何が行われたか
ジェイファーマ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:𠮷武益広、コード番号:520A)は2026年10月9日、開発中のLAT1阻害剤ナンブランラト(開発コード:JPH203)の国際共同第3相試験「Beacon-BTC」を日本で実施するため、本邦の参加候補医師を対象としたInvestigator Meetingを開催したと発表した。
会議では、Beacon-BTCの試験計画と日本での実施方針が説明され、参加候補医師との間で試験の目的や実施に向けた課題が共有された。さらに意見交換を通じて、国内での円滑な治験開始に向けた連携が確認されたという。同社は、胆道がんの診療・臨床研究に携わる医師との連携により、本邦における診療実態や治験運営に関する知見を取り入れ、試験実施体制の整備を進めるとしている。
今回の会議は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「難病・希少疾病治療グローバル研究開発支援事業(GRiT)」への採択を背景とするもので、米国で進行中のBeacon-BTCのPart Aに、参加国として日本を新たに追加するための準備の一環と位置づけられている。
今後は、参加候補医師との協議を継続するとともに、日本で必要となる規制手続き、試験実施医療機関の選定、試験開始に向けた準備を進め、患者登録の開始を目指す。AMEDの支援については、補助金の交付決定後、交付条件に従って活用する予定としている。
ここまでの経緯
ナンブランラトは、同社が新規創製したLAT1選択的阻害剤である。LAT1(L型アミノ酸トランスポーター1)は細胞内へのアミノ酸取り込みに関与するトランスポーターの一つで、多くのがん細胞で高発現していることが知られている。同社によれば、この作用機序の薬剤として世界で初めて臨床開発が進められている低分子化合物であり、承認された場合はファースト・イン・クラスの新薬となる可能性がある。
開発の歩みは、2015年に始まった複数の固形がんを対象とする第1相臨床試験にさかのぼる。その成果から進行性胆道がんへの適応可能性を見出し、2018年から同疾患を対象とした第2相臨床試験を実施。PFS(無増悪生存期間)についてプラセボ群と比較して有意な改善と、良好な安全性を確認した。この第2相試験の結果は、Furuseらによる論文としてClin Cancer Res(2024; 30(18):3990-3995)に掲載されている。
米国での規制対応も段階的に進んできた。2022年4月にFDAよりオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)指定を取得。2024年9月25日には、がん患者を対象とする臨床試験に関するIND(Investigational New Drug)申請が受理された。さらに2025年5月13日付で、CMC(化学・製造・品質管理)に関して商業製造スケールにおける品質基準への適合について、FDAから肯定的な書面回答を受領している。これらの進展を踏まえ、同社は2025年12月にグローバル第3相臨床試験を開始し、現在も実施中である。
業界にとっての意味
今回のInvestigator Meetingは、規制当局への手続きや医療機関の選定に先立つ段階の取り組みであり、それ自体が試験開始を意味するものではない。ただし、発表内容からは、すでに米国で走っている第3相試験のPart Aに日本を「後から追加する」という開発設計が読み取れる。国内第2相で得られたデータを起点としながら、第3相はグローバル試験として先行させ、そこに日本を組み込む形である。
もう一つの特徴は、公的支援の位置づけだ。AMEDのGRiT(難病・希少疾病治療グローバル研究開発支援事業)への採択が、日本の参加国追加に向けた準備の背景として明示されている。希少疾病領域で国内バイオベンチャーが国際共同試験を主導する際、資金面の裏付けをどう確保するかは実務上の論点であり、同社はその枠組みを活用する方針を示した形になる。補助金は交付決定後に交付条件に従って使う、と期日や金額に踏み込まない表現にとどめている点も、現段階の進捗を素直に反映したものといえる。
LAT1を標的とする薬剤は臨床開発の前例がなく、試験運営においても手探りの要素が残る。今回、胆道がんの診療・臨床研究に携わる医師から診療実態や治験運営の知見を集めるとしているのは、その空白を埋める作業にあたる。日本での患者登録開始に向け、規制手続きと施設選定がどう進むかが次の確認点となる。