2026年9月15日、塩野義製薬が米国でエンシトレルビル:COVID-19薬ゾコーバ(米国名Xocova)のオムニチャネル・キャンペーンを開始したとFiercePharmaが報じており、医薬品のDTCプロモーションが可能な米国ならではであり興味深い。ゾコーバは6月1日にFDAの承認を取得し、7月28日に販売を開始している。日本では2022年に国産初の経口コロナ薬として緊急承認されたが、米国では治療適応の第3相試験が2024年に主要評価項目を達成できなかった。その後、曝露後の発症予防という別の適応で参入しており米国で承認された初めての経口の曝露後予防薬となっているため、いかに大衆の認知度を上げるかが重要となっている。
https://www.fiercepharma.com/marketing/shionogi-taps-bloc-omnichannel-campaign-backing-covid-19-pill-xocova

承認の根拠となったSCORPIO-PEP試験は、グローバルの第3相RCT試験で、結果は2026年5月にNew England Journal of Medicineに掲載されている。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2509306
https://www.pharmexec.com/view/fda-approves-xocova-first-oral-post-exposure-covid-19-prevention

SCORPIO-PEP試験の概要と結果(NEJM 2026年5月・塩野義製薬発表をもとに筆者作成)
SCORPIO-PEP試験の概要と結果(NEJM 2026年5月・塩野義製薬発表をもとに筆者作成)

対象は、症候性COVID-19患者と同居している12歳以上の家族で組み入れ時点でSARS-CoV-2検査が陰性で無症状であることが条件であり、2,387例が組み入れられ主要解析には中央検査で陰性が確認された2,041例が含まれている。参加者は、感染者の症状発現から72時間以内に投与を開始し、エンシトレルビル(1日目375mg、2日目以降125mg、計5日間)またはプラセボを1対1で割り付けられた。
主要評価項目は10日目までの症候性COVID-19の発症率で、エンシトレルビル群2.9%、プラセボ群9.0%で相対リスクを67%低減する結果となった。

塩野義製薬の8月3日の第1四半期決算説明会で、この商業化戦略をめぐる質疑があり、同社は「曝露後予防の認知は依然として比較的低い。したがって、特定のターゲットグループに焦点を絞るのではなく、まず一般の人々の間で、COVID-19のリスクと予防の重要性についての広範な認知を高めようとしている。これは主にソーシャルメディアと関連チャネルを通じて行っている」と述べていた。
https://www.shionogi.com/content/dam/shionogi/global/investors/ir-library/presentation/2026/1q/FY2026_1Q_transcript.pdf

つまり、まずは一般消費者への広範な認知形成が重要としており、「曝露後予防」という概念そのものを大衆的に広める戦略をとっている。放送テレビと検索エンジン最適化により、高齢者層での認知を最大化する。
9月15日に始まったオムニチャネル・キャンペーンは、“Got the Call, Make the Call”をキーメッセージとしてオムニチャネルで実行されている。テレビ広告に加え、ソーシャルメディア、デジタル、印刷媒体、オンライン動画、デジタル屋外広告、院内および薬局の資材を用いる。FiercePharmaによれば、すべての資材がXocovaのウェブサイトへ誘導する構造になっている。

7月28日に放映が始まった90秒のテレビ広告「Hi Mom」は、COVID-19に感染した息子が母親に電話し、母親がすぐ医師に電話してXocovaについて聞く流れとなっている。

キャンペーンの3つのステップ「Got the Call, Make the Call」(筆者作成)
キャンペーンの3つのステップ「Got the Call, Make the Call」(筆者作成)

塩野義が決算説明会で示した市場調査の結果によれば、重症化リスクの高い人のうち約70%が、Xocovaによる予防に関心を示す一方で、重症化リスクの高い人と同居する人では約80%でありさらに高い。そのため、このTVコマーシャルの内容はその結果を反映したものとなっている。

塩野義製薬が示した市場調査の結果(2026年度第1四半期決算説明会資料をもとに筆者作成)
塩野義製薬が示した市場調査の結果(2026年度第1四半期決算説明会資料をもとに筆者作成)

いつまでこの大衆向けの大きな投資を続けるかについては、実績は週次でモニタリングするが決定は四半期ごとに行うと述べられている。売上予想については、2027年3月期の連結業績予想で米国でのゾコーバ売上高として約40億円を織り込んでいると日経新聞が報じている。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF011V70R00C26A6000000/