MSD株式会社は2026年11月5日、漫画家・岡田有希さんが自身の子宮頸がんの経験をもとに描いたエッセイ漫画『さよならしきゅう』の一部を、同社が運営する子宮頸がん疾患啓発サイト「もっと知りたい、子宮頸がん予防」で期間限定公開すると発表した。11月の子宮頸がん予防啓発月間に合わせた取り組みである。
公開の内容
公開場所は特設サイト(https://www.shikyukeigan-yobo.jp/manga-02/)で、公開期間は2026年11月5日から12月23日まで(予定)。掲載されるのはKissコミックス『さよならしきゅう』から1話、2話、7話、8話、12話、14話、15話、18話、20話、最終話の計10話となる。
『さよならしきゅう』は、平凡な毎日を送っていた33歳の主人公が、生理不順がきっかけで受診した病院で子宮頸がんと診断され、家族とともに入院や手術などの治療生活に向き合う日々を描いた作品だ。同じ病の人のブログなどを数多く読んでも最後は絶望することになり、「元気になれるものが読みたかった」という思いから生まれた、家族や友人との絆、同じ病室の人たちの温かさに支えられた闘病エッセイとされる。
作品は2014年から2017年にかけて株式会社講談社の漫画雑誌に連載されたもので、今回の掲載は講談社および著者の岡田有希さんの許諾を得て行われる。著者は闘病エッセイ漫画『さよならしきゅう』『さよならしきゅうそのあと』のほか、ルポ漫画『ルポ魂!』、『ダイヤのC!!』などを手がけている。
MSDは掲載にあたり、本作が著者の実体験をもとに再構成されたものであり、描かれている内容はすべての患者に当てはまるものではないこと、子宮頸がんと診断されたすべての人が同じ経過をたどるわけではないことを明記。予防や治療に関する情報は医師または専門の医療機関に相談するよう呼びかけている。
背景にある疾患の数字
MSDが資料で示した数字によれば、子宮頸がんは日本で毎年約10,000人が罹患し、約2,700人が亡くなっている(国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」、全国がん罹患データ2016年~2023年/全国がん死亡データ1958年~2024年)。
また、日本産科婦人科学会 婦人科腫瘍委員会報告 2023年患者年報をもとに、毎年約18,000人が子宮頸がん(上皮内がんを含む)により手術を受け、うち約3,600人以上が子宮を摘出する手術を受けているとしている。
発生にはヒトパピローマウイルス(HPV)と呼ばれる、男女ともに感染するごくありふれたウイルスが関わっており、患者の90%以上でこのウイルスが見つかることが知られている(厚生労働省「HPVワクチンに関するQ&A」)。子宮頸がんは20~30代でもかかるがんであり、就労や結婚、出産、子育てなど、本人や家族にとって大きなライフイベントを迎える時期に罹患する可能性がある。MSDは、HPVワクチン接種によるHPV感染予防と、検診による早期発見が大切だとしたうえで、HPVワクチンと検診で子宮頸がんを100%予防できるわけではないとも注記している。
「数字」ではなく「生活」を見せる啓発
MSDはこれまでも子宮頸がんの啓発活動を通じて予防と早期発見の重要性を発信してきたとしており、今回は啓発月間を機に、漫画を通じて子宮頸がんを正しく知り、予防や早期発見について考えるきっかけにしてほしいとしている。
罹患数や死亡数といった統計は、疾患の重さを示す一方で、個々の生活がどう変わるかまでは伝えにくい。今回の取り組みは、33歳という特定の年齢の主人公が診断を受け、入院や手術に向き合う過程を、家族との関係を含めて描いた既刊作品を、製薬企業の疾患啓発サイトに載せるという形をとった。自社で啓発コンテンツを制作するのではなく、第三者が描いた体験記を許諾を得て掲載する点が、この施策の特徴といえる。
掲載話が1話・2話から最終話まで飛び石で選ばれているのも、診断から治療、その後へと至る流れを限られた話数でたどれるようにした構成と読める。公開は12月23日まで(予定)の期間限定で、啓発月間の11月を超えて設定されている。