2026年10月5日、塩野義製薬は、米国の希少疾患薬企業イントラバイオを20億ドル(約3,156億円)で買収すると発表した。
塩野義は2025年5月以降、JT医薬事業、田辺のエダラボン事業、英ヴィーブ・ヘルスケアへの追加出資と大型投資を重ねており、今回で約1年半で4件目、合計は約1兆2,000億円の投資となっている。
この取引で、塩野義は遺伝性の神経疾患であるニーマン・ピック病C型と毛細血管拡張性運動失調症の治療薬AQNEURSAとその関連化合物の知的財産と販売権を含む、全世界の権利を取得することとなる。さらに、イントラバイオから希少疾患に詳しい人材とノウハウを取り込み、自社で開発中の脆弱X症候群、ジョルダン症候群、ポンペ病の治療薬候補などの研究開発を加速するとしている。
AQNEURSAの1つ目の適応であるニーマン・ピック病C型(NPC)は約10万人に1人の割合で発症するとされるライソゾーム病で、歩行障害やふらつき、認知機能の低下、嚥下や発話の障害が起こり、進行すると車いすや介護が必要になる。AQNEURSAは2024年9月24日、成人と体重15kg以上の小児のNPCの神経症状の治療薬として米国で承認されており、欧州でも2026年1月に承認されている。
2つ目の適応は毛細血管拡張性運動失調症(A-T)で、約4万〜10万人に1人の割合で発症するとされる。通常は幼児期に発症し、小脳の変性によって運動の協調が障害され、免疫機能の低下から重い感染症にかかりやすく、がんのリスクも高まる。AQNEURSAは2026年9月18日、A-Tの運動失調の治療薬として米国で承認されており、欧州でも適応追加を申請している。
イントラバイオは2015年に設立されており、非上場のため財務データは非公表だが、塩野義の発表で直近3年の業績が明らかにされている。
売上高は、2023年12月期がゼロ、AQNEURSAを発売した2024年12月期が354万ドル、2025年12月期が6,787万ドルで急激に成長している。営業損益は3年とも赤字で、2025年12月期は3,529万ドルの営業損失となる。そのため、買収額の20億ドルは、2025年12月期の売上高の約29倍にあたる。

今回の買収は、収益の柱である抗HIV薬の特許切れに対する対策として行われてきた大型投資の一環で、直近1年半で4件目の大型投資となっている。1件目は2025年5月に発表したJT医薬事業の買収で、1600億円でJT傘下の鳥居薬品をTOBなどで完全子会社にし、JT本体の医薬事業と米国の開発拠点アクロスも取得している。
2件目は2025年12月に発表した25億ドル(約3,900億円)での田辺ファーマからのエダラボン事業の買収で、2026年4月から米国子会社として事業を始め、ALS治療薬エダラボンのグローバル販売を開始した。
3件目は2026年1月に発表した英ヴィーブ・ヘルスケアへの追加出資で、21億2,500万ドル(約3,348億円)で新株を引き受け、出資比率を10.0%から21.7%に引き上げている。

塩野義は、AQNEURSAを米国でのラジカヴァの事業基盤に乗せるとしている。
同じ希少神経疾患の薬であり、米国で希少疾患の知見と事業基盤を持つことでAQNEURSAを早期から成功裏に立ち上げることができるとしている。