り、も
って医療の質及び保健衛生の向上に寄与することを目的としている。
令和6年6月、再生医療等の安全性の確保等に関する法律及び臨床研究法の一部を改正する法律
(令和6年法律第51号)が公布され、令和7年5月31日より、従来の特定細胞加工物に加え、特定
核酸等(いわゆるin vivo遺伝子治療及び遺伝子治療の関連技術)が新たに法の対象として位置付け
られることとなった。
これに伴い、法に基づき、許可若しくは認定を受け、又は届出を行った特定細胞加工物等製造事業
者として、大学、研究機関、企業、医療機関等が、患者に提供する医療に用いる特定核酸等の製造を
担うことが想定される。
本文書は、法に基づき、特定核酸等を用いて実施する再生医療等においてウイルスベクターを使用
する場合に、特定細胞加工物等製造施設における特定核酸等の製造に際し、作業者の健康管理上留意
すべき事項について基本的な考え方を整理するとともに、具体的なリスク管理の方法等について概説
するものである。
なお、本文書は、法に基づき実施される再生医療等における、増殖性を持たないウイルスベクター
(レンチウイルスベクターやアデノ随伴ウイルスベクター等。以下「ウイルスベクター」という。)
の製造に際する作業者の健康管理等に係るリスク管理を対象とするものである。増殖型腫瘍溶解性ウ
イルスを含む増殖性を持つウイルスやウイルスベクターを用いる場合の作業者の健康管理等に関す
る基本的な考え方については本文書の対象としていないが、取り扱う増殖性ウイルスベクター等の特
性に応じて、本文書を参照すること。
2. 基本的な考え方
ウイルスベクターの製造に際する作業者の健康管理等に係るリスク(感染性、感染した場合に生じ
得る健康被害等)は、取り扱うウイルスベクターの種類、濃度、総量、製造方法等の影響を受けるた
め、必要となるリスク管理の内容はウイルスベクターの製造施設ごとに異なる。このため、製造施設
ごとに、自施設における作業者のウイルスベクターへの曝露リスクに関するリスクアセスメントを実
施し、その結果に基づいたリスク管理を行うことが、作業者の健康及び安全を確保するために必要で
ある。
ウイルスベクターの製造に際する作業者の健康管理等に関するリスクアセスメント及びリスク管
理の手法には様々なものがある。本文書では、その一例として、「管理区域における作業者の健康に
対するリスクの特定」、「リスクの見積もり」、「リスクの見積もりに基づく低減措置内容の検討」及び
「措置の実施と見直し」からなるリスクアセスメント及びリスク管理の枠組みを用い、法に基づき実
施されるウイルスベクターの製造に際しての作業者の健康管理等に係るリスクについて、その基本的
な考え方を概説する。
(1) 管理区域における作業者の健康に対するリスクの特定
ウイルスベクターは、感染能を有するウイルス由来の粒子であり、遺伝子組換え生物等に該当する
ことから、その病原性等の有無や自己増殖性を含む生物学的特性等にかかわらず、作業者の曝露を防
止するための適切な措置を講じることが求められる。また、管理区域内において作業者がウイルスベ
クターに曝露した場合には、無症候であっても、その特性によっては、作業者の体表、衣類又は汚染
物を介して管理区域外への持ち出される可能性がある。その結果、作業者の家族をはじめとする第三
者へ伝播し、特に基礎疾患を有する者、免疫機能が低下した者、妊婦又は乳児の健康に影響を及ぼす
おそれがある。このため、管理区域における作業者のウイルスベクターへの曝露可能性をリスクとし
て特定し、その見積もりを行うとともに、必要なリスク低減措置を検討することが求められる。
リスクの特定に当たっては、管理区域内において作業者がウイルスベクターに曝露する可能性のあ
る状況を可能な限り想定し、いつ、どこで、どの工程において、どのような環境下で、どの程度曝露
する可能性があるかを把握する必要がある。その際、特定細胞加工物等製造施設ごとに、構造設備、
使用機器、製造工程及び作業方法等を踏まえて検討することが重要である。
(2) 当該リスクの見積もり
ウイルスベクターの製造を行う特定細胞加工物等製造施設の管理者は、まず、自施設で取り扱うウ
イルスベクターについて、その由来となったウイルス(以下「由来ウイルス」という。)の特性を踏ま
え、製造時の取扱方法や工程内管理等において必要となる検出方法をあらかじめ設定する必要がある。
再生医療等に用いられるウイルスベクターは、一般に、由来ウイルスに対して遺伝子改変を行い、病
原性又は増殖性に関わる遺伝子の欠失又は改変等により安全性を高めたものが用いられる。しかしな
がら、製造工程においてその特性が変化する可能性や、非増殖性ウイルスベクターの製造過程で増殖
性ウイルスが出現する可能性、さらには病原性若しくは増殖性が回復する、いわゆる野生復帰が生じ
る可能性についても考慮する必要がある。このため、由来ウイルスの特性(病原性、感染性、感染様
式、感染経路、免疫原性、造腫瘍性等)を踏まえ、工程内管理における試験の実施により、由来ウイ
ルスの特性変化の有無を適時に把握できることが重要である。また、万一、作業者がウイルスベクタ
ーに感染した場合には、体内において野生株との相同組換えが生じる可能性や、野生型の性質を回復
した野生復帰体(リバータント)が発生する可能性についても考慮する必要がある。したがって、製
造施設の管理者は、自施設で取り扱うウイルスベクターについて、由来ウイルスの特性を踏まえた当
該ウイルスベクターの特性情報を、当該ウイルスベクターの開発者等から入手することが求められる。
