何が起きたか

株式会社FRONTEO(本社:東京都港区、代表取締役社長:守本正宏)は2026年10月29日、マルホ株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長:杉田淳)と、AI創薬支援サービス「Drug Discovery AI Factory(DDAIF)」を活用した皮膚科領域における創薬標的探索に関する第2弾の共創プロジェクトを開始したと発表した。

第2弾プロジェクトでも両社は皮膚科領域を対象とし、炎症性疾患における新たな創薬標的候補の探索に取り組む。マルホが長年培ってきた皮膚科学・創薬研究に関する専門的な知見と、FRONTEOのAI解析技術および創薬研究者の調査・仮説構築力を組み合わせ、革新的医薬品の創出とアンメット・メディカル・ニーズの解消を目指すとしている。

FRONTEOの取締役/CSO(Chief Science Officer)の豊柴博義氏は、「第1弾の共創プロジェクトで得られた成果が評価され、マルホ様と新たな標的探索に取り組めることを大変うれしく思います」とコメント。あわせて「マルホ様の中核である皮膚科領域において、今後の研究開発に継続して関与するパートナーとしてFRONTEOを選んでいただいたことを、光栄に感じています」と述べた。DDAIFの強みについては、「AIによる解析にとどまらず、そこから得られた新規性の高い候補について創薬研究者が調査・考察し、エビデンスに基づく仮説として構築することで、次の研究段階につなげていくことにある」としている。

第1弾はウェット研究による検証段階へ

両社が第1弾の共創プロジェクトを開始したのは2025年7月である(2025年7月10日付プレスリリース)。目的は皮膚科領域における新規創薬標的の探索だった。

この第1弾において、FRONTEOは自社開発の方程式駆動型AI「KIBIT(キビット)」による解析と、創薬研究者チームによる調査・考察を組み合わせ、複数の標的候補を見出すとともに、その作用メカニズムを説明する仮説を構築した。発表によれば、ここで見出された複数の創薬標的候補は、現在マルホにおいて細胞等を用いたウェット研究による検証段階へと進んでいる。

つまり今回の第2弾は、第1弾がドライ(AI解析・仮説構築)からウェット(実験検証)へと引き継がれた段階で、並行して新たな探索を始める形となる。

DDAIFは、自然言語処理に特化した方程式駆動型AI「KIBIT」と、FRONTEOの創薬研究者およびAIエンジニアの知見を融合したAI創薬支援サービスである。疾患関連遺伝子ネットワークの解析や、標的分子候補に関する仮説の構築を通じ、医薬品開発における研究者の意思決定を支援する。すでに複数の大手製薬企業で導入されているという。KIBITは方程式を用いることで非連続な発見、因果関係の把握、高い再現性を実現し、学習プロセスの軽量化によりパソコン1台で稼働するとされ、日米欧で特許を取得済み。DDAIFに使われている技術については、FRONTEOが日本および欧州、米国、韓国で計21件の特許権を取得している。

マルホは1915年創業、医療用医薬品等の研究・開発・製造・販売を行う製薬企業で、従業員数は1,632人(2025年9月末)。2025年9月期の売上高は789億24百万円だった。FRONTEOは2003年8月創業、2007年6月26日に東証マザーズ(現:東証グロース)へ上場。資本金は915,057千円(2026年6月30日時点)で、日本と米国で事業を展開している。

業界にとっての意味

今回の発表で注目されるのは、AI創薬支援が「一度きりの実証」ではなく、継続的な取引関係として積み上がっている点だ。第1弾の成果が評価された結果として第2弾が始まったという説明は、AI解析の出力が実験検証に進む段階まで到達し、発注側の社内で次の投資判断を得たことを示している。AI創薬サービスにとっては、契約の継続そのものが一つの実績指標になる。

また、豊柴CSOが「マルホ様の中核である皮膚科領域において、今後の研究開発に継続して関与するパートナー」という表現を用いている点も、単発の解析受託からの位置づけの変化を示唆する。製薬企業の主力領域における探索の一部を外部のAIサービスが担う形は、創薬初期段階の分業のあり方に関わる。

もっとも、第1弾で見出された標的候補は現時点ではウェット研究による検証段階にある。AIが構築した仮説が実際にどこまで裏付けられるかは、今後の検証結果を待つことになる。第2弾が対象とする炎症性疾患についても、現時点で公表されているのは探索の開始までである。