2026年9月28日、日本経済新聞が” 採算割れの薬の公定価格引き上げ、厚労省検討 コスト高で逆ざや増加”という記事を出している。背景として、原材料費や人件費の上昇により製薬会社から卸への販売価格が薬価以上になる”逆ざや”の品目が増えていることがある。
逆ざやには2つの段階があり、1つは製薬会社が卸に販売する価格(仕切価)が薬価以上になる状態で、もう1つは卸が薬局や医療機関に販売する価格(納入価)が薬価を上回る状態。薬局や医療機関は、国が定める公定価格である薬価で保険請求するため、仕入れ値が薬価を上回ると、その分が損失になる。
厚労省は毎年、上記のうち前者の逆ざや実態を把握するため、製薬会社の仕切価が薬価に対してどの水準にあるかを調べている。

最新の結果は、2026年7月23日の第42回医療用医薬品の流通改善に関する懇談会(流改懇)で示されており、これには日本製薬工業協会または日本ジェネリック製薬協会に加盟する97社のうち89社が回答している。
仕切価が薬価以上、つまり仕切価率(仕切価÷薬価)が100%以上で逆ざやとなっている製品 (包装単位)が全体に占める割合は、2024年3月が5.8%、2025年3月が6.4%、2026年3月が6.9%であり、厚労省はこれを右肩上がりで推移していると述べている。
一方で、件数は1,195件、1,241件、1,238件と推移しており、増加後の水準が維持されている。割合が上がり続けているのは、全体の包装単位数が20,830件、19,182件、17,905件と減っていることの影響が大きく、逆ざやの件数は2025年以降高止まりしているが包装単位が減って分母が縮んだことで割合が上がっていることになる。

なお、逆ざやの中身を見ると大半は仕切価が薬価とちょうど同じ100%となっている。2026年3月の1,238件のうち966件が100%で、薬価を上回るものは272件だった。カテゴリー別では後発医薬品が最も多く、仕切価率がちょうど100%の966件のうち789件 (約8割)を後発品が占めている。革新的新薬薬価維持制度の対象品には逆ざやはなく、それ以外の特許品と長期収載品には少数ながら逆ざやが存在していた。
製薬会社が逆ざやに設定した理由は、原材料費の高騰が約7割と大部分を占め、販売管理費(人件費や配送費)の高騰も5割弱にのぼっている。このほか、薬価の引き下げに伴う経営への影響を考慮したという回答もあった。https://www.mhlw.go.jp/content/10807000/001726746.pdf
一方で卸連は2026年8月26日の中医協薬価専門部会に、医薬品卸8社のデータを民間の調査機関が集計したものを示している。
この集計によれば、不採算品再算定で薬価を引き上げた品目でも薬価20円以上で12.4%、20円未満では26.5%が逆ざやとなっている。安定供給の確保が特に重要とされる重要供給確保医薬品でも、20円以上で4.3%、20円未満で1.9%が逆ざやとなっている。
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001742606.pdf
この資料では、逆ざやの背景にある構造をいくつかの理由で説明している。
第一に、薬価の下がり方と、コストの下がり方の差。2021年度を100とした薬価の指数は、2025年度に83.3まで下がっている一方で、薬価に対する卸の流通コストの比率は、94.7から96.2に上がっている。

第二に、値引き余地の縮小。薬価と実際の取引価格の差を示す平均乖離率は、2021年度の7.6%から、7.0%、6.0%、5.2%と縮まり、2025年度は4.8%になった。
第三に、薬価の低い品目の多さ。卸が扱う品目のうち、薬価20円未満の品目が品目数の51%を占める一方、金額では11%にすぎない。
日経記事によれば、厚労省は2027年度の改定で、採算割れの医薬品の価格を臨時に引き上げることを検討している。2027年度は診療報酬改定のない中間年で、卸連は中医協薬価専門部会で中間年改定そのものの廃止を求めていた。
国は不採算品再算定を4年続けて特例として適用してきたがそれでも逆ざや割合は上がっており、2027年度の改定で採算割れの品目の扱いがどうなるかが注目される。