また、これらの情報に基づき、管理区域において作業者が当該ウイルスベクターに曝露した場合に生
じる健康被害のリスク見積もりを行い、その結果をリスクアセスメント及びリスク低減措置の検討に
2
反映する必要がある。なお、入手すべきウイルスベクターの構造及び特性に関する情報については、
「遺伝子治療用製品等の品質及び安全性の確保について」(令和元年7月9日付け薬生機審発0709第
2号厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長通知)別添「遺伝子治療用製品等の品質及び
安全性の確保に関する指針」を参考とすること。
健康被害のリスク見積もりの作成に当たり、ウイルスベクターの特性情報だけではなく、以下に示
す要素を考慮し、製造施設ごとに作業者の健康に及ぼす危険性及び有害性の程度を評価することが求
められる。
✓ 構造設備によるウイルスベクターの封じ込めクラス(カテゴリ-1ないしはGILSP)
✓ 取り扱うウイルスベクターの種類、濃度及び量
✓ 開放系作業となる製造工程の有無及び内容
✓ チェンジオーバーの有無及び頻度
✓ 製造施設の安全管理体制
✓ 物理化学的耐性(熱、薬剤等)の強さを含む取り扱うウイルスベクターに関する専門
的知識
✓ 非増殖性ウイルスベクターの製造工程中で、増殖性ウイルスが出現するリスクと出現
の有無を評価し、確認するための試験方法
✓ 最終製品中に含まれる(または想定される)ウイルスベクターの感染性や生物活性の
測定方法
✓ 感染が起きた場合に想定される感染者の症状等とその対処法
✓ 入手したウイルスベクターについて不足している情報の有無
(3) 当該リスクに対する低減措置内容の検討等
ウイルスベクターの製造を行う特定細胞加工物等製造施設の管理者は、管理区域において作業者が
ウイルスベクターに曝露するリスクを特定し、そのリスクを見積もり、リスク低減措置の内容を検討
する必要がある。
遺伝子組換えウイルスベクターの曝露に対する安全対策は、封じ込めが可能な構造設備や閉鎖系装
置の採用のみで完結するものではない。ウイルスベクターの製造に当たり、特定細胞加工物等製造施
設の事業者は、特定細胞加工物等製造施設ごとに構造設備の衛生管理、職員の衛生管理その他必要な
事項について記載した衛生管理基準書(再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行規則(平成26
年厚生労働省令第110号。以下「則」という。)第97条第1項関係)や、特定細胞加工物等及び原料
の保管、製造工程の管理その他必要な事項について記載した製造管理基準書(同条第2項関係)、検
体の採取方法、試験検査結果の判定方法その他必要な事項を記載した品質管理基準書(同条第3項関
係)、製造管理及び品質管理を適正かつ円滑に実施するための手順書(同条第4項関係)を作成し、
これらを保管しなければならない。
例えば、以下が文書化すべき手順として挙げられる。
3
✓ 構造設備や装置の不具合及び作業者の誤操作に伴う曝露リスクを可能な限り排除する
ため、構造設備や装置の定期的な点検整備、校正及びバリデーション等により管理する
業務手順
✓ 構造設備や装置の運用・操作ミスに起因するリスクを低減するため、構造設備や装置の
運用・操作(使用前の動作確認、使用後の洗浄・消毒・不活化を含む)に関する業務手
順 等
さらに、管理区域内への入退出、動線管理、更衣、器材の取扱い及び手技、ウイルスベクターの保
管・運搬並びに汚染物質の廃棄等の各工程におけるあらゆる活動において、ウイルスベクターの漏出
リスクを低減するための措置を講じることが求められる。なお、これらの手順書等に記載すべき事項
については「「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」、「再生医療等の安全性の確保等に関する
法律施行令」、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行規則」等の取扱いについて」(令和7
年5月15日付け医政研発 0515第18号厚生労働省医政局研究開発政策課長通知。以下「施行通知」
という。)Ⅶ(26)~(39)、製造管理で遵守すべき事項についてはⅦ(41)~(50)、品質管理で遵守すべ
き事項についてはⅦ(52)~(54)を参照すること。
また、平時におけるリスク低減措置のみならず、災害や不慮の事故を含む緊急時のリスク低減の措
置内容についても、あらかじめ検討しておく必要がある。緊急時には、構造設備や装置等の破損や停
電の発生により正常に作動しなくなることで、ウイルスベクターが漏出するリスクが生じる。このた
め、こうした緊急事態に備え、フェイルセーフのシステムをあらかじめ構築しておく必要がある。さ
らに、ウイルスベクターが漏出した場合の除染措置や、ウイルスベクターに曝露した作業者又は負傷
した作業者に対する緊急措置を含む対応手順を定めた緊急時対応マニュアルを策定することが求め
られる。
(4)当該リスクに対する低減措置の実施と見直し
ウイルスベクターの製造に際しての作業者の健康管理については、施設の事業者がリスク低減措置の
実施に必要な法令上の手続き、関係部門への周知、手順書及び記録様式の整備、教育訓練その他必要な
組織的準備が整っていることを確認した上で、その実施を承認するとともに、定期的な報告に基づき、
当該措置の継続又は見直しの要否を判断することが求められる。また、新たな知見、工程若しくは設備
