何が示されたか

令和8年9月9日の中医協総会に、厚生労働省は「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について(その2)」を提出し、制度の円滑な実施に向けた対応案を示した。

制度の骨格は、健保法改正により、OTC医薬品と成分・投与経路が同一で、一日最大用量が異ならない医療用医薬品(約77成分)を使用する場合に、原則として薬剤費の4分の1の「別途の負担」を求めるものである。

実務面では、処方箋様式を改正して「一部保険外療養」欄を追加する。令和9年3月以降に対象医薬品を処方する場合、別途の負担の対象であれば「○」、対象外であれば「-」を記載する。処方箋様式については、当面の間は変更前の様式を使用できる経過措置を設ける。なお、OTC類似薬の一部保険外療養に該当する場合は、長期収載品の選定療養の特別の料金は求めない。

費用の計算は、対象医薬品の価格の4分の1に投薬全量を掛け、1の位を四捨五入する。資料では、薬価16.50円の錠剤(4分の1は4.13円)を1日2錠・30日分処方した場合、別途の負担は247.8円で250円、保険対象となる費用は600円、3割負担なら患者自己負担は180円、患者負担の総額は430円と例示されている。別途の負担に対する消費税の取扱いは、現在、政府内で検討中とされている。

医療現場向けには、対象医薬品の薬剤コード、医療用医薬品とOTC医薬品の効能・効果が対応しない傷病名の一覧、レセプトに記載する別途の負担を求めない理由の標準例などを国が公表し、電子カルテ・レセコンのベンダー改修に資する情報提供を行う。紙カルテを使用する医療機関向けには、①対象成分かつ効能・効果が対応するか、②患者又は療養が別途の負担を求めない要件に該当するかを順に確認できる簡易なチェックシートを厚生労働省が作成する案が示された。がん、指定難病、長期使用といった医学的判断を要する事項は、システムが自動的に最終判定するものではなく、医師が最終的に判断することが基本と整理されている。別途の負担の対象か否かを判断するのは医師であり、薬局ではない。

意見募集と関係会議の経緯

技術的検討会が令和8年8月6日に公表した「中間とりまとめ」については、8月6日から20日まで意見公募が行われ、897件の意見が寄せられた。中間とりまとめでは、別途の負担を求めない者・療養として、がん患者、指定難病患者(軽度者を含む)、国の公費負担医療の受給者、入院中(退院時を含む)の処方、処置等に伴う14日分までの処方、内服薬で50週を超える長期使用、OTC添付文書に「服用しない」と記載された妊婦・妊娠している可能性がある女性・授乳婦などが挙げられている。外用薬は長期使用にエビデンスがある場合を除き負担対象だが、湿布・皮膚保湿剤等は令和10年度末までの経過措置を講じる。

その後、中医協総会(8月26日)、社会保障審議会医療保険部会(8月27日、9月3日)、患者団体ヒアリング(8月27日に全国がん患者団体連合会と日本難病・疾病団体協議会、9月3日に日本アレルギー友の会とささえあい医療人権センターCOML)で意見聴取が行われた。窓口での混乱回避、紙カルテ使用機関への配慮、施行後の検証、判断のばらつき防止などが繰り返し求められている。低所得者への配慮については、令和8年4月22日の衆議院厚生労働委員会での議論を踏まえ、別途の負担の対象外とするのは生活保護受給者とすると整理された。

残された論点として、①「1年という単位の中で、医師が年間を通じた症状の持続と治療の継続性を確認し、対象医薬品の長期使用等が医療上必要である場合」の具体的な適用例の明確化、②アトピー性皮膚炎に対するステロイド外用薬のプロアクティブ療法の位置づけ、③指定難病患者等の簡便かつ客観的な確認方法の整備の3点が示されている。

業界にとっての意味

財政効果は、令和8年5月21日の参議院厚生労働委員会で年間約900億円と説明されている。内訳は、患者の行動変容による医療費減が約400億円、従来の保険給付と定率自己負担が別途の負担に移行する部分が約500億円で、昨年末時点の算出であり、配慮の在り方の検討や対象成分の入れ替えにより多少の変動が見込まれるとされる。保険料への影響は、一人当たり平均で年約400円、月約30円の減少と機械的に算出されている。

医療用医薬品の薬剤料の自己負担イメージ(3割負担)としては、45円が72円、360円が570円、540円が855円になる例が示された。額としては小さいが、処方箋への記載、レセプトへの理由記載、窓口での説明という手順が新たに加わる点は、医療機関・薬局・システムベンダーの実務に直接影響する。

医薬品企業にとっては、対象成分に該当するかどうかが処方の場面で明示されることになる。パブリックコメントでは、対象外の医療用医薬品への処方シフトが安定供給に影響しないかという懸念も出され、厚生労働省は処方シフトを求める制度ではない旨を周知し、施行後に実態を把握するとしている。制度の詳細は医療保険部会等での議論を経て、令和8年秋頃を目途に結論を得る予定である。