何が決まったか

ネクセラファーマ株式会社(東証プライム、コード番号4565)は2026年11月4日、子会社のNxera Pharma UK LtdがAbbVie Inc.との間で、同社が創製した新規低分子EP4受容体作動薬NXE0033744を含むEP4作動薬プログラムについて、グローバルにおける独占的なライセンス契約を締結したと発表した。本契約に基づき、アッヴィ社は炎症性腸疾患(IBD)を対象とするNXE0033744の全世界における独占的な開発・商業化権を取得する。

経済条件は、契約一時金が1億米ドル(約158億円、1米ドル=157.80円で換算)。これに加えて、開発・販売マイルストンとして最大13億7,000万米ドル(約2,162億円)、さらに売上高に対する段階的ロイヤリティを受領する権利を有する。

本取引は、米国のHart-Scott-Rodino Antitrust Improvements Act(HSR法)に基づくものを含む、通例の独占禁止法上のクリアランスの取得を条件としている。2026年12月31日までに取引が完了した場合、1億米ドルの契約一時金はネクセラの売上収益に重要なプラス影響をもたらす見込みで、会計監査人との合意を前提に、2026年12月期第4四半期の売上収益として認識される予定だ。これを踏まえ、同社は同日付で2026年12月期の連結業績予想を修正している。

導出された品目と、そこまでの経緯

NXE0033744は、同社独自のGPCR構造ベース創薬プラットフォーム「NxWave™」を活用して創製された、炎症性腸疾患を対象とするファーストインクラスとなる可能性を有する低分子の経口・消化管選択的EP4受容体作動薬である。全身曝露を最小限に抑えながら、消化管局所でEP4受容体を選択的に活性化することで抗炎症作用を誘導し、あわせて上皮バリアの恒常性維持および粘膜治癒を促進するよう設計されており、既存治療とは異なる作用機序となる可能性があるとしている。

ヒト初回投与のフェーズ1試験はすでに良好に完了している。試験には単回および反復漸増投与試験、潰瘍性大腸炎患者コホート、ならびにインドメタシン負荷コホートが含まれた。得られたデータは作用が消化管選択的である特性を裏付けるとともに、インドメタシン誘発性腸管透過性亢進の抑制を通じて標的への作用を示した。懸念すべき有害事象は報告されていない。

対象疾患である炎症性腸疾患は、主に潰瘍性大腸炎およびクローン病を含む、消化管の慢性かつ再燃性の炎症性疾患の総称である。同社は、治療選択肢が進歩した現在も十分かつ持続的な寛解や粘膜治癒を得られない患者が多く、長期的な疾患コントロールを改善する新たな作用機序の治療薬が求められていると説明する。

また、代表執行役社長CEOのクリストファー・カーギル氏は、アッヴィ社が現在進行中の神経疾患領域における創薬提携を通じてすでにネクセラにとって重要なパートナーであると述べており、今回の契約は同社にとって同一相手との二件目の提携という位置づけになる。

業界にとっての意味

第一に、フェーズ1完了段階の品目に対して契約一時金1億米ドル、マイルストン最大13億7,000万米ドルという条件が付いた点である。臨床の初期段階で全世界権を大手に委ねる代わりに、開発・商業化の負担とリスクを移し、受領するキャッシュで財務基盤を固める——カーギル氏が述べた「契約一時金および受領する可能性のある短期的なマイルストンは当社の財務基盤をより強化する」という言葉は、この取引の性格を端的に示している。同時に段階的ロイヤリティを確保しており、上市後の価値を取りこぼさない設計でもある。

第二に、創薬プラットフォームの評価という観点だ。NXE0033744はNxWave™から生まれた品目であり、同社はこの契約を「NxWave™の継続的に成果を生み出す能力に対する強い信頼の表れ」と位置づける。神経疾患領域に続き免疫疾患領域でも同じ相手と組んだという事実は、プラットフォームの適用範囲が単一領域にとどまらないことを対外的に示す材料になる。

第三に、会計面の影響である。契約一時金の売上収益認識は、独占禁止法上のクリアランス取得と2026年12月31日までの取引完了、そして会計監査人との合意という複数の条件に依存する。業績予想の修正はこれを前提としたものであり、クリアランスの時期が期をまたぐかどうかが計上タイミングを左右する構図になっている。