の変更、事故その他必要な事由が生じた場合には、当該措置の見直しを指示する必要がある。
施設管理者並びに製造部門及び品質部門の業務責任者は、製造施設に備え付けられた手順書等に基づ
き、リスク低減措置を計画的に実施し、その実施後には、計画時の想定との差異、逸脱の有無、エアロ
ゾルの発生状況、針刺し・切創、漏出又は飛散の発生状況、不活化処理の確実性及び関係者の意見を踏
まえ、必要な事項を確認するものとする。また、当該措置の実効性及び継続可能性については、年次照
査、マネジメントレビューその他これらに準ずる機会を通じて定期的に評価し、必要に応じて手順書、
教育訓練の内容及び緊急時対応手順を見直すとともに、その結果を施設の管理者に報告する必要がある。
作業者は、定められたリスク低減措置を遵守するとともに、異常、逸脱(ヒヤリハット等の軽微なも
のを含む)、曝露のおそれやその他の事案を認めた場合には、直ちに必要な初動対応を実施し、製造責
任者に報告することが求められる。
4
3.法に基づきウイルスベクターを製造する施設における作業者の健康管理に関する質疑応答集(Q&A)
ウイルスベクターの製造を行う施設において、製造に際する作業者の健康管理等に適切に取り組む
ための参考となるよう、質疑応答集(Q&A)を以下に取りまとめた。なお、増殖型腫瘍溶解性ウイル
スを含む増殖性を持つウイルスやウイルスベクターを用いる場合の作業者の健康管理等については、
本文書の対象としていないが、その基本的な考え方については、取り扱う増殖性ウイルスベクター等
の特性に応じて本文書を参照すること。
(1)総論
①関連する法規制と指針
Q1:ウイルスベクターを製造する施設における作業者の健康管理はどのように行うべきか。
A1: ウイルスベクターの取扱いに係る作業者の健康管理については、その責任及び役割を担う者
を明確にした管理体制を整備する必要がある。作業者の健康管理に責任を有する者には、取り扱う
ウイルスベクターの特性に加え、その由来ウイルスに関する知識及び製造工程に関する理解が求め
られる。
また、遺伝子組換え微生物の取扱いに係る作業者の健康管理業務及び組織体制については、「遺伝
子組換え微生物の使用等による医薬品等の製造における拡散防止措置等について(平成 16 年2月
19日付け 薬食発第0219011号厚生労働省医薬食品局長通知)」別添を参考にすること。
Q2: ウイルスベクターのリスク(感染のしやすさや感染した場合に起こり得る健康被害)を確認
する際には何を参考にすべきか。
A2: ウイルスベクターの由来ウイルスの特性(病原性や、感染性、感染様式、感染経路、免疫原性、
造腫瘍性、物理・化学的特性等)を踏まえた当該ウイルスベクターの構造及び特性に関する情報を、
当該ウイルスベクターの開発者等から入手し、リスクアセスメント及びリスク管理の検討に活用す
ること。また、入手すべきウイルスベクターの構造及び特性(物理・化学的特性を含む。)に関す
る情報については、「遺伝子治療用製品等の品質及び安全性の確保に関する指針」を参考とするこ
と。なお、製造工程におけるウイルスベクターの封じ込めに係る取扱いについては、「遺伝子組換
え生物等の第二種使用等のうち産業上の使用等に当たって執るべき拡散防止措置等を定める省令
(平成16年財務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、環境省令第1号)」等を参考にするこ
と。
Q3: ウイルスベクターの製造に際して、法以外に留意すべき他の法令等はあるか。
A3: 遺伝子組換え生物であるウイルスベクターの製造を行う場合には、「遺伝子組換え生物等の使
用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成15年法律第97号。以下「カルタヘナ法」
という。)」に規定される第2種使用への対応が求められる。
Q4: カルタヘナ法では、研究開発のためのウイルスベクターの製造と医療提供のためのウイルス
5
ベクターの製造とで規制が異なるのはなぜか。
A4: 研究開発と医薬品製造や医療提供に係る遺伝子組み換え生物等の製造は、いずれも生物多様
性の確保を目的としているが、取り扱う作業方法、規模、管理方法等が異なることから、それぞれ
実態に合わせた規制内容となっている。研究開発に係る遺伝子組み換え生物等の製造については文
部科学省が、産業利用のうち医薬品製造や医療提供に係る遺伝子組み換え生物等の製造については
厚生労働省が所管している。このため、医薬品製造や医療提供を目的として遺伝子組換え生物等を
使用する場合には、カルタヘナ法に基づき、原則として厚生労働大臣の承認を得る必要がある。
②ウイルスベクターの製造施設の構造設備と運用
Q5: ウイルスベクターの製造施設の構造設備の基準はどのようなものか。
A5: ウイルスベクターの製造施設は、特定細胞加工物等製造施設に係る構造設備基準を遵守する
とともに、作業者のウイルスベクターへの曝露や環境中への漏出を防止するために必要な構造設備
を備える必要がある。具体的には、ウイルスベクターを取り扱う区域について周囲に対して陰圧を
維持できる差圧管理が可能であること、適切な更衣管理を行うためのスペースを備えること、廃棄
物を適切に不活化するための設備(オートクレーブを含む。)を備えていること等が必要である(則
第 89 条関係)。その他にも、当該区域への入退室については、前室を設けた二重扉とすることや、
