何が起きたか
ステラファーマ(コード番号4888、グロース、代表取締役社長 上原幸樹)は2026年10月7日、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)用医薬品「ステボロニン®」について、再発髄膜腫を効能又は効果とする製造販売承認事項一部変更承認申請が、薬事審議会医薬品第二部会で審議されることが厚生労働省から公表されたと発表した。
対象となる販売名は「ステボロニン®点滴静注バッグ9000mg/300mL」で、予定する効能又は効果は「再発髄膜腫」である。同社は2026年3月に一変申請を行い、その後、審査対応を進めてきた。承認の可否および最終的な効能又は効果は、同部会での審議およびその後の薬事手続を経て決定される。本件による2027年3月期業績への影響は軽微と見込まれている。
申請の根拠となった医師主導治験
本申請は、大阪医科薬科大学で実施された再発高悪性度髄膜腫を対象とする医師主導治験(第Ⅱ相ランダム化比較試験)の結果に基づく。この治験は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けて実施されたものだ。
主要評価項目である無増悪生存期間は、BNCTを実施した試験治療群が14.4か月、比較対照群が1.4か月で、統計学的に有意な差が認められた。副次評価項目の奏効率は試験治療群で27.3%を示した一方、比較対照群では奏効は認められなかった。さらに試験治療群では1年生存率100%、2年生存率90.9%という結果が得られている。
ここで留意すべきは、治験の対象が「再発高悪性度髄膜腫」であったのに対し、今回の申請ではより広い患者層を対象とする「再発髄膜腫」を効能又は効果として申請している点である。この範囲をどう扱うかを含め、第二部会で審議される予定だ。
承認までの経緯と対象疾患
ステボロニン®は、2024年9月に再発髄膜腫を対象として希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を受けている。さらに2026年2月には優先審査品目として評価され、優先審査の適用対象として審査が進められてきた。2026年3月の申請から、今回の審議予定の公表に至る流れである。
髄膜腫は、脳を覆う髄膜から発生する原発性脳腫瘍で、再発髄膜腫は外科手術や放射線治療後にも再発を認める疾患だ。同社の発表によれば、本邦では承認された薬物療法がなく、治療選択肢が限られている。国内の再発髄膜腫患者数は、厚生労働省の令和5年患者調査等を基に約1,800〜6,200人と推定されており、高いアンメットメディカルニーズが存在しているとされる。
業界にとっての意味
今回の審議予定は、ステボロニン®にとって、既承認の「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」に続く新たな適応症の実現に向けた審査プロセスの一環である。承認に至れば、BNCTという治療モダリティが頭頸部領域以外にも適応を持つことになる。
同社は「適応拡大」「治療施設拡大」「海外展開」をBNCT事業の成長戦略の柱に掲げており、再発髄膜腫の開発は、このうち「適応拡大」における重要な取り組みと位置づけられている。BNCTは医薬品と中性子照射を組み合わせる治療法であるため、適応が広がることは、医薬品単体ではなく照射設備を備えた治療施設の運用とも結びつく。「適応拡大」と「治療施設拡大」が同社の戦略で並列に置かれているのは、この構造を反映したものと読める。
また、承認された薬物療法が国内に存在しない領域に、医師主導治験のデータを企業が引き継いで申請し、オーファン指定と優先審査を経て部会審議に至った点も特徴的だ。症例数の限られる希少疾患で、公的支援を受けた医師主導治験が承認申請の根拠となる道筋を、実例として示すことになる。
同社は、今後開示すべき事項が生じた場合には速やかに知らせるとしている。