何が行われたか
ノバルティス ファーマ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:ジョンポール・プリシーノ)は2026年10月31日(土)、慢性骨髄性白血病(CML)患者・家族の会「いずみの会」、日本調剤グループの株式会社日本医薬総合研究所と共催で、「CML患者さん・ご家族のためのフォーラム2026」を開催した。発表は2026年11月6日付。
フォーラムは2部構成。第一部「CML治療の現在と未来」では、秋田大学医学部附属病院 血液内科 教授の髙橋直人氏が、CML治療の進歩とQoLを重視した患者との共同意思決定(SDM)の重要性について講演した。続いていずみの会の河田純一氏が、最新のCML患者体験調査の結果を紹介した。
第二部「より良いCML治療を実現するために」では、日本調剤 柏の葉公園薬局の渡辺富美子氏が、患者の服薬や生活を支える薬局薬剤師の役割を解説。その後のクロストークには、髙橋氏、渡辺氏、河田氏に加え、患者の大久保聡美氏が登壇し、治療に伴う困りごとや不安を医療者に伝える工夫について議論した。
河田氏は、患者が自身の我慢や困りごとを言葉にすることの難しさを指摘し、体調の変化や生活上の困りごとを記録・可視化することで、医師や薬剤師に状況を具体的に伝えやすくなることを紹介した。髙橋氏は、検査数値だけでは把握できない日々の体調変化やQoLへの影響を患者自身が伝えることが、より良い治療をともに考えるきっかけになると説明。渡辺氏は、診察室で伝えきれなかった困りごとを薬局薬剤師に相談できることや、日々の服薬状況などの記録を共有することで、患者の状況をより具体的に把握し支援につなげられることを紹介した。
背景:長期生存の先にある「自分らしい生活」
資料によれば、治療の進歩によりCMLは長期生存が可能となった一方、治療とともに長く生活していくからこそ、副作用や仕事への影響、経済的負担など、治療効果だけでは捉えきれないQoLの課題に目を向けることが重要になっている。
2021年にいずみの会が実施した患者調査では、検査や治療で重視していることとして「副作用」や「経済的負担」などが挙げられた。その5年後にあたる2026年の「CML患者体験調査」でも、「医療費」や「治療の副作用による仕事への影響」が困りごととして最多であり、引き続き重要な課題となっている。同調査は東京大学医科学研究所、神戸大学大学院医学研究科、日本医薬総合研究所によるもので、2026年9月18日までに回収した352件に基づく中間速報値である。
同調査では、医師からの説明に満足している患者が83.5%に上る一方、説明を受けた内容として「副作用」は16.2%、「今後の生活」は2.3%、「治療費の目安」は2.6%にとどまる。QoL改善に関わる内容の説明を受けた割合は低く、自分らしい生活をおくる希望について十分に対話できていない現状が示されている。
また、CMLでは薬を休止した後も寛解を維持する「無治療寛解(TFR)」が新たな治療目標の一つになっている。こうした目標の実現には、患者がQoLを大切にして治療を続ける必要があり、日々の困りごとや希望を整理して医師や薬剤師と共有できる環境づくりが重要だと、同社は位置づけている。
同社の取り組みと、その意味
ノバルティス ファーマは20年以上にわたりCML領域に携わり、治療薬の開発・提供に加え、患者のQoL向上を支える環境づくりに取り組んできたとしている。
2025年には、日本調剤株式会社およびグループ会社の日本医薬総合研究所と共同プロジェクト「患者サポートプログラム CML-PATH」を開始した。薬局薬剤師が患者の困りごとを把握し、血液内科医へ共有する体制づくりを支援するものだ(2025年8月28日発表)。また、患者が症状や生活への影響を整理し、医療者との対話に活用できるWebツール「CML QoL Tracker」を提供している。同ツールは、医療専門家、国際的なCML患者ネットワーク(CML Advocates Network)の代表者からなる運営委員会、いずみの会の協力により作成された。
ここから読み取れるのは、製薬企業の関与の軸足が、薬剤の提供から「患者の声を治療方針の検討につなぐ仕組み」へと広がっている点である。満足度83.5%という数字と、副作用16.2%・今後の生活2.3%・治療費2.6%という説明内容の数字の差は、診察室での対話が何を扱い、何を扱えていないかを示している。この差を埋める場として、同社は薬局薬剤師(CML-PATH)と、患者自身による記録ツール(CML QoL Tracker)という二つの経路を用意した形だ。
TFRという治療目標が現実味を帯びるほど、検査数値以外の情報、すなわち患者が日々何を我慢しているかという情報の価値は高まる。フォーラムで繰り返し語られた「可視化」「記録の共有」は、その情報をどう医療者に届けるかという実務的な課題への回答にあたる。同社は今後も医療従事者や患者団体などとの連携を通じて、患者の困りごとや希望を治療方針の検討につなげ、一人ひとりが自分らしくCMLと向き合える環境づくりを推進するとしている。