空調設備について給気系統と排気系統を独立させること、排気系統には定期的な点検(完全性試験
等)が実施されたHEPAフィルターを設置すること等が求められる。
また、一つの製造ラインで複数品目を製造する場合には、交差汚染を防止するため、各装置を連
結する配管等について洗浄及び不活化(クリーンオフ)が可能な材質を採用することや、シングル
ユースの資材を使用すること等が推奨される(施行通知Ⅶ(43)省令第 99 条第1項第 11 号関係)。
なお、作業者等が曝露した際に曝露部位を洗浄するためのシャワーを製造施設内に設置する場合に
は、使用後のシャワー水を介してウイルスベクターが環境中へ拡散することのないよう、使用後の
シャワー水を適切に封じ込める仕組みや、シャワー水のウイルスベクターを不活化する仕組みを含
めたリスク管理を行うことが求められる(施行通知Ⅶ(13)省令第 89 条第 13 号関係)。
ウイルスベクターへの作業者の曝露及び環境中への漏出を防止するためには、ウイルスベクター
を封じ込めが可能な構造設備を備えるだけではなく、適切な手順を定めて運用することが重要であ
る。具体的には、構造設備の不具合又は誤操作に起因するリスクを可能な限り低減するため、構造
設備の定期的な保守点検を実施する必要がある。また、事故等によりウイルスベクターの漏出が発
生した場合に備え、汚染の拡大を防止するためにキルタンク等の設備を設けることが望ましい。
さらに、構造設備の保守点検に関する手順を定めて文書化するとともに、当該手順に従って運用
する必要がある。また、保守点検の実施記録を作成し、管理者への報告及び管理者による確認の手
順を定め、文書化しておくことが望ましい(施行通知Ⅶ(27)省令第 97 条第2項関係)。
Q6: ウイルスベクターを製造する構造設備(培養室や安全キャビネット)は、他の目的(他の特定
細胞加工物等の細胞培養や研究開発)で使用して差し支えないか。使用する場合に留意すべき事項
はあるか。
A6: 構造設備は、ウイルスベクターの製造に係る運用と管理が適切に実施される場合には、他の目
6
的に使用することは可能である。ただし、以下の点に留意すること。
ウイルスベクターの製造に使用する設備を他の製品等の製造又は加工の目的に使用する場
合には、あらかじめ規定された不活化処理及び除染・消毒手順に従い、製造ライン等に残存
するウイルスベクターが完全に不活化されていることを確認するか、又はその不活化が確実
に担保される措置を講じること(特に開放系で使用する安全キャビネット等は周囲の処置を
行う機器も含めて不活化する)。
必要に応じて環境モニタリング等の評価を行い、適切に整備した施設を使用すること。
Q7: ウイルスベクターの製造や保管を行っている区域はその旨を表示すべきか。
A7: ウイルスベクターの製造や保管を行っている区域は、許可された者以外の立ち入りを制限す
るべきである。「遺伝子組換え微生物の使用等による医薬品等の製造における拡散防止措置等につ
いて」別添を参照すること。
Q8: 製造施設に常備すべきものは何か。
A8: 取り扱うウイルスベクターの特性を踏まえ、作業者の曝露リスクを低減するために必要な個
人防護具(マスク、ゴーグル、作業衣、手袋、靴カバー等)、ウイルスベクターの不活化に用いる薬
品(アルコール、次亜塩素酸ナトリウム等)及び漏出時の対応に必要な物品を、ウイルスベクター
を取り扱う各区域の適当な場所に備えておくことが望ましい。また、個人防護具については、常に
適切なものを使用できるよう、十分な数量を準備しておく必要がある。さらに、開放系操作時の封
じ込めに適した、生物学的安全キャビネットの性能分類であるクラスⅡa以上の安全キャビネット
や不活化処理のための高圧蒸気滅菌器(オートクレーブ)も必要である。
Q9: ウイルスベクター製造施設の衛生管理(清掃方法、清掃頻度、使用資材等)は、一般的な細胞
培養を行う特定細胞加工物等製造施設と同様でよいか。また、適切な環境状態に維持管理されてい
ることを定期的にどのように確認すべきか。
A9: 製造施設の衛生管理に係る清掃作業については、一般的な細胞培養を行う特定細胞加工物等
製造施設における考え方を基本としつつ、製造するウイルスベクターの製法や品質特性を踏まえ、
適切な清掃方法、清掃頻度、使用資材等を設定する必要がある。特に、ウイルスベクターの漏出が
発生した場合の除染作業については、一般的な細胞培養を行う特定細胞加工物等製造施設とは異な
り、取り扱うウイルスベクターの特性に応じた除染方法及び手順をあらかじめ定めておく必要があ
る。また、遺伝子組換え生物の製造に使用した設備、器具、資材等の洗浄、廃棄又は不活化等につ
いては、カルタヘナ法に基づく第二種使用等の拡散防止措置に従って実施することが求められる。
③ウイルスベクターの製造施設の作業者の教育訓練
Q10: 作業者が適切に業務を行うためには教育訓練が重要と考えられるが、どのようなタイミン
グ・頻度で実施し、また、どのような内容とすることが望ましいか。
A10: 教育訓練は、製造施設の実情や取り扱うウイルスベクターの特性を踏まえ、計画的かつ継続的に実
施することが重要である。教育訓練の実施に当たっては、以下の事項を考慮することが望ましい。なお、教
7
育訓練の対象には、法令に加えカルタヘナ法に関する内容を含めるとともに、管理者を含む全ての
従業員がその内容を十分に理解できるよう努める必要がある。
教育訓練の実施頻度については、製造するウイルスベクターの種類及び特性等並びに使用する
