2026年9月24日、米国立衛生研究所(NIH)の国立医学図書館がPubMedの新しい機能「Linked Discoveries」の試験版を公開しており、使ってみると面白い。1本の論文を起点に内容の近い論文を最大200本まで集め、引用関係や出版年、疾患・遺伝子・化合物のタグとともに地図のように表示することができる。
Linked Discoveriesは個々の研究結果がより大きなエビデンスの中でどう位置づけられるかを見やすくするための試験的なツールで、その論文と密接に関連する論文の近傍(neighborhood)をたどることができ、追試(replication)の研究も含まれる。
グラフとタイムラインの2つの表示形式があり、疾患、遺伝子、化合物で絞り込むことができる。さらに、引用関係、レビュー論文、撤回された論文、NIHの研究費を受けた論文といった情報も示される。
仕組みとしては、まず論文のタイトル/抄録/キーワードを生物医学や臨床の文章で学習した言語モデルBiomedBERTで数値に変換する。
次に、起点の論文と類似度の高い論文を集める。既定では起点の論文と最も近い49本の計50本を表示し、最大200本まで広げることができ、新しい論文は毎日追加される。
最後に、疾患・遺伝子・化合物のタグ、引用関係、論文の種類、研究費の情報をタグとして付ける。

以前からSimilar Articles(類似論文)を表示する機能はあるが、それは関連する論文を順位付きの一覧なのに対し、Linked Discoveriesは疾患・遺伝子・化合物といった共通のテーマや、引用関係、撤回、レビューといった関連する文脈を把握するための道具となっている。
例として、肺動脈性肺高血圧症治療薬ソタテルセプトの第3相HYPERION試験の論文(NEJM 2025年)で見てみる(画像を添付) 。PubMedの論文ページを開くと、右側にEXPERIMENTAL RESOURCE(試験的なリソース)としてLinked Discoveriesボタンがある。
そこをクリックすると、左上の起点の論文(Seed)のアイコンから、内容の近い順に左から右、上から下へ49本の論文が表示される。
それぞれのアイコンに筆頭著者と出版年が表示され、色は論文の種類 (濃い青が通常の論文、下半分が金色なのがレビュー論文、右半分が水色なのがNIHの研究費を受けた論文、赤が撤回された論文)となっている。アイコン周りの薄い円が大きいほど多く引用されている。
この中で薄い円が最も大きかったのは”Hoeper MM '23”で、クリックすると第3相STELLAR試験の論文(NEJM 2023年)であることがわかる。さらにそこから多くの論文へ引用の線が放射状に伸びるように表示されるため、ソタテルセプトの研究の中心にこの論文があることが視覚的にわかるようになっている。

さらに表示方法をタイムラインに切り替えると、それぞれの論文が出版年ごとに並ぶため、いつの時期の論文が多く参照されているかが視覚的にわかる。

NIHによればLinked Discoveriesは、研究の質を判定したり、ある結果の追試が成功したかどうかを判断したりはせず、論文同士のつながりを整理し、研究者が自らエビデンスを評価するための追加の文脈を提供するとしている。また、まだ初期段階の試験的な公開であり、ツール内のボタンから利用者の意見を受け付け、今後の改良に反映するとしている。