何が起きたか

ペプチドリームは2026年11月5日、同社の創薬プラットフォームであるPDPS®を活用して見出されたペプチド化合物について、MSD社によりフェーズ1試験が開始され、これに伴うマイルストーンフィーを受領したと発表した。対象は炎症性疾患を対象とした治療薬である。

今回の支払いは、2018年に締結したPDPS技術のライセンス契約に基づくもの。MSD社がPDPSの技術ライセンスを活用して進めるペプチドの臨床プログラムは、これで4つとなった。

同社が示した4プログラムの内訳は以下のとおりである。

  1. 2023年7月にフェーズ1入りしたペプチド医薬品
  2. 2024年6月にフェーズ1入りした炎症性疾患を対象とした治療薬
  3. 2026年8月にフェーズ1入りしたPETイメージング化合物
  4. 今回発表された炎症性疾患を対象とした治療薬

今年3件目のマイルストーン

MSD社との関係では、2026年10月にもPCC(peptide cytotoxic conjugate、ペプチド細胞毒性コンジュゲート)の領域で進捗があり、ペプチドリームへのマイルストーンの支払いが発生したことをリリースしている。今回の受領は、今年に入ってMSD社関連で3つ目のマイルストーン達成にあたる。ペプチドリームは、この連続的な進捗について「MSD社のペプチド創薬が加速されていることを感じます」と評している。

パイプライン全体でも動きは大きい。今年に入って新たに臨床ステージに入ったプログラムは7つにのぼり、臨床段階のプログラムは合計で20となった。このうち18プログラムはパートナーが実施しているもので、自社で進めているものは一部にとどまる。多数のプログラムを同時並行で走らせることによって、製品を上市できる可能性が高まるというのが同社の説明である。

自社創薬とパートナー提携の使い分け

ペプチドリームは、自社創薬とパートナーとの提携について、それぞれの特徴を次のように整理している。

開発主体の面では、自社創薬は試験のデザインや進め方を自社でコントロールできる一方、提携の場合はパートナーが実施するため、パートナーの都合により方針転換などが起きる可能性がゼロではない。

開発リソース(人材・コスト)の面では、自社創薬は自社で負担するのに対し、提携ではパートナーが実施するためペプチドリームの負担にはならない。

ビジネスモデルの面では、自社創薬は自社で販売まで行うか、PoC取得などによってアセット価値が高まったところで導出する形をとる。提携では、パートナーの開発が進むとマイルストーンフィーが、製品上市後はロイヤルティや販売マイルストーンフィーが支払われる。

同社は、この両者を組み合わせて実施することでビジネス上のリスクを低くすることができると考えている、としている。

業界にとっての意味

今回の発表が示すのは、2018年に結ばれた技術ライセンス契約が、8年を経て複数の臨床プログラムという形で実を結びつつあるという点である。プラットフォーム型の創薬企業にとって、契約一時金に続く収益の柱は、パートナー側の開発進捗に連動したマイルストーンフィーである。MSD社関連だけで今年3件の達成があり、臨床段階の20プログラムのうち18をパートナーが担っているという構図は、自社で臨床開発費を抱え込まずに収益機会を積み上げる設計が機能していることを意味する。

一方で、同社自身が整理しているとおり、パートナー主導のプログラムは開発方針の決定権が自社にない。臨床プログラム数の増加は、裏を返せばパートナー側の判断に左右される部分が増えることでもある。自社創薬との組み合わせによってリスクを平準化するという同社の考え方は、この構造を前提にしたものといえる。