構造設備等を踏まえ、各施設の実情に応じて定期的に実施すること。実施の時期については、
例えば、新規配属者に対する導入教育、再配置時又は休職等からの復帰時における再教育、定
期教育等が考えられる。
製造施設ごとに教育訓練計画を策定し、当該計画に基づいて教育訓練を実施するとともに、そ
の実施記録を作成・保管すること。なお、欠席者に対しても補講等により教育訓練を実施し、
その履歴を確認できる記録を保存すること。
教育訓練の内容には、遺伝子組換え技術やウイルス学等に関する内容に加え、ウイルスベクタ
ーの品質特性に合わせた製造管理と品質管理に関する内容を含めること。
教育訓練は、管理者を含む管理区域に関わる全ての従業員を対象にすること。
教育訓練の客観的な評価方法(例えば、理解度確認テスト等)をあらかじめ定めることが望ま
しい。また、必要に応じて実技を伴う評価を実施すること。
④ウイルスベクターの製造施設の文書及び記録管理
Q11: 法で定められる特定細胞加工物等製造施設の運用管理の文書・記録体系には、ウイルスベクタ
ーの製造に係る作業者の健康管理に関する文書や記録も含まれるのか。
A11: 含まれる(則第97条第4項関係)。なお、清浄度管理区域又は無菌操作等区域で作業する職員の
衛生管理に係る規定も参照すること。(則第99条第1項第27号関係)。
Q12: 健康管理に関わる記録は、どの程度の期間保管する必要があるか。
A12: 教育訓練に係る記録については、5年間保存する必要がある。ただし、特定生物由来製品に該当
する医薬品又は指定再生医療等製品の原料と類似の原料から製造される特定細胞加工物等に係る記録
については 30 年間、それ以外の特定細胞加工物等に係る記録については 10 年間保管する必要がある
(則第110条第3号関係)。
⑤その他
Q13: ウイルスベクターの製造工程において、作業者への感染又は曝露はどのような場合に発生する
可能性があるか。
A13: 遠心操作等によりウイルスベクターを含むエアロゾルが発生する場合には、作業者の曝露又
は感染リスクが高まることが知られている。自然環境下では空気感染しないウイルスベクターであ
っても、製造工程中にエアロゾル化され、粒子径の小さい飛沫核として長時間空気中に浮遊する状
態になった場合、空気感染のリスクが高まる可能性がある。
エアロゾル以外にも、ウイルスベクターやその感染細胞への曝露につながる要因として、装置・
設備の不具合、資材の不具合、製造方法に起因する事象、廃液の取扱い、作業ミス(ウイルスベク
ターの不適切な取扱いを含む。)、試験検査中の検体の取扱い、運搬作業や災害、不慮の事故等の緊
急事態が挙げられる。
8
これらに限らず、製造施設においては自施設における危険性及び有害性を特定し、リスクの見積
もりを行うとともに、その結果に基づいて適切なリスク低減措置を検討し、実施する必要がある。
(2)リスク低減措置の具体的な内容
①製造工程での装置・設備・資材の不具合に起因するリスクの管理
Q14: 製造工程での装置・設備の不具合に起因するリスクとして、具体的にどのようなものが想定
されるか。これらのリスクをどのように管理すべきか。
A14: 具体的なリスクとして、安全キャビネットの不具合によりエアーカーテン等の機能が損なわ
れ、微生物粒子がキャビネット外へ漏出するリスクや、オートクレーブの不具合によって不活化処
理が不十分となり、感染が発生するリスク等が想定される。また、シングルユース製品(チューブ、
バッグ、フィルター等)の破損、ポンプチューブの摩耗による漏出リスク、凍結時の一次包装の破
損、さらには融解時又は融解後の一次包装資材の破損若しくは内容物の漏出等も想定されるリスク
である。特に、高圧がかかる部位、あるいは目詰まりの可能性がある工程に使用する資材は注意が
必要である。なお、高圧がかかる資材接続部や遠心分離に伴うリスクについては<Q16>を参照す
ること。
〈リスク低減措置〉
こうした装置・設備に起因するリスクを管理するために、以下の事項について手順を定めて文
書化し、遵守すること(則第97条第4項関係)。
装置・設備の定期点検とバリデーション、使用前の動作確認等により管理する手順
作業の記録を作成し管理者に報告するとともに、管理者がその内容を確認する手順
不具合時の緊急停止の手順
Q15: ウイルスベクターを製造する際のエアロゾル発生のリスクとして、具体的にどのようなもの
が想定されるか。
A15: 具体的には、ウイルスベクターの培養工程後の細胞回収・除去時や精製工程でエアロゾルが
発生するおそれがあることから、開放系で取り扱う場合には、安全キャビネット内で操作すること
が求められる。これらの操作方法については、リスクの程度に応じて適切な手順を定め教育訓練を
実施し、作業者が当該手順を確実に遂行できるようにしておく必要がある。
Q16: 製造工程中に高圧がかかる資材接続部や連結部の破損リスクとして、具体的にどのようなも
のが想定されるか。
A16: 具体的には、精製工程においてカラムクロマトグラフィーによる分離、タンジェンシャルフ
ロー・フィルトレーション(TFF)を用いた濃縮操作又はメンブランフィルターろ過等を行う場合
には、使用する部材内の圧力が上昇し接続部分が破損するリスクがあることから、圧力を常時監視
することが重要である。さらに、規定以上の圧がかかった場合、送液ポンプが自動的に停止するよ
う、フェイルセーフ機能を設定することも有用である。
②廃液に起因するリスクの管理
9
