持田製薬株式会社は2026年10月28日、Qilu Pharmaceutical Co., Ltd.(チールー ファーマシューティカル)と、Qilu社のバイオシミラーの日本における開発および販売に関する包括的提携契約を締結したと発表した。
何が決まったか
発表によれば、本契約に基づき、持田製薬とQilu社は複数のバイオシミラー候補品について、持田製薬による日本における開発および販売に向けた協業を進める。対象は個別の品目に限られず、「複数のバイオシミラー」を射程に入れた包括的な枠組みである点が、今回の契約の特徴として示されている。
持田製薬は本社を東京都新宿区に置き、代表取締役社長は持田直幸氏。相手方のQilu社は本社を中国山東省済南市に置き、総経理は張漢常氏である。
Qilu社について、持田製薬は資料のなかで次のように紹介している。1958年に設立され、研究開発、製造、販売を一貫して手がける中国を代表する製薬企業の一つで、中国最大の民間製薬企業として2025年の売上高は約60億米ドル。中国および米国に6つの研究開発拠点を展開し、5,800名を超える研究者が在籍する。これまでに約350製品を上市し、開発パイプラインは80以上の革新的医薬品、60以上のバイオシミラー、200以上のジェネリック医薬品で構成される。
製造面では、計24万リットルの細胞培養槽を保有し、バイオ医薬品およびバイオシミラーの商用生産に対応可能な製造体制を構築しているという。同社の製剤および原薬は米国および欧州をはじめとする各国・地域において規制当局から承認を受けており、100を超える国・地域に製品を展開しているとされる。
1品目の提携から、枠組みの提携へ
今回の包括契約には、前段がある。両社は2026年3月に、ホリトロピンアルファ(遺伝子組換え)のバイオシミラーに関する提携契約を締結しており、日本における本剤の製造販売承認取得に向けた開発を進めている。
持田製薬の説明によれば、両社はこの1品目をめぐる協業を通じて、バイオシミラー領域におけるさらなる協業の可能性を検討してきた。その結果、個別品目での協業にとどまらず、中長期的な視点で複数のバイオシミラーに関する協業を推進することで合意し、今回の契約締結に至ったという。
つまり、2026年3月の契約が特定の1剤を対象とする取引だったのに対し、今回の契約はそれを土台に、今後の品目を継続的に載せていける「器」をつくったものと読める。発表文が「包括的提携契約」という表現を用い、対象を「複数のバイオシミラー候補品」と記している点が、その性格を端的に示している。
なお、対象となる具体的な品目名、契約期間、契約金やマイルストンなどの経済条件については、今回の発表では明らかにされていない。
業界にとっての意味
持田製薬は今回の発表で、自社を「日本におけるバイオシミラーのトップランナー」と位置づけ、Qilu社との協業を推進することでバイオシミラーの製品ラインナップの拡充を図り、日本におけるバイオシミラー事業をさらに強化する方針を示した。そのうえで、これを通じて患者に新たな治療選択肢を提供するとしている。
バイオシミラーの事業は、1品目ごとに開発パートナーと原薬の供給元を探す進め方だと、品目が増えるほど交渉と調整のコストがかさむ。今回のように、供給側と包括的な枠組みを結んでおけば、候補品を選定するたびに契約交渉を一から積み上げる必要が薄れる。ラインナップを継続的に厚くしていくうえでは、1剤ごとの導入契約よりも効率がよい形だといえる。
パートナーとして選ばれたQilu社の側の条件も、発表文に記された数字から読み取れる。60以上のバイオシミラーを含む開発パイプライン、24万リットルの細胞培養槽、そして米国・欧州をはじめとする規制当局からの承認実績である。供給元候補の数と、商用生産を支える設備規模、そして規制対応の経験は、バイオシミラーを継続的に日本市場へ持ち込む枠組みを成り立たせる前提条件にあたる。
今後の焦点は、この枠組みのうえに実際にどの品目が載るかである。すでに開発が進むホリトロピンアルファ(遺伝子組換え)のバイオシミラーに続く候補が示される段階で、今回の包括契約が持つ実質的な規模が見えてくることになる。