何が決まったか

あすか製薬ホールディングス(コード番号4886、東証プライム)は2026年11月4日、子会社のあすか製薬株式会社が、Minghui Pharmaceutical (Hangzhou) Limited(本社:中国・杭州、CEO:曹国慶〈Guoqing Cao〉)と、甲状腺眼症(Thyroid Eye Disease:TED)治療薬「MHB018A(開発コード)」の導入に関するライセンス契約を締結することを同日の取締役会で決議したと発表した。本契約により、あすか製薬はMHB018Aの日本における独占的な開発権および販売権を取得する。

契約条件として、Minghui社が受領する契約一時金は110百万米ドル。あすか製薬ホールディングスは、2026年10月26日の中心相場1米ドル=157.20円で換算して約173億円としている。これに加え、開発の進捗や販売額に応じたマイルストーン、および販売額に応じたロイヤルティが含まれる。その他の詳細条件は非開示とされた。

本契約による同社の2027年3月期の連結業績への影響は軽微としている。

導入品と対象疾患

MHB018Aは、Minghui社が活動期および慢性期のTEDの治療を目的として開発した、インスリン様成長因子1受容体(IGF-1R)を標的とするヒト化モノクローナル抗体で、皮下投与により使用される新規の皮下注射製剤である。IGF-1Rシグナル伝達を阻害するよう設計されており、TEDの病態形成に関与するシグナル伝達を抑えることで、眼球突出や複視、炎症症状などの改善が期待されている。これまでに実施された臨床試験では、強力な臨床効果と良好な安全性が確認されたとされる。現在、Minghui社がTEDを対象に中国およびグローバルで第Ⅲ相臨床試験を実施中である。

対象となるTEDは、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)など自己免疫性甲状腺疾患に関連して発症する希少疾患で、眼窩組織の炎症や線維化により眼球突出、複視、眼瞼腫脹、眼痛などの症状を呈する。重症化した場合には視力障害を引き起こすことがあり、患者の生活の質(QOL)を著しく低下させることが知られている。一方、日本国内における治療選択肢は限られており、アンメットメディカルニーズの高い疾患の一つと位置づけられている。

Minghui社のGuoqing Cao CEOは「日本はMHB018Aにとって重要な市場であり、あすか製薬は内分泌領域における深い専門性に加え、臨床開発、薬事および販売に関する豊富な経験を有しています」とコメントし、本提携を「MHB018Aを世界中の患者さんへ届けるための重要な一歩」と述べた。あすか製薬の山口惣大代表取締役社長は、今回の提携が「甲状腺領域およびスペシャリティ領域の強化ならびに製品ラインナップの拡充に資する」とし、承認取得に向けた取り組みを進める考えを示した。

何が変わるか

あすか製薬が取得したのは日本における独占的な開発権と販売権であり、原薬や製剤の開発そのものはMinghui社が中国およびグローバルで進める第Ⅲ相試験が先行する構図となる。同社は日本での早期の承認取得と患者への治療機会の提供を目指すとしており、国内で限られているTEDの治療選択肢に、IGF-1Rを標的とする皮下注射製剤という選択肢が加わるかどうかが焦点になる。

契約一時金110百万米ドル(約173億円)は、資本金1,197百万円のあすか製薬にとって小さくない規模の支払いだが、会社は2027年3月期連結業績への影響を軽微と説明している。マイルストーンとロイヤルティの水準を含む詳細条件が非開示であるため、長期的な費用負担の全体像は現時点では明らかになっていない。

あすか製薬ホールディングスは、長期ビジョン「ASKA VISION 2035」のもと、「中期経営計画2028」で重点領域の強化と開発パイプラインの拡充を進めている。今回の導入は、同社が重点を置く甲状腺領域とスペシャリティ領域に沿ったもので、自社開発と並ぶ「有望な開発品の導入」という成長手段を実行に移した事例にあたる。同社は、今後公表すべき事項が生じた場合は速やかに開示するとしている。