Q17: 各工程の廃液からのウイルスベクターの漏出リスクとして、具体的にどのようなものが想定
されるか。また、これらのリスクをどのように管理すべきか。
A17: 具体的リスクとして、製造装置の破損に伴い漏出するリスク、製造エリアの排水設備(排水
口)から漏出するリスク、運搬中に廃液容器が落下・転倒して容器から廃液が漏出するリスク等が
想定される。
〈リスク低減措置〉
これらのリスクを低減するため、各工程の廃液の不活化処理及び取扱いに関する手順を定
め文書化する必要がある。また、手順の誤りや設備の不具合が生じた場合であってもリスク
が顕在化しないよう、フェイルセーフの考え方を取り入れた管理体制を構築することが望ま
しい。設備面の対策として、各工程の洗浄液等の残余微生物を死滅させる工程(キル装置)
又は漏出時の拡散を防止するためのフェイルセーフのシステム(例えば一時貯留槽)を備え
ることが有効である。また、ウイルスベクターの製造規模によるが、ウイルスベクターを取
扱う区域内には廃水設備(排水口)を設けず、廃液を完全に不活化した後に区域外へ搬出す
る運用も、有効なリスク低減措置となり得る。運搬時のリスクに対しては、廃液の漏出を防
止できる密閉容器を使用するとともに、容器の落下・転倒を防止できる運搬方法を採用する
ことが望ましい。
③作業ミスに起因するリスクの管理
Q18: 作業ミスによる漏出リスクとして、具体的にどのようなものが想定されるか。これらのリス
クをどのように管理すべきか。
A18: 具体的なリスクとして、ろ過時のクランプミス、充填後のライン切断溶着ミス、培養バッグ
のチューブ閉塞ミスやカラムクロマトグラフィー工程でのラインの接続ミス等による漏出リスク
等が想定される。全ての製造工程における作業ミスによる漏出リスクを特定し、それぞれのリスク
についてリスクアセスメントを実施する必要がある。
〈リスク低減措置〉
これらのリスクを管理するため、標準作業手順書を遵守するとともに、定期的な教育訓練
の実施により、作業者に正確な操作を習得させること(則第109条関係)。
④試験検査中に起こり得るリスクの管理
Q19: 試験検査中の曝露が生じるリスクとして、具体的にどのようなものが想定されるか。これら
のリスクをどのように管理すべきか。
A19: 例えば、検体の移送中における衝撃・落下による容器破損に伴うウイルスベクターの漏出、
試験検査時における組換えウイルスベクターの開封又は検体採取時の操作ミスによる曝露、検体容
器の転倒による漏出、ウイルスベクター容器の破損に伴う漏出、サンプリングポートからの漏出、
陽性コントロールとして病原性や増殖性を有するウイルスを使用する際の曝露が想定される。
〈リスク低減措置〉
検体容器の破損に伴う漏出リスク又はサンプリングポートからの漏出リスクを管理するた
め、使用前点検を徹底し、異常が認められた場合には直ちに交換その他必要な措置を講じる
10
手順を定め、文書化した上で遵守することが求められる。また、作業記録を作成するととも
に、その内容を管理者へ報告し、管理者が確認する手順を定めて文書化し、適切に運用する
ことが求められる。
⑤機材、廃棄物の不活化に起因するリスクの管理
Q20: 使用した器材や廃棄物は、必ずオートクレーブを使って不活化するべきか。
A20: 取り扱うウイルスベクターの物理・化学的特性に応じて、検証された不活化方法を適用する
ことが求められる。オートクレーブは、ウイルスベクターに対する有効な不活化方法の一つとなり
得るが、製造施設ごとに、取り扱うウイルスベクターの物理・化学的耐性(熱、薬剤等)や汚染さ
れた器材や廃棄物の特性や量を考慮し、最適な不活化方法を選定すること。廃棄を業者に委託する
場合には、ウイルスベクターが確実に不活化されていることを確認した上で委託すること。
⑥施設外への輸送時のリスクの管理
Q21: ウイルスベクターを施設外へ搬送する際には、具体的にどのようなリスクが想定されるか。こ
れらリスクをどのように管理すべきか。
A21: 具体的なリスクとして、輸送容器の破損や予期しない開封や、不十分な密封によるウイルス
ベクターの漏出又は拡散が想定される。
〈リスク低減措置〉
法の規定に基づき、遺伝子組換え生物等は、漏出又は拡散を防止できる構造の容器等に保
管するとともに、当該容器(容器を包装する場合にあっては当該包装)の見やすい箇所に、
取扱いに注意を要する旨を表示することが求められる(遺伝子組換え生物等の使用等の規制
による生物の多様性の確保に関する法律施行規則(平成15年財務省・文部科学省・厚生労働
省・農林水産省・経済産業省・環境省令第1号)第34条関係)。
ウイルスベクターの製造を行う施設は、ウイルスベクターを施設外へ輸送する時、事故等に
よる漏出を防止するため、危険物輸送用の国連(UN)規格に適合した容器を用い、三重包装
を施すこと。
⑦災害や不慮の事故を含む緊急時のリスクの管理
Q22: 災害や不慮の事故を含む緊急時のリスクとして、具体的にどのようなものが想定されるか。
これらリスクをどのように管理すべきか。
A22: 火事、地震・津波・台風・豪雨等の自然災害や不慮の事故により、構造設備や装置等が破損
し、又は停電が発生することで、封じ込め機能が損なわれ、ウイルスベクターが漏出するリスクが
想定される。
〈リスク低減措置〉
緊急時に備え、フェイルセーフの考え方に基づく仕組みをあらかじめ構築しておくことが
求められる。また、ウイルスベクターの漏出時における除染措置、ウイルスベクターに曝露
