2026年10月7日、中医協は、10月14日に薬価収載される新薬11成分14品目の薬価を了承した。このうち、類似薬がないため原価計算方式で算定された5品目はいずれも新規の作用機序や希少疾病の治療薬であることなどが評価されて高めの補正加算が認められている。例えば武田薬品のオーゼイフルやGSKのヒブサーゴは合計60%の加算となっている。しかし5品目とも加算係数0となり認められた加算は薬価に1円も反映されなかった。

https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001756860.pdf

今回原価計算方式で算定されたのは次の5品目で、それぞれの加算は下記の通り。
1.     武田薬品のオーゼイフル(オベポレクストン、ナルコレプシータイプ1)には、有用性加算(Ⅰ)40%、市場性加算(Ⅰ)10%、先駆加算10%の計60%
2.     GSKのヒブサーゴ(ベピロビルセン、B型肝炎ウイルス持続感染における機能的治癒)には、有用性加算(Ⅰ)50%と先駆加算10%の計60%
3.     インスメッドのブリヌスプリ(ブレンソカチブ、非嚢胞性線維症性気管支拡張症)には、有用性加算(Ⅰ)45%と小児加算5%の計50%
4.     ノバルティスのラプシド(レミブルチニブ、特発性の慢性蕁麻疹)は有用性加算(Ⅰ)35%
5.     リズムファーマのイムシブリー(セトメラノチド、後天性視床下部性肥満)には、有用性加算(Ⅱ)10%、市場性加算(Ⅰ)10%、小児加算5%、迅速導入加算5%の計30%

しかし5品目とも、資料には「加算係数0」と記され、加算前と加算後で価格が変わることはなかった。5品目はいずれも革新的新薬薬価維持制度と費用対効果評価の対象にもなっている。

10月14日収載の原価計算方式5品目:認められた加算と薬価への反映(中医協資料をもとに筆者作成)
10月14日収載の原価計算方式5品目:認められた加算と薬価への反映(中医協資料をもとに筆者作成)

今回加算係数がゼロとなったのは、製品総原価のうち薬価算定組織に開示できる部分の割合(開示度)に応じて、加算の反映度合いが変わるためとなる。加算額は価格全体×加算率×加算係数で計算され、加算係数は開示度80%以上で1.0、50%以上80%未満で0.6、50%未満で0である。元々は開示度50%未満の加算係数は0.2だったが、2022年度の薬価制度改革で原価計算方式の薬価の透明性を確保する観点から、業界の反対を押し切る形で0に引き下げられた。中医協の資料は各品目の開示度はわからないが、いずれの品目も加算係数0ということは開示度が50%未満だったことを意味する。

ちなみに、費用対効果評価による価格調整の対象は原則として有用性系加算の部分だが、原価計算方式で算定された品目のうち開示度50%未満のものは加算部分に加えて営業利益の部分も価格調整の対象になるとされている。そのため、加算が薬価に反映されていない一方で、今後の費用対効果評価の結果によっては営業利益の部分が価格調整の対象になってしまう。

今回の5品目は例外というわけではなく、2025年11月から2026年10月までの6回の収載で、原価計算方式で算定された医薬品は19製品あったが、このうち加算が薬価に反映されたのは、2025年11月12日に収載された2製品だけだった。丸石製薬のドルミカムシロップ(小児の麻酔前投薬)は加算係数1.0で、有用性加算(Ⅱ)5%と特定用途加算10%の計15%が反映された。アルフレッサ ファーマのネフィー点鼻液(アナフィラキシー反応の補助治療)は加算係数0.6で、有用性加算(Ⅱ)5%と小児加算10%の計15%のうち、6割にあたる9%が反映された。ただし、いずれも新有効成分ではなく、古い成分の新しい投与経路の薬であるため、革新的新薬とは言い難い。
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001590727.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001756860.pdf

原価計算方式で収載された医薬品19製品の加算係数(2025年11月〜2026年10月)(中医協資料をもとに筆者作成)
原価計算方式で収載された医薬品19製品の加算係数(2025年11月〜2026年10月)(中医協資料をもとに筆者作成)

つまりこの1年、新有効成分の医薬品で原価計算方式で算定された中に加算が薬価に反映された例はなかった。製薬企業としては原価を開示することは機密情報のため難しいことが多く、結局加算を取ること自体の意味が薄れている状況にある。

特にオーゼイフルやヒブサーゴは日本で先駆けて開発することで得られる加算である先駆加算の対象になっている。にも関わらず加算係数でゼロになるのであれば、企業側にとって日本市場を優先して開発することのメリットはますます薄くなってしまう。