2026年8月18日、田辺ファーマが希少皮膚疾患の治療薬候補デルシメラゴンについて、グローバルでの開発・販売権をデンマークのレオファーマへ譲渡すると発表した。一時金と直近の開発進捗に応じた支払いを合わせ、最大4億3,500万ドル(約695億円)を受け取るとされている。
この薬は、日本の研究者発の化合物であり、6月には米国で承認申請を済ませたばかりという状況であった。

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デルシメラゴンの対象疾患は赤芽球性プロトポルフィリン症(EPP)とX連鎖性プロトポルフィリン症(XLP)という、いずれも遺伝性の希少疾患で、日光を浴びると皮膚に激しい痛みが生じ、発疹、腫れ、赤み、灼熱感を伴う。生涯にわたって続くとされる疾患。
日本の患者数はEPPとXLPを含むポルフィリン症全体で200人程度とされる。

前述の通り、契約条件は一時金と近い時期のマイルストーンを合わせて最大4億3,500万ドル。加えて、その後の開発進捗に応じたマイルストーンと、発売後の純売上に応じた段階的ロイヤルティを田辺ファーマが受け取る形となっている。
日本・欧州・豪州で進行中の臨床試験は予定通り継続され、適切な段階でレオファーマへ移管されると述べられている。田辺ファーマは、得た資金を日本市場向けの新薬候補の獲得や研究開発に投じると明確に述べている。

この薬剤は日本薬学会の医薬化学部会誌に、創製の記録として記載されている。
EPPには既に合成ペプチドのアファメラノチドが治療薬として存在しており、欧米では承認を得ている。だがこの薬は皮下インプラント製剤であり、投与のたびに医療機関で処置を受ける必要があった。同誌によると田辺ファーマの研究者は「患者さんの利便性を大きく改善する経口剤を目指し、強力なアゴニスト活性と薬物動態および安全性を両立する化合物の創出に挑戦した」とされる。

薬剤の標的はメラノコルチン1受容体(MC1R)で、皮膚や毛包のメラノサイトに主に発現するGタンパク質共役受容体で、日光を浴びると局所で合成されるαメラノサイト刺激ホルモンによって活性化される。この受容体が働くとメラニン産生が促され、ユーメラニンへの合成が進む。EPPやXLPの患者では、この経路を人為的に強めることで、痛みを伴わずに日光を浴びられる時間を延ばせる可能性があった。

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この薬剤は2018年6月にはFDAからファストトラック指定を受けることとなる。2020年6月には米国子会社が国際共同第3相試験INSPIREを開始しており、2026年1月には主要評価項目を満たして良好な有効性と安全性を示したと発表されている。3月には米国皮膚科学会(AAD2026)でトップライン結果を公表し、症状が現れるまでの日光曝露時間の延長を含め、主要評価項目と副次評価項目にわたって統計学的に有意かつ臨床的に意味のある結果が得られたとされる。
そして2026年6月末、FDAへ新薬承認申請を提出し、ファストトラック指定に加えて希少疾病用医薬品指定も受けていた。承認されれば、EPPとXLPに対する初の経口治療薬となり、そのタイミングでの譲渡となった。

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買い手であるレオファーマはデンマークに本社を置く非上場企業で、皮膚科領域にFocusしている。近年は、2〜3年に1つ新薬を上市するという目標を掲げ、株式公開も検討しているとされ、実際2025年7月にはベーリンガーインゲルハイムから乾癬治療薬Spevigoの権利を1億500万ドルで取得し、2026年4月には、希少遺伝性皮膚疾患の治療法を開発する遺伝子治療企業Replayの買収を発表している。そのため、今回のデルシメラゴンもそのパイプライン強化の延長線上にあるとされる。
レオファーマの2026年上半期業績は、売上が72億6,000万デンマーククローネ(約1,794億円)で7%増という業績になっている。

一方の田辺ファーマは2025年7月1日にベインキャピタルの傘下に入り、その年の12月22日には塩野義製薬へ主力品の1つである筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬エダラボンに関する事業を25億ドル(約3,900億円)で売却している。
今回の譲渡もその事業整理の一環と見られるが、経営陣は過去のインタビューで自社研究と海外企業からのライセンスインを組み合わせて開発パイプラインを再構築すると語っており、日本市場に注力して毎年最大3つの新薬を投入する方針だとしていた。そのため、今回も含めて得た資金で日本市場向けにどのようなパイプラインを獲得しに行くのかが大きく注目される。