何が承認されたか
ノバルティスは2026年10月7日(バーゼル)、米国食品医薬品局(FDA)が Rhapsido®(レミブルチニブ)を、H1抗ヒスタミン薬で十分にコントロールできない成人の症状型皮膚描記症(symptomatic dermographism、SD)に対する初の治療薬として承認したと発表した。レミブルチニブは、蕁麻疹(膨疹)や腫脹の主要な driver であるヒスタミンの放出に関わるBTK経路を遮断する、経口の高選択的ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬(BTKi)である。
SDは、皮膚への摩擦、ひっかき、こすれといった日常的な接触によって蕁麻疹とかゆみが誘発される疾患である。資料によれば、SDは慢性誘発性蕁麻疹(CIndU)のなかで最も多いタイプであり、H1抗ヒスタミン薬を服用していても50%超の患者が症状を残している。
また、慢性蕁麻疹をもつ成人の90%超が、慢性特発性蕁麻疹(CSU)またはSDのいずれかに該当するとされる。今回の承認により、Rhapsidoは、抗ヒスタミン薬単剤で症状が抑えられない場合のCSUとSDの双方で承認適応をもつ唯一の処方薬となった。
根拠となった第III相RemIND試験のデータ
今回のFDA承認は、第二世代H1抗ヒスタミン薬を使用しても症状が残る患者を対象とした第III相RemIND試験のSDコホートのデータに基づく。有効性はTotal Fric Scoreで測定され、第12週時点で蕁麻疹の完全奏効を達成した患者の割合は、Rhapsido群29.3%に対しプラセボ群14.0%(p=0.0229)と、Rhapsido群が有意に高かった。発表はこれを「プラセボの2倍」と表現しており、効果は早ければ第2週から認められたとしている。
安全性については、第24週までの臨床試験において、SDとCSUで一貫したプロファイルを示したとされる。発現率3%以上の主な有害事象は、鼻閉、咽頭痛、鼻漏(鼻咽頭炎)、出血、頭痛、悪心、腹痛。定期的な検査モニタリングは不要とされている。
RemIND試験では、SD以外のCIndU、すなわち寒冷蕁麻疹(ColdU)およびコリン性蕁麻疹(CholU)についてもレミブルチニブが評価された。同社は、RemIND試験の全データセットを、適切な範囲で各国の規制当局に提出する計画を示している。
これまでの経緯と、今回の位置づけ
今回の承認は、「1年あまり前」に取得したCSUでの初のFDA承認適応の上に積み上がるものだと、ノバルティス米国法人プレジデントのVictor Bultó氏は述べている。資料によれば、Rhapsidoは米国のほか、EU、英国、中国でも、H1抗ヒスタミン薬で効果不十分な成人のCSU治療薬として承認されている。
RemIND試験の治験責任医師であるGiselle Mosnaim氏(Endeavor Health、アレルギー・免疫専門医、シカゴ大学Pritzker医学大学院臨床教授)は、SDについて「慢性かつ消耗性の疾患であり、これまで治療選択肢が限られてきた」とし、H1抗ヒスタミン薬単剤では不十分な患者に対し、SDに特化した治療アプローチが初めて提供されるとコメントしている。同じく治験責任医師のLindsey Finklea氏(皮膚科医、テキサス大学サンアントニオ校非常勤教授)も、SDに特化したFDA承認薬が初めて登場したことは、臨床医のケアの考え方における重要な変化だと述べた。慢性蕁麻疹の患者コミュニティWe CUのExecutive Directorを務めるKristen Willard氏は、SDが認知され理解されることの重要性を挙げ、今回の承認を「SDコミュニティにとっての重要な前進」と位置づけている。
業界にとっての意味
今回の承認が示すのは、BTK阻害という作用機序が、単一疾患の薬にとどまらず免疫介在性疾患の横断的なプラットフォームとして展開されつつある、ということである。ノバルティス自身が、今回の承認はCSUで確立されたRhapsidoの役割の上に立ち、免疫介在性疾患全般におけるBTK阻害の可能性を浮き彫りにするものだと説明している。
実際、レミブルチニブは化膿性汗腺炎(HS)や食物アレルギー、多発性硬化症(MS)でも開発が続いている。資料によれば、同社は再発型多発性硬化症(RMS)を対象とした第III相REMODEL-1/-2試験で良好なトップラインの結果を発表しており、テリフルノミドとの比較で年間再発率の臨床的に意義のある減少と、障害進行の臨床的に意義のある遅延を示し、良好な安全性プロファイルとCSUと一貫した肝安全性シグナルの不在が報告されている。
処方現場の観点では、経口剤であること、そして定期的な検査モニタリングを要しないとされる点が、慢性疾患の長期管理において実務的な差として働く可能性がある。慢性蕁麻疹患者の90%超を占める2つの病型を一剤でカバーする承認構成は、抗ヒスタミン薬で抑えきれない患者をどこで次の一手に進めるか、という治療アルゴリズム上の整理にも影響しうる。SD以外のCIndUデータの各国当局への提出方針も含め、適応がどこまで広がるかが次の焦点となる。