何が決まったか
ジェイファーマ株式会社(東京都港区、代表取締役社長CEO 𠮷武益広、東証グロース市場・コード番号520A)は2026年10月5日、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が実施する令和8年度「革新的医療技術研究開発推進事業(産官学共同型)グローバルタイプ(難病・希少疾病治療グローバル研究開発支援事業、以下GRiT事業)」に、同社が開発するLAT1阻害剤ナンブランラト(開発コード:JPH203)の胆道がん二次療法を対象としたグローバル第3相臨床試験「Beacon-BTC」が採択され、最大15億円の補助金支援の対象となったと発表した。
採択された研究開発課題の代表機関はジェイファーマ、研究開発期間は申請時点で2026年10月(予定)から2028年12月(予定)まで。AMED補助金の申請額は15億円で、補助率は国際共同治験に係る補助対象経費の1/2。実際の交付額は今後の交付決定等の所定の手続きを経て確定する。本公募には25課題の応募があり、そのうち8課題が採択された。
今回の申請で特徴的なのは、フィージビリティスタディ(FS、海外における患者数の調査や規制当局への事前相談など、治験の実施可能性を検討するための事前調査)を補助対象に含めず、国際共同治験のみを対象とした点である。このため同社の課題は、FS実施課題で必要となるFS終了後のステージゲート評価を経ることなく、国際共同治験に係る補助を受ける計画となっている。
ここに至るまで
ナンブランラトは、がん細胞に高発現するL型アミノ酸トランスポーター1(LAT1)を選択的に阻害する、日本発の新規作用機序を持つ低分子化合物で、同作用機序の薬剤として世界で初めて臨床開発が進められている。承認された場合はファースト・イン・クラスの新薬となる可能性がある。
開発の経緯は、2015年に複数の固形がんを対象とした第1相臨床試験を開始し、その成果から進行性胆道がんへの適応可能性を見出したことに始まる。2018年から進行性胆道がんを対象とした第2相臨床試験を実施し、PFSについてプラセボ群と比較して有意な改善と良好な安全性を確認した(Furuse et al., Clin Cancer Res. 2024; 30(18):3990-3995)。その後、2022年4月に米国食品医薬品局(FDA)からオーファンドラッグ指定を受け、2024年9月25日にがん患者を対象とする臨床試験のIND申請が受理された。2025年5月には商業製造スケールにおけるCMC(化学・製造・品質管理)がFDAの要求する品質基準を満たしていることが確認され、2025年12月にグローバル第3相臨床試験を開始している。
Beacon-BTCはすでに米国で最適用法・用量を選定するPart Aを開始しており、FDAとの協議を経た試験デザイン、治験薬および治験実施体制等の開発基盤を構築、米国における患者登録も進んでいる。同社は2026年6月16日に、初回患者登録・無作為化割付についてのリリースを公表している。今回の採択を受け、同社はPart Aを日本を含めた国際共同治験として展開する計画で、新たな実施計画は公表可能となった段階で改めて知らせるとしている。
希薄化を伴わない資金と、第三者評価という二つの意味
同社は今回の採択の意義を二点に整理している。第一に、最大15億円が株式の希薄化を伴わない資金である点。申請額どおり15億円が交付された場合、既存資金と組み合わせることで、現時点の開発計画および資金計画では、追加的な資金調達を前提とせずPart Aを完遂できる見通しだという。第二に、競争的審査を通じた第三者評価という側面である。本公募では科学的・技術的な意義及び優位性、計画の妥当性、事業性、実施体制等が審査項目とされており、同社は採択を、化合物の科学的・技術的価値に加え、計画や体制を含む開発プログラム全体が評価された結果と受け止めている。
GRiT事業は、難病・希少疾病領域における医薬品等のシーズの実用化を促進するとともに、国内企業による国際共同治験の実施や国内CROの活用を通じ、日本の臨床開発能力の強化を図ることを目的としている。対象疾患である胆道がんは予後不良の希少がんであり、特に二次療法では、特定の分子異常を有さない多くの患者に対する治療選択肢が十分とは言えない状況にある。国内発のシーズが国内第2相から米国での第3相へ進み、そこに日本が国際共同治験として接続する形は、この事業の狙いと重なる。
同社は今後、補助金の交付申請手続きを進め、交付決定後は自社の資金負担を軽減しながらグローバル開発を推進する方針。なお、本採択を踏まえた開発予算および業績予想への影響については現在精査中で、開示すべき事項が生じた場合には速やかに知らせるとしている。