2026年9月30日、中医協の費用対効果評価専門部会で厚生労働省は費用対効果評価に基づく価格調整の範囲の拡大を2026年中に実施する方向で検討することを提案し、了承された。対象は、比較対照技術に比べて健康アウトカムの改善が示されず、費用だけが増える場合。これまで価格調整は有用性系加算の部分に限られていたが、新しい方法では価格全体が対象になる。
2週間前の9月16日、製薬3団体は同じ部会で、この制度による価格調整の当面凍結を求めて業界陳述を行っていたが、受け入れられることはなかった。
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001754063.pdf
厚労省は制度について、下記のように提案していた。
“比較技術に対する健康アウトカム指標での改善が示されず、ICERの区分が費用増加となった分析対象集団に係る価格調整について、令和8年中に実施する方向で検討をすすめることとしてはどうか。価格調整の具体的な方法については、骨子で記載された方法を基本に、次回以降の本部会で検討してはどうか。”
また、現行の有用性系加算部分に価格調整係数を乗じる方法ではなく、比較対照技術より1日あたりの薬価が高い分を、価格全体から差し引く考え方をとっている。そして、調整後の価格の下限は価格全体の85%(調整額が価格全体の15%)とすることを基本に、引き続き議論するとされ、下げ幅は最大15%が想定されている。

経緯として、価格調整範囲の拡大は2025年12月24日の大臣折衝で方向性が決まり、12月26日に中医協が了解した2026年度改革の骨子では、新しい方法を例示しながらも、2026年4月以降に評価結果が報告された品目について例外的に施行を保留となっていた。2026年9月に中医協での検証報告の議論が終わった後、具体的な方法を定めて価格調整を行うという段取りになっていたため。

https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001754064.pdf
保留の条件だった技術的な検証は、厚生労働科学研究の研究班が行い、過去の中医協部会で議論されている。結論としては“より確からしい分析方法の選択によって行われており、一定の妥当性はある”とされていたが、製薬3団体の意見陳述では「技術的な課題が整理された一方、その解決策や制度への反映については十分な議論がなされていない」と評価されており、USのMFN価格政策も踏まえて今は薬価を引き下げる局面ではないとして価格調整の当面の凍結を求めていた。
GemMedの報道によれば、9月30日の部会では支払側委員は、健康アウトカムの改善に関するデータを出す責任はメーカーにあり、データが十分でないことを国民の負担にすべきではないと述べている。
さらに、既収載の医薬品を含めてより多くの品目を評価の対象とすべきだとし、最終的には比較対照技術と費用対効果が同等になるまで価格を調整することが望ましいとしている。
業界側の専門委員からは、健康アウトカムの改善に関するデータが不十分なケースと、データはそろっているが改善が示されないケースは別扱いにすべきだと指摘が出ている。臨床試験の段階でデータをそろえるには限界があり、新しい方法では薬価算定時に認められた有用性系加算を超える引き下げが起こりうるため、革新的な技術の開発や日本への導入を妨げかねないとしている。
10月以降の部会では議論の透明性やプロセスの改善、新規の重要な知見が得られた際の対応、対象品目や価格調整の範囲の拡大、診療ガイドラインへの反映を含めた医療現場での普及についての議論が進んでいく。