タケダ薬品工業は2026年10月23日、中国のイノベント・バイオロジクスから導入した抗体薬物複合体(ADC)arcotatug tavatecan(開発コードTAK-921)の第3相試験G-HOPE-001の結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で発表した。対象はCLDN18.2陽性の進行胃がんで、2〜4種類の治療を受けた後に進行した患者。全生存期間(OS)の中央値は10.2か月で、医師が選んだ従来の治療の6.9か月を上回り、死亡のハザード比は0.57だった。試験は日本と中国で行われ、タケダは日本で承認申請を行う予定としている。
https://www.takeda.com/newsroom/newsreleases/2026/arcotatug-tavatecan-phase-3-study/
https://www.biospace.com/press-releases/2026-esmo-lba-innovent-announces-international-phase-3-study-of-arcotatug-tavatecan-cldn18-2-adc-in-gastric-cancer-met-dual-primary-endpoints-of-pfs-and-os
CLDN18.2は、胃の粘膜の細胞どうしをつなぐたんぱく質の一種で、胃がんの細胞の表面に出ていることがある。arcotatug tavatecanは、CLDN18.2に結合する抗体に、トポイソメラーゼ阻害作用を持つエキサテカン系の抗がん剤を結合させている。同じ標的薬では、アステラス製薬の抗体ゾルベツキシマブ(製品名ビロイ)が2024年3月26日に日本で承認されている。ビロイは1次治療で化学療法と併用するのに対して、arcotatug tavatecanは、すでに複数の治療を受けた患者を対象とする。
https://www.fiercebiotech.com/biotech/esmo-takedas-12b-bet-innovent-absolutely-pays-adcs-phase-3-win
https://www2.jpx.co.jp/disc/45030/140120240326559857.pdf
G-HOPE-001は、日本と中国で行われた非盲検の第3相試験で、対象はHER2陰性でCLDN18.2陽性の切除できない局所進行または転移性の胃腺がんまたは食道胃接合部腺がんで、2〜4種類の全身治療の後に進行した患者。arcotatug tavatecanは6mg/kgを3週ごとに投与し、対照は医師が選んだイリノテカン、パクリタキセル、トリフルリジン・チピラシルのいずれかとなっている。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)とOSの2つ。
1回目の中間解析(データカットオフ2026年2月13日)で、独立判定によるPFSの中央値は5.5か月対2.9か月、ハザード比0.47(95%信頼区間0.34〜0.65、p<0.0001)となり、主要評価項目を達成した。2回目の中間解析(同9月3日)では、OSの中央値が10.2か月対6.9か月、ハザード比0.57(同0.45〜0.73、p<0.0001)となっている。2回目の中間解析時点のPFSは7.1か月対3.1か月(ハザード比0.45)であった。

奏効率は37.4%対7.7%で、OncLiveによると、病勢をコントロールできた割合は83.5%対54.4%、奏効が続いた期間の中央値は9.9か月だった。
治療期間の中央値は、arcotatug tavatecan群5.0か月、対照群2.0か月で、グレード3以上の有害事象は58.3%対62.6%、治療に関連するグレード3以上の有害事象は47.4%対55.9%であった。グレード3以上で多かったのは、貧血(20.4%対13.1%)、好中球減少(17.4%対32.0%)、白血球減少(11.7%対22.5%)。下痢はすべての程度を合わせて15.2%対40.5%で、有害事象による減量は17.8%対35.1%だった。

治療に関連した死亡は、arcotatug tavatecan群で1例(原因不明の突然死)あった。Fierce Biotechによると、タケダは原因を調査中となっている。
https://www.fiercebiotech.com/biotech/esmo-takedas-12b-bet-innovent-absolutely-pays-adcs-phase-3-win
タケダは、最終結果を踏まえて日本で承認申請を行う予定としている。
この薬剤は、タケダが2025年10月21日に中国のイノベントと提携契約を結んだことで手にしている。タケダは、中華圏を除く全世界でのarcotatug tavatecanと、PD-1とIL-2を標的とする二重特異性の免疫療法薬IBI363(TAK-928)の権利を取得しており、契約一時金は12億ドル(うち1億ドルはタケダによるイノベントへの株式投資)を支払っている。
タケダは、米国と欧州での申請に向けた胃がんとすい臓がんの国際共同第3相試験と、胃がんの1次治療での試験を計画している。中国では、イノベントの承認申請が優先審査の対象となっており、イノベントはCLDN18.2を標的とするADCとして世界で初めて承認申請が受理されたとしている。
競合状況として、アストラゼネカは2026年7月27日、CLDN18.2を標的とするADC sonesitatug vedotin(Sone-Ve)の第3相試験CLARITY-Gastric01で、3次治療以降のOSと2次治療以降のOSが統計的に有意に改善したと発表している。ただし、同試験は腫瘍細胞の25%以上でCLDN18.2が発現する患者を対象としており、75%以上を基準とするG-HOPE-001とは対象が異なる。アストラゼネカは数値をまだ公表しておらず、2次治療以降の全体でのPFSは統計的に有意な差に届かなかった。同社の発表には、試験国として日本は挙がっていない。

1次治療では、ビロイと化学療法、免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブを組み合わせる試みも進んでいる。国立がん研究センターは2026年3月、ビロイ、ニボルマブ、化学療法を併用した国際共同第2相試験の結果を発表し、第3相試験LUCERNAが進行中としている。アステラスが承認時に示したデータでは、検査を受けた患者の約38%がCLDN18.2陽性だった。
https://www.astrazeneca.com/media-centre/press-releases/2026/sone-ve-improved-survival-in-gastric-cancers.html
https://www.ncc.go.jp/jp/information/researchtopics/2026/0319/index.html
https://www2.jpx.co.jp/disc/45030/140120240326559857.pdf