何が発表されたか
大塚製薬株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:井上眞)は2026年10月26日、100%子会社である大塚アメリカ Inc.(所在地:米国カリフォルニア州サンフランシスコ)の傘下で、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)活動を担う「Otsuka BioVentures, LLC」(OBV、所在地:米国ニュージャージー州プリンストン)を通じ、戦略的株式投資を本格的に開始したと発表した。
OBVの概要は、社長がTarek Rabah氏、事業内容はコーポレートベンチャーキャピタル事業。投資領域は、大塚製薬が注力する疾患領域を中心に、革新的なサイエンス・技術を有する企業。投資地域は日米欧を中心に、グローバルとされている。
対象となる疾患領域として、リリースは精神・神経、腎、免疫、および幅広い希少疾患を挙げる。これらの領域で、自社研究開発を補完・拡張する革新的なサイエンスや技術に取り組む有望なスタートアップ企業に対して、株式投資を実施する。投資先には大塚製薬が持つ開発・商業化などのノウハウを提供し、同時に最先端のサイエンスや技術との接点を広げ、将来の戦略的パートナーシップにつなげることを目指すという。
すでに2件、1号案件は超音波の遺伝子治療
「本格始動」とあるが、投資の実績はすでにある。本年6月、OBVは第1号投資案件として、SonoThera Therapeutics(本社:米国カリフォルニア州サウスサンフランシスコ)のシリーズB資金調達ラウンドに参加した。
SonoTheraは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)および常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)を対象に、超音波を活用した非ウイルス性遺伝子治療プラットフォームの開発を進めている。今回の調達資金は、これらプログラムの開発に活用される予定だとされる。なお、大塚製薬のリリースが脚注で参照しているSonoThera側の発表のタイトルには、同ラウンドが募集超過(oversubscribed)の$125 Million Series B Financingであったことが示されている。
さらにリリースは、OBVが「既に2件目の投資も実行して」おり、引き続き有望なライフサイエンス企業への投資機会を積極的に検討していると記している。2件目の投資先や金額については記載がない。
OBV社長のTarek Rabah氏は、「大塚製薬にとって、投資や買収、そして協業は、長年にわたり培ってきた粘り強く挑戦し続ける姿勢と卓越した臨床開発力を、新たなイノベーションへと結び付けるための重要な取り組みです」とコメント。「大塚製薬の強みや専門性を組み合わせることで、有望なイノベーションの可能性を引き出すことができる企業とパートナーシップを築き、世界中の患者さんに届ける価値を最大化することを目指しています」と述べている。
投資領域は、自社パイプラインの重心と重なる
この発表の読みどころは、OBVが掲げた投資領域が、大塚製薬が実際に臨床開発を進めている領域とそのまま重なっている点にある。同社のニュースリリース一覧を見ると、直近では2026年10月23日にIgA腎症治療薬「VOYXACT(シベプレンリマブ)」のフェーズ3試験最終結果、9月24日に注意欠如・多動症(ADHD)治療薬「SIMTRIYO(センタナファジン)」のフェーズ3b試験追加解析結果、9月22日にFUS変異による筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対する「ウレフネルセン」のフェーズ3試験結果が並ぶ。腎、精神・神経、希少疾患という並びは、OBVが示す投資領域と一致する。
つまりOBVは、自社が開発力と商業基盤を持つ領域の周辺に、外部の技術を取り込む窓口として設計されている。1号案件のSonoTheraが、DMD(希少疾患)とADPKD(腎)という、大塚製薬の注力領域に重なる二つの適応を同一プラットフォームで狙っていることも、この設計と整合する。
リリースによれば、OBVは投資先に対して開発・商業化のノウハウを提供する立場に立つ。純粋な財務リターンを主眼とするファンドではなく、将来の提携候補を早い段階で囲い込む仕掛けである、という位置づけが明示されていることになる。投資地域を日米欧中心のグローバルとしている点を踏まえれば、探索の対象は米国の新興企業に限られない。
大塚製薬は今後、OBVを通じて有望なスタートアップとの接点をさらに広げ、戦略的パートナーシップの機会を創出することで、社会課題とサイエンスの融合を軸に、持続的なイノベーションの実現と事業ポートフォリオの強化に取り組むとしている。