した作業者への対応及び負傷した作業者に対する応急措置等を含む緊急時対応マニュアルを
11
あらかじめ整備しておく必要がある。さらに、緊急時対応マニュアルに基づく対応が確実に
実施できるよう、教育訓練を定期的に実施することが求められる。
停電の発生により構造設備や装置等が正常に作動しなくなるリスクに対しては、構造設備
上のフェイルセーフ対策として、室間差圧を維持するための送風を継続できるよう、非常用
発電機や蓄電設備等の非常用電源を確保することが求められる。また、送風機能が停止した
場合でも、ウイルスベクターが封じ込め区域外へ拡散しないよう、給気口と排気口の双方に
HEPAフィルターを設置しておくことが望ましい。運用面においては、停電時に作業を安全に
停止するための手順をあらかじめ定めて文書化するとともに、緊急時に手順を確実に実施で
きるよう、定期的に教育訓練を実施することが求められる。
また、構造設備や装置等の破損に伴うリスクに対するフェイルセーフ対策として、培養容器
や配管等が破損した場合の漏出に備え、床面は表面が平滑でひび割れ等がなく、清掃が容易
であり、かつ消毒液等による噴霧洗浄に耐え得る材質などであることが必要である(則第89
条第10号関係)。さらに、作業者の曝露事故その他の緊急事態が発生した場合の対応につい
て、事故を想定した緊急時対応の手順を定めて文書化するとともに、当該手順を緊急時に確
実に実施できるよう、定期的に教育訓練を実施することが求められる。
Q23: 製造ラインの不具合又は自然災害時等により、感染性を有する液体の漏出又は飛散が発生し
た場合に備え、どのような事前準備が必要か。
A23: 製造ラインの不具合を早期に検知し適切に対応するため、製造ライン等の日常点検や定期点
検を実施するとともに、その記録を定期的に照査し、傾向分析を行うことが重要である。また、自
然災害時その他の緊急事態により、感染性を有する液体の漏出又は飛散が発生した場合に備え、あ
らかじめ緊急時対応マニュアルを整備するとともに、当該マニュアルに基づく訓練を実施し、必要
な機材が適切に配備されていることを定期的に確認しておく必要がある。さらに、製造するウイル
スベクターの安全性に重大な影響を及ぼすおそれのある事態が発生した場合には、手順書等に基づ
き、必要な措置を速やかに講じるとともに、その内容を当該ウイルスベクターの提供先である再生
医療等提供機関へ報告する必要がある(則第107条関係)。
Q24: 製造作業中に想定外のトラブルが発生した場合はどのような対応をすべきか。
A24: 作業者の安全確保を最優先とし、異常又は事故が発生した場合には、速やかに製造部門の業
務責任者へ連絡するとともに、作業を安全な状態で一時停止し、影響範囲の確認、トラブル内容の
把握及び対応記録の作成等、あらかじめ定められた手順に従って必要な措置を講じることが求めら
れる。また、必要に応じて、品質管理部門において原因究明を行い、再発防止策を講じるとともに、
その内容を施設管理者へ文書により報告する必要がある。さらに、その内容を当該ウイルスベクタ
ーの提供先である再生医療等提供機関へ報告することが求められる(則第105条関係)。
(3)曝露事故発生時の対応
Q25: ウイルスベクターの製造に係る作業者が取り扱うウイルスベクターに感染したおそれがあ
る場合は、どのように対応すべきか。
12
A25: 必要な除染その他の応急措置を速やかに実施するとともに、当該作業者に対して直ちに医療
機関を受診させ、適切な診断及び治療を受けられるよう必要な対応を行うことが求められる。また、
当該作業者から第三者への感染リスクが想定される場合には、その程度に応じて隔離その他の感染
拡大防止措置を講じる必要がある。さらに、適切な検査や治療が実施されるよう、受診先の医療機
関に対し、組換えウイルスを使用していたこと、取り扱うウイルスベクターや起源ウイルス、由来
ウイルスに感染した場合に想定される症状や国内外における感染事例等の情報を提供する必要が
ある。加えて、ウイルスベクターへの感染が疑われる作業者を医療機関が円滑に受け入れ、適切な
対応を実施できるよう、特定細胞加工物等製造施設の事業者は、あらかじめ受診医療機関に対して
取り扱うウイルスベクターの種類や特性等に関する情報を提供するとともに、緊急時における受診
や受入れ体制を整備しておくことが望ましい。
これらの曝露事故発生時の対応手順については、あらかじめ定めて文書化しておく必要がある
(則第97条第4項関係)。また、当該手順の策定に当たっては、取り扱うウイルスベクター及びそ
の由来ウイルスへの曝露事故等に関する知見を有する専門家が関与することが求められる。
Q26: ウイルスベクターへの曝露事故と同時に、作業者が重傷を負い緊急搬送が必要となった場合
には、どのように対応すべきか。
A26: 具体的リスクとして、遠心機の回転軸の破損等の事故により、ウイルスベクターへの曝露と、
救急対応を要する負傷が同時に発生する可能性がある。
〈曝露事故発生時の対応策〉
曝露した作業者に対しては、感染リスクの低減や当該作業者を介した二次曝露又は二次感染
の防止のため、可能な範囲で汚染された衣類を脱衣させる等、必要な措置を講じることが求
められる。また、救急隊員等が製造区域内に立ち入る必要がある場合には、ウイルスベクタ
ーを製造している施設であることをあらかじめ伝えるとともに、必要な感染防御措置を講じ
るよう依頼する必要である。さらに、曝露したウイルスベクターに関する情報を記載した資
