何が改訂されたか
認定NPO法人キャンサーネットジャパン(所在地:東京都文京区、理事長:岩瀬哲)は、冊子「もっと知ってほしい前立腺がんのこと」を2026年10月に改訂した。発表は2026年10月29日16時00分。
今回の改訂の中心は、これまで別冊として発行していた「もっと知ってほしい前立腺がんの放射線療法のこと」の内容を本冊子に統合した点にある。これにより、前立腺がんの基礎知識や検査・診断、さまざまな治療法に加え、放射線療法についても1冊で学べる構成になった。
監修は、独立行政法人 地域医療機能推進機構 三島総合病院 院長の赤倉功一郎先生と、浜松医科大学医学部医学科 放射線腫瘍学講座 教授の中村和正先生の2名が務めた。制作は認定NPO法人キャンサーネットジャパン、制作・改訂支援はバイエル薬品株式会社。
収録されている主な内容は、前立腺がんとはどのような病気か、検査・診断について、病期や悪性度について、治療(手術、放射線、薬物療法)について、薬物療法の副作用について、である。このほか、治療に伴う副作用や、治療を受けながら生活するうえで知っておきたい情報、患者自身の体験談「Patient's Voice」も掲載している。
冊子はCNJのウェブサイトから無料でダウンロードできる。活用できる医療機関へは、制作支援企業であるバイエル薬品株式会社より無償提供される。また、患者がよりアクセスしやすいようにと、冊子の内容をテキストで掲載しているサイトも用意されている。
「もっと知ってほしいシリーズ」の積み上げ
キャンサーネットジャパンは1991年に発足し、がん患者が本人の意思に基づき治療に臨むことができるよう、科学的根拠に基づく情報発信を行うことをミッションに掲げてきた。2001年にNPO法人化、2007年1月に専用事務局を開設し、現在は東京と大阪を拠点に全国で活動している。2016年8月には認定NPO法人となった。
主な活動は、各種がんについての啓発イベント、疾患啓発冊子「もっと知ってほしいシリーズ」の制作、養成講座や認定試験などの教育事業である。2014年からは、がん患者・家族のみならず一般市民を対象としたがん啓発イベント「ジャパンキャンサーフォーラム」を毎年開催している。
今回の改訂により、「もっと知ってほしいシリーズ冊子」は45種類となった。シリーズは全国のがん診療連携拠点病院に設置されており、多くの人が利用できる状態にあるという。
今回の統合は、単に2冊を1冊にまとめたという形式の変更にとどまらない。前立腺がんには、ゆっくり進行するものから早期の治療が必要となるものまで、さまざまなタイプがある。治療法を選ぶ際には、がんの状態や治療の効果、副作用などを理解し、自分の考えや生活に合った選択肢を医療者とともに考えることが大切だと、発表では説明されている。手術・放射線・薬物療法という選択肢を並べて見比べられる構成は、この「選ぶ」という場面を前提にしたものといえる。
業界にとっての意味
製薬企業の側から見ると、この冊子は疾患啓発活動の一つの型を示している。制作主体はNPO法人、監修は泌尿器科領域と放射線腫瘍学の医師、企業は制作・改訂支援と医療機関への無償提供を担う、という役割分担である。企業名は支援者として明記される一方、内容の監修は医師が担う構造になっている。
また、冊子という紙媒体だけでなく、ウェブサイトからの無料ダウンロードと、内容をテキストで掲載したサイトという複数の入り口が用意されている点も特徴だ。テキスト掲載は「患者さんがよりアクセスしやすいように」との意図によるもので、読む手段を選べることが情報提供の前提に組み込まれている。
シリーズが45種類に達し、全国のがん診療連携拠点病院に設置されているという事実は、患者向け情報提供が個別の冊子単位ではなく、面として積み上がってきたことを意味する。今回のように別冊を本冊に統合する改訂は、シリーズの点数を増やす方向とは逆の動きだが、患者が手に取る冊数を減らし、一度の通読で治療全体を見渡せるようにするという判断だと読める。情報を増やす段階から、整理して届ける段階へ、という移行を示す一例である。
冊子に関する問い合わせ先は、認定NPO法人キャンサーネットジャパン(担当:藤原・関口、Eメール:info@cancernet.jp)。