何が決まったか

ネクセラファーマ(東証プライム・4565)は2026年10月14日、子会社のネクセラファーマジャパンが、台湾に本社を置くSynmosa Biopharma Corporation(Synmosa社)との間で、不眠症治療薬QUVIVIQ®(一般名:ダリドレキサント)に関する独占的ライセンス、供給および商業化契約を締結したと発表した。

対象地域は、シンガポール、タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナム、オーストラリアおよびニュージーランドの8カ国である。

契約に基づき、ネクセラグループはSynmosa社に対し、対象地域におけるQUVIVIQ®の承認申請、承認取得・維持および商業化に関する独占的権利を付与する。Synmosa社は各国における薬事、マーケットアクセス、マーケティング、流通および販売を主導し、ネクセラグループは製品の供給と必要な薬事支援を担う。

対価として、ネクセラグループは契約一時金を受領し、加えて対象地域における承認取得に応じたマイルストン、売上高に応じたロイヤリティ、製品供給による収益を受領する権利を有する。金額は開示されていない。

2026年12月期の連結業績への影響については、2026年2月13日に開示した当期連結業績予想に織り込み済みとしている。同社は本件が中長期的に事業収益および企業価値の向上に寄与するとの見方を示している。

日本・台湾・韓国に続く展開

QUVIVIQ®はIdorsia Pharmaceuticalsが創製・開発した医薬品で、覚醒を促進する神経ペプチドであるオレキシンの受容体OX1RおよびOX2Rを阻害するデュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)である。オレキシン受容体1および2を同等の効力で拮抗することで、一晩を通じて過活動となった覚醒シグナルを低下させる、と同社は説明する。

現在の展開状況は、日本では成人の不眠症治療薬「クービビック®錠」として販売されており、台湾では承認を取得済み、韓国では製造販売承認申請中となっている。今回の8カ国は、この日本・台湾・韓国での展開に加わるかたちとなり、同社はQUVIVIQ®のアジア太平洋地域における潜在的なアクセスを「大幅に拡大」するものと位置づけている。

提携相手のSynmosa社は、医薬品の導入、研究開発、製造および販売を幅広く手がける台湾のスペシャリティファーマで、台湾を基盤に香港、中国およびアジア各国で事業・提携ネットワークを構築し、薬事、マーケットアクセス、プロモーション、倉庫管理および物流を含む商業化機能を有する。

代表執行役社長CEOのクリストファー・カーギル氏は「Synmosa社は、アジアにおける承認申請、マーケットアクセス、販売および流通に関する幅広い経験と事業基盤を有しており、各国でQUVIVIQ®の価値を最大化する上で重要なパートナー」とコメント。Synmosa社のPeter C. H. Lin社長は「各国・地域における規制当局の承認を条件として、対象地域の患者さんに新たな治療選択肢をお届けできるよう連携して取り組む」と述べている。

「自社で売る国」と「任せる国」の線引き

今回の契約で注目されるのは、ネクセラが同一製品についてアジア太平洋地域内で役割を使い分けている点だ。日本では自社製品として販売し、台湾では承認を取得済み、韓国では申請中という段階にある一方、東南アジア6カ国とオセアニア2カ国については、薬事から販売までをパートナーに委ねる形を選んだ。各国で異なる承認制度と流通網に自前で対応するのではなく、既存の事業基盤を持つ現地企業の機能を使う判断といえる。

収益構造も、契約一時金、承認マイルストン、ロイヤリティ、製品供給収益の四層で設計されている。製品供給をネクセラグループが担うため、販売が立ち上がれば供給面でも収益が発生する構図だ。承認取得が前提となるマイルストンとロイヤリティは、対象8カ国それぞれの規制当局の判断に左右される。

同社は自らを、日本およびAPACの市場で複数の上市済み製品を持ち、画期的な医薬品の開発・販売を行う商業化ビジネスを展開する企業と説明している。今回の契約は、そのうち「APACでのアクセス拡大」という部分を、自社展開とライセンスアウトの組み合わせで進める具体例となった。