免疫療法を投与する時刻が肺がん治療の生存率結果につながるという内容の第Ⅲ相試験(LungTIME-C01)が2026年2月にNature Medicineへ掲載されSNSでも大きく拡散されていたが、6/24に撤回された。

https://www.fiercepharma.com/pharma/nature-retracts-provocative-pd-1-study-tied-lung-cancer-survival-treatment-timing

Nature Medicineは4か月の調査を踏まえての判断で、「特定された問題の量と性質ゆえに、結果の完全性にもはや信頼を置けない([D]ue to the amount and nature of the problems identified, the editors no longer have confidence in the integrity of the results)」とした。

この試験は中国・湖南がん病院の単施設試験で、治療歴がなくドライバー変異のない進行(ステージIIIC〜IV)非小細胞肺がん(NSCLC)210人を、抗PD-1薬(MerckのKeytrudaまたはInnoventのsintilimab)+化学療法の最初の4サイクルを15時より前に投与する群と後に投与する群へ、1対1に分けている。結果として、15時前群は15時後群に対して無増悪生存(PFS)中央値が11.3か月対5.7か月、全生存(OS)が28.0か月対16.8か月。進行・死亡リスクはそれぞれ60%、58%低く、いずれもp<0.001であり有意な差を示した。

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効果量は、チェックポイント阻害薬そのもの導入効果にも匹敵しており、点滴の時刻を変えるだけで、新薬一つ分に近い差が生まれるという知見をもたらしていた。

今回の撤回に至るまでの調査においては、データの不自然さとして下記が指摘されている。

1.     不自然な治験プロトコルの度重なる改変。ClinicalTrials.govのログには通常では考えられないレベルの設計変更が加えられており、結果の解釈可能性に対して致命的な懸念を与えていた。2024年に研究タイプを介入研究から観察研究へ変更したこと、主要評価項目と副次評価項目の変更、および被験者の組み入れ基準と除外基準のほぼ全面的な見直しなど。

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2.     文書内に存在するタイムトラベル。論文の補足資料として提示された試験プロトコルには2022年1月2日の日付が記載されていたものの、その中には2022年、2023年、2024年に発表された論文への言及が複数含まれていた。

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3.    PFS曲線の「形」。前向きの腫瘍試験では、画像評価が一定間隔で行われるため、生存曲線は評価のたびに階段状に落ちるのが普通だが、報告された曲線はあまりに滑らかになっている。著者はCOVID-19の影響で画像評価のスケジュールから外れていたと説明していたが、それは裏を返せば前向き試験の規定どおりに評価が行われていなかったということにもなる。

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4.    最初の1年間で打ち切り(censoring)がゼロ。全例が脱落なく完全に追跡されたという、現実の臨床試験ではほぼ起こらない現象。両群とも有害事象による治療中止がゼロであった。参考として、規模が約2.5倍の別の中国の第Ⅲ相試験では、治療中止に至った例が4.5%あった。

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5.    ほぼすべての患者において、治療当日に無作為化が行われていたこと。これは標準的なプロトコルから逸脱しており、バイアス混入リスクを高めて
いる。

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これらが積み重なり、撤回へとつながった。撤回通知によれば本論文の著者たちは(すべての責任著者を含め)撤回に同意しているか、あるいは『Nature』からの連絡に対して返答しなかったかのいずれかとのこと。

なお、今回撤回されたのは「この試験」であって、「投与時刻が効くという仮説」そのものではない。免疫が概日リズムで動くことには相応の基礎研究があるとされ、後ろ向きの臨床データもいくつか存在する。それを前向き研究で確かめる必要性は再度必要になっている。