何が報告されたか

厚生労働省保険局医療課は、中医協に「費用対効果評価制度における検証のとりまとめ」(費-1、8.9.9)を提出し、費用対効果評価専門部会で進めてきた検証の結果を報告した。

示された数字は次のとおりである。費用対効果評価が終了した49品目のうち、費用対効果評価分析が実施されたものは39品目。そのうち、公的分析が実施されず企業分析が受け入れられたものが2品目、費用対効果評価専門組織の決定に対して製造販売業者から不服申立てがあったものは20品目だった。

価格への影響については、評価が終了した49品目のうち価格調整が行われたのは38品目で、価格全体に対する価格調整額の割合は中央値-4.29%。参考として、49品目全体では中央値-3.07%、25パーセンタイル-0.46%、75パーセンタイル-7.09%、価格調整が行われた38品目では中央値-4.29%、25パーセンタイル-2.58%、75パーセンタイル-8.07%と示された。

また、価格調整後の価格を用いて改めてICERを算出した際に、ICERの区分が変化した品目は1品目のみだった。比較対照技術と比べて追加的有用性が示されなかった18品目のうち、6品目については全ての分析対象集団で追加的有用性が示されなかった。

ここに至るまでの経緯

検証の起点は、令和7年12月26日に中医協が了解した「令和8年度費用対効果評価制度改革の骨子」にある。骨子では、令和8年度の制度見直し議論の中で一定の検証を行ってきたものの、追加的な観点からの検証が求められていること、技術的な議論や検証には第三者を含む多角的な立場からの知見が必要であることが現状として整理された。

これを受けて、費用対効果評価に係る技術的な議論は厚生労働科学研究班(「医薬品・医療機器等の費用対効果評価制度における公的分析の体制、分析ガイドラインの改定及び客観的検証のための研究」、研究代表者:福田敬)で実施することとされた。構成員は医療経済3名、医療統計3名、臨床専門家3名、製造販売業者2名、公的分析2名で、このうち費用対効果評価専門組織における議論を振り返るため当該組織から1名が参画する。加えて、業界団体から選出された5名がオブザーバーとして参画する。

検証の主な論点は、個別具体のケースをもとに企業分析と公的分析の不一致の要因を含めて検討するもので、(1)追加的有用性の評価の科学的根拠、(2)ICERの不確実性への考慮、(3)比較対照技術の臨床的妥当性、の3点が挙げられていた。スケジュールは5月のキックオフから個別品目の検証を経て、9月に中医協で検証報告の議論を行い、10月以降に価格調整範囲の見直しへ進む組み立てとなっていた。

政策文書の側では、骨太方針2025(令和7年6月13日)が、客観的な検証を踏まえた費用対効果評価制度の更なる活用と、薬価制度上・診療上の活用方策の検討を掲げた。令和7年12月24日の大臣折衝事項では、令和8年中に、既存の比較対照技術と比べて追加的な有用性がなく単に費用増加となる医薬品に係る価格調整範囲の拡大を図ること、対象品目や価格調整範囲の拡大、診療ガイドラインへの反映を含めた医療現場での普及などについて令和9年度の薬価改定の中で一定の結論を出すことが示された。

自由民主党・日本維新の会の連立政権合意書(令和7年10月20日)は「医療の費用対効果分析に係る指標の確立」を社会保障改革項目に挙げ、令和8年7月7日の社会保障制度改革協議体の骨子は、対象品目や価格調整範囲の拡大などについて令和8年度末までに結論を出すとした。同骨子はさらに、費用対効果にすぐれる品目については薬価を引き上げること、追加的有用性が示されず費用が増加する品目は令和8年9月までの検証結果を踏まえた価格調整を速やかに実施すること、分析データの迅速かつ徹底的な情報公開や学会等を含む第三者による検証の仕組みを構築することを掲げている。骨太方針2026(令和8年7月21日)も、2027年度薬価改定に際して費用対効果評価制度の客観的な検証を進め、一定の結論を出すとしている。

業界にとって何が変わるか

最大の焦点は、保留されていた価格調整が動き出す点である。令和8年度制度改革の骨子は、追加的有用性が示されずICERの区分が「費用増加」となった分析対象集団について、有用性系加算部分に価格調整係数を乗じる現行方法の見直しを求めた。具体案として、比較対照技術の1日薬価を評価対象技術の1日薬価で除して得た比を、価格調整前の価格に乗じた額を調整後価格とする方法が示されている。調整後価格の下限は価格全体の85%(調整額が価格全体の15%)を基本に、引き続き議論するとされた。

通知上、この規定は令和8年4月以降に中医協総会へ費用対効果評価案が報告された品目に適用されるが、別表12の規定は別途定める通知の発出後にその定めによることとされ、当該品目は通知発出後に改めて価格調整を行う扱いとなっている。9月の検証報告の議論が終わった後に方法の詳細を定めるという段取りであり、今回の報告はその前提条件が整ったことを意味する。

調整幅の実績が価格調整実施38品目で中央値-4.29%であること、価格調整後にICER区分が変化した品目が1品目にとどまったことは、現行方式の効き方を測る基準値となる。加算部分に係数を乗じる方式から1日薬価比による方式へ移るなら、影響の受け方は品目ごとの薬価構造によって変わる。追加的有用性が示されなかった18品目、うち全分析対象集団で示されなかった6品目という内訳は、見直しが直接及ぶ範囲の目安を示すものといえる。

一方で、不服申立てが20品目に上ったことは、企業分析と公的分析の不一致という論点の重さを裏づける。骨子が分析プロセスの見直しを「引き続き」実施するとし、研究班に業界団体のオブザーバー参画まで組み込んだのは、価格調整の強化と手続の透明性確保を同時に進める設計だと読める。企業側にとっては、価格調整範囲の拡大に備えると同時に、令和9年度薬価改定に向けた議論で対象品目や診療ガイドラインへの反映がどこまで広がるかを見極める局面に入る。