何が示されたか

厚生労働省保険局医療課は2026年9月30日の中央社会保険医療協議会・費用対効果評価専門部会(第80回)に、令和8年度費用対効果評価制度改革における価格調整のあり方を示した。対象は、既存の比較対照技術に対する追加的有用性が示されず、ICER(増分費用効果比)の区分が「費用増加」となった分析対象集団である。

現行は、有用性系加算部分に価格調整係数を乗じる方法で調整している。これに代えて示されたのは、比較対照技術の1日薬価(評価対象技術が医療機器の場合は、治療期間における1日あたりの医療機器の費用)を評価対象技術の1日薬価で除して得た比を、評価対象技術の価格調整前の価格に乗じ、その額を価格調整後の価格とする方法である。

調整後の価格の下限は、価格全体の85%(調整額が価格全体の15%)とすることを基本に、引き続き議論するとされた。

適用の時期については、令和8年4月以降に中医協総会に費用対効果評価案が報告された品目は例外的に施行を保留とし、令和8年9月に中医協での検証報告の議論が終わった後、具体的な方法の詳細を定めたうえで、改めて価格調整を実施する扱いとなる。通知上も、別表12の規定は別途定める通知の発出後は当該通知の定めによるとされ、該当品目は通知発出後に改めて価格調整を行うと明記されている。

政府方針と検証作業の経緯

今回の見直しは、一連の政府方針に沿ったものだ。「経済財政運営と改革の基本方針2025」(令和7年6月13日)は、費用対効果評価制度について客観的な検証を踏まえつつ、適切な評価手法、対象範囲や実施体制の検討と併せ、薬価制度上の活用や診療上の活用等の方策を検討するとした。自由民主党・日本維新の会の連立政権合意書(令和7年10月20日)は「医療の費用対効果分析に係る指標の確立」を社会保障改革項目に掲げ、令和8年度中に具体的な制度設計を行うとした。

令和7年12月24日の大臣折衝事項では、令和8年中に、追加的な有用性がなく単に費用増加となる医薬品に係る価格調整範囲の拡大を図るとされ、対象品目や価格調整範囲の拡大、診療ガイドラインへの反映を含む医療現場での普及などについては、令和9年度の薬価改定の中で一定の結論を出すとされている。社会保障制度改革協議体の骨子(令和8年7月7日)は、令和8年度末までに結論を出すこと、費用対効果にすぐれる品目は薬価を引き上げること、追加的有用性が示されず費用が増加する品目は令和8年9月までの検証結果を踏まえた価格調整を速やかに実施することなどを挙げた。「経済財政運営と改革の基本方針2026」(令和8年7月21日)も、客観的な検証を進めたうえで更なる見直しを検討し一定の結論を出すとしている。

令和8年度の進め方としては、4月のキックオフ以降、個別品目の検証と議論を重ね、7月にとりまとめ、9月に専門部会・中医協総会で検証報告を議論する工程が示された。検証は厚生労働科学研究班(研究代表者・福田敬)が担い、メンバーは医療経済3名、医療統計3名、臨床専門家3名、製造販売業者2名、公的分析2名などで構成される。主な論点には、企業分析と公的分析の不一致の要因を含め、追加的有用性の評価の科学的根拠などが挙げられている。

制度の歩みと今後

費用対効果評価は、2012年5月の専門部会設置に始まり、2016年4月からの試行的導入を経て、2019年4月に本格運用が始まった。その後、2022年4月に分析プロセス及び価格調整方法の在り方と分析体制、2024年6月に分析対象集団及び比較対照技術の設定や評価結果の活用、2026年6月に評価終了後の品目指定のプロセスや比較対照技術選定の明確化が見直されている。そして2026年9月に追加の検証が報告された。

対象となる品目数は限られている。市場規模が大きい、または著しく単価が高い医薬品・医療機器を指定する仕組みのもと、2019年度の制度開始以降、指定数は平均11品目、実際の分析品目数は10品目程度で推移してきた。令和8年度社会保障関係予算では、費用対効果評価の更なる活用に向けた取組として11.4億円(令和7年度は11.5億円)が計上されている。

今回示された方法は、調整の基準を加算部分から1日薬価の比という形に移すものだ。比較対照技術との1日あたり費用の関係が価格に直接反映される構造となり、政策決定の透明性や説明責任を高めるという改定の趣旨に沿う。下限を85%とする点が議論を残しており、ここが決まれば、保留されている令和8年4月以降の報告品目の調整幅も定まる。制度に係る議論は10月以降も継続し、令和9年度薬価改定に向けて一定の結論が出される予定である。