料を常備し、搬送時に医療機関へ提供することで、適切な診療及び対応につなげることが重
要である。なお、Hazmatにおける防護レベル(多くの場合はレベルD)に関する情報を救急
隊員等に提供することで、迅速かつ適切な救急対応につながることが期待される。
Q27: ウイルスベクターへの曝露が発生した場合に必要な法令上の対応は何か。
A27: 特定細胞加工物製造事業者は、当該事案が特定細胞加工物の安全性の確保に重大な影響を及
ぼすおそれがある事態が生じた場合には、手順書等に基づき必要な措置を講じるとともに、その内
容を速やかに当該特定細胞加工物等の提供先である再生医療等提供機関及び厚生労働大臣に報告
(重大事態報告等)しなければならない。また、当該措置の対象となる特定細胞加工物等を保管す
る場合には、当該特定細胞加工物等を区分して一定期間保管した後、適切に処理しなければならな
い(則第107条関係)。
カルタヘナ法に規定される遺伝子組換え生物を用いている場合は、第二種使用等における事故時
の措置を執ること(同法第15条関係)。
なお、ウイルスベクターに曝露した作業者自身が求められる手続ではないが、感染症の予防及び
13
感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)第12条の規定に基づき、当該
ウイルスベクターの製造工程で感染症への罹患が疑われ、医療機関を受診した場合、その感染症を
診断した医師は、最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に届け出なければならないこととされ
ている。
Q28: ウイルスベクターに曝露した場合や針刺し事故が生じた場合はどのように対処すべきか。
A28: 事前にリスク評価し、除染等の手順をあらかじめ文書で定めておくこと。針刺し事故が発生
した場合には、速やかに創部からの排血及び流水による洗浄を行い、曝露したウイルスベクターを
可能な限り除去することが基本である。また、迅速に相談又は受診ができるよう、あらかじめ相談
先となる医師(産業医等)又は受診医療機関を定めておくことが望ましい。
(4)作業者の健康管理
①平時における作業者の健康状態の把握
Q29: ウイルスベクターの製造に係る作業者の健康管理において、作業者の健康状態はどのように
モニタリングすべきか。
A29: 取り扱うウイルスベクターの特性に応じて、適切な健康管理を実施する必要がある。一般的
には、定期健康診断の実施に加え、管理者による日常的な健康状態の確認や、作業者からの自己申
告等を通じて、取り扱うウイルスベクターへの感染又は曝露に起因する健康への影響の有無を継続
的に把握することが求められる。なお、作業者の血液等の採取、検査又は保存については、本人へ
の十分な説明に基づく同意を得た上で実施する必要がある。
Q30: ウイルスベクターに曝露する可能性のある作業者に対して実施する定期健康診断について、
確立された検査・診断手法はあるのか。
A30: ウイルスベクターに係る検査・診断手法は、最新の科学的知見等を踏まえ、取り扱うウイル
スベクターの特性に応じて、定期健康診断で実施すべき検査・診断手法を定期的に見直すことが望
ましい。
また、開発されているウイルスベクターの多くは、病原性や増殖性を低減するよう設計されてい
るため、曝露した場合であっても必ずしも症状が発現するとは限らないが、ウイルスベクターの特
性によっては、抗体価の測定等により曝露又は感染の有無をモニタリングできる場合もある。
②重大な曝露や健康被害が疑われる事象が発生した場合の対応
Q31: ウイルスベクターの製造に関わる作業で、重大な曝露や健康被害が疑われる事象が発生した
場合、外部組織への報告義務はあるか。また、報告が必要な場合には、どのようなタイミングで行
うべきか。
A31: 直ちに製造管理者に報告する必要がある。また、製造施設の事業者、管理者並びに製造部門
及び品質部門の責任者に速やかに報告すると共に、事象の内容に応じて、例えば火災であれば所轄
の消防機関、感染症の発生が疑われる場合には保健所、再生医療等提供計画に関連する事象であれ
ば認定再生医療等委員会等の関係機関へ報告する必要がある。これらの報告は、対策の立案や原因
14
調査等の開始を待つことなく、事象を把握した時点で速やかに行うことが望ましい。また、カルタ
ヘナ法その他の関連法令又は通知等において報告義務が定められている場合には、それらの規定に
従って対応する必要がある。
15
別紙
再生医療等安全性確保法に基づきウイルスベクターを製造する施設における
作業者の健康管理等に関する検討会議
構成員
(令和8年8月現在)
氏名 所属・役職
小野寺 雅史 大阪大学大学院工学研究科 特任教授
◎ 川俣 治 東京理科大学 薬学部医療薬学教育研究支援センター 医薬品等
品質・GMP講座 エキスパート、東京農工大学 感染症未来疫学研
究センター 客員教授
丸山 裕一 シミック株式会社 コンサルティング事業本部 CMC グループ
シニアコンサルタント
山口 照英 日本薬科大学 客員教授
◎座長(五十音順、敬称略)
16
この資料について
出典:厚生労働省ホームページ (https://www.mhlw.go.jp/)
当サイトが保存しているのは、PDFから取り出した文字だけです。 これは言葉で探せるようにするためのもので、 厚生労働省が公表した資料そのものではありません。 図表・画像・レイアウトは失われています。
正確な内容は、必ず厚生労働省のPDFをご確認ください。