1株36.50ドルの現金買収、2026年末までの完了を予定

ビアトリス(Nasdaq: VTRS)とパシラ・バイオサイエンシズ(Nasdaq: PCRX)は2026年10月8日、ビアトリスがパシラの発行済普通株式すべてを1株あたり36.50ドルの現金で取得する最終契約を締結したと発表した。株式価値の総額は16.5億ドル。発表はピッツバーグとカリフォルニア州ブリスベンの連名で出された。

取得の手順は二段階方式である。ビアトリスはまず全発行済株式を対象に1株36.50ドルの現金による公開買付け(テンダーオファー)を開始し、その完了後、応募されなかった残りの株式を同額の対価で第二段階の合併によって取得する。取引は両社の取締役会が全会一致で承認しており、パシラの取締役会は株主に対し、公開買付けへの応募を全会一致で推奨している。

実行の条件は、発行済株式の過半数の応募と、適用される規制上の待機期間の満了を含む慣例的なクロージング条件。取引完了は2026年末までを見込む。完了後、パシラはビアトリスの完全子会社となり、同社普通株式はNasdaq Global Select Marketでの取引を終了する。

ビアトリス側の財務アドバイザーはモルガン・スタンレー、法務アドバイザーはCravath, Swaine & Moore。センタービュー・パートナーズも戦略・財務面で助言した。パシラ側はゴールドマン・サックスが独占財務アドバイザー、Ashurst Perkins Coieが法務アドバイザーを務める。

買収対象は特許保護下の2製品と開発パイプライン

パシラが持つのは、米国市場で販売中の特許保護された高採算品2つである。ひとつは術後疼痛向けの長時間作用型局所麻酔薬EXPAREL(bupivacaine liposome injectable suspension)、もうひとつは変形性膝関節症の疼痛管理を適応とする関節内注射剤ZILRETTA(triamcinolone acetonide extended-release injectable suspension)。

EXPARELは6歳以上の患者への浸潤投与による術後局所鎮痛、および成人の斜角筋間腕神経叢ブロック、膝窩部坐骨神経ブロック、内転筋管ブロックによる術後区域鎮痛に適応を持つ。多胞リポソーム技術でブピバカインを一定時間かけて放出する設計で、累積疼痛スコアの有意な低下と最大78%のオピオイド使用量減少が示されている(ただしオピオイド減少による臨床的ベネフィットは実証されていない)。産科の傍頸管ブロック麻酔には使用できない。

業績面では、2026年6月30日までの直近12カ月でパシラは総収益約7億4,600万ドル、調整後EBITDA約1億7,700万ドルを計上した。開発段階では、筋骨格系疼痛とその周辺領域のパイプラインを持ち、最も進んだ候補は変形性膝関節症を対象とする局所投与型遺伝子治療PCRX-201(enekinragene inzadenovec)で、第2相開発中である。

背景:革新的医薬品事業の構築と「速効型メロキシカム」

ビアトリスのスコット・A・スミスCEOは、今回の買収を「革新的医薬品事業を構築する戦略を前進させる重要な一歩」と位置づけ、急性術後疼痛向けのEXPARELと変形性膝関節症の膝痛向けのZILRETTAが「当社の速効型メロキシカムの市場機会とシナジーがあり、非オピオイド疼痛管理療法のリーダーとしての地位をもたらす」と述べた。あわせて、パシラが持つ米国の革新的医薬品の商業組織、マーケットアクセス、メディカルアフェアーズ、グローバルR&Dの機能が既存基盤を補完するとした。

ビアトリスは、知的財産に関する専門性と、競合参入後も売上を維持しながら製品ライフサイクルを延ばしてきた実績を生かし、パシラ製品群の長期価値を最大化するとしている。さらに、自社のグローバル基盤のなかで選択した市場に両製品を広げることを見込む。

パシラのフランク・D・リーCEOは、同社がオピオイド温存療法の普及を進め、これまでに約2,000万人近い患者が非オピオイドの疼痛管理にアクセスしてきたとし、「5x30戦略」の推進とパイプライン拡充に言及したうえで、ビアトリスの資源と規模が使命の実現を加速すると述べた。

意味:手元資金中心の調達と、ポートフォリオの重心移動

財務面の設計は保守的だ。ポール・キャンベル暫定CFO(最高会計責任者兼コーポレート・コントローラー)は、買収資金を主に余剰現金でまかない、残りを短期借入で調達する方針を示し、グロス・レバレッジ比率への影響は最小限にとどまると説明した。取引は財務ガイダンス指標に対して即時に増益寄与する見通しで、コストと収益の両面でシナジーの余地があるとしている。

ここから読み取れるのは、ジェネリックや既存ブランドを含む幅広いポートフォリオを持つ同社が、特許保護された米国の販売中製品と開発パイプラインを現金で取り込み、収益の重心を革新的医薬品側に移そうとしている構図である。買収対象が直近12カ月で約7億4,600万ドルの収益を上げている既存事業である点も、開発段階の資産を買う取引とは性格が異なる。レバレッジを大きく動かさずに売上と利益の成長を前倒しする、という設計思想が一貫している。

なお、ビアトリスは2026年11月5日(木)に2026年第3四半期決算を発表し、同日午前8時30分(米東部時間)から電話会見とライブウェブキャストを行い、四半期業績とパシラ買収について説明する予定である。取引の詳細資料はinvestor.viatris.comで公開されている。