何が発表されたか
株式会社PRISM BioLab(本社:神奈川県藤沢市)は2026年10月9日、同社とエーザイ株式会社(本社:東京都文京区)が共同創出したE7386について、エーザイが実施した第Ⅰb/Ⅱ相臨床試験の結果に関する学術論文が、The Lancetグループの査読付きオープンアクセス医学雑誌「eClinicalMedicine」に掲載され、公開されたと発表した。
掲載されたのは、プラチナ製剤ベースの化学療法および抗PD-(L)1免疫療法後に病勢進行した進行子宮内膜がん患者を対象に、E7386とレンバチニブ(製品名「レンビマ®」)の併用療法を評価した第Ⅰb/Ⅱ相臨床試験(102試験、NCT04008797)の用量拡大コホートの結果である。論文タイトルは「E7386 plus lenvatinib in patients with advanced endometrial cancer that progressed on platinum-based chemotherapy and an anti-PD-(L)1 immunotherapy: A single-arm, open-label, global phase 1b/2 dose-expansion cohort」。掲載誌情報はeClinicalMedicine. 2026;100:104206、DOIは10.1016/j.eclinm.2026.104206。
数字は以下のとおりである。登録患者30例を対象とした解析において、本併用療法は管理可能な安全性プロファイルを示し、Grade 4またはGrade 5の治療関連有害事象は認められなかった。11例で奏効が確認され、客観的奏効率(ORR)は36.7%。奏効例には、過去にレンバチニブによる治療を受けた患者も含まれていた。レンバチニブ未治療患者のORRは57.1%だった。論文の結論では、化学療法および免疫療法後に再発した多剤治療歴を有する進行子宮内膜がん患者において、管理可能な安全性プロファイルと有望な抗腫瘍活性を示したとされている。現在、102試験の用量最適化パートが進行中である。
これまでの経緯
E7386は、PRISM BioLabとエーザイが創製した経口投与可能なCBP/β-カテニン相互作用阻害剤である。がん細胞の悪性化に関与するCBP/β-カテニンシグナルの下流で、β-カテニンとCBPのタンパク相互作用を阻害する経口低分子薬と説明されている。2021年10月にPOC(Proof of Concept)を達成し、現在は単剤での固形がんを対象とした第Ⅰ相臨床試験のほか、他の抗がん剤との併用による固形がんを対象とした後期第Ⅰb相/第Ⅱ相臨床試験が、エーザイにより実施されている。
併用相手のレンバチニブは、VEGFR1〜3、FGFR1〜4、PDGFRα、KIT、RETなど、腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼに対する選択的阻害活性を持つ、エーザイ創製の経口マルチキナーゼ阻害剤である。非臨床研究モデルでは、がん微小環境における免疫抑制因子として知られる腫瘍関連マクロファージの割合を減少させ、活性化細胞傷害性T細胞の割合を増加させることで、抗PD-1モノクローナル抗体併用時に、それぞれの単剤療法を上回る抗腫瘍活性を示したとされる。
論文の背景部分では、進行子宮内膜がん(aEC)において、化学療法と免疫療法後に再発した患者に対する新たな治療法が求められていること、レンバチニブはプラチナ製剤ベースの化学療法後のaEC患者に抗腫瘍効果を示し、既治療のaECに対してペムブロリズマブとの併用療法として承認されていることが記されている。102試験は、固形がん患者を対象にE7386とレンバチニブの併用療法を評価する非盲検第Ⅰb/Ⅱ相試験である。
意味するところ
今回公開されたのは用量拡大コホートの結果であり、単群・非盲検のデザインである。したがって比較対照に基づく有効性の証明ではないが、資料が明示しているのは二点だ。第一に、Grade 4・5の治療関連有害事象が出ていないという安全性の所見。第二に、過去にレンバチニブ治療歴のある患者にも奏効例が含まれ、レンバチニブ未治療患者では57.1%というORRが得られた点である。既治療のaECではレンバチニブとペムブロリズマブの併用が承認されているため、レンバチニブ既治療例での奏効の有無は、後続ラインの選択肢を考えるうえで押さえておくべき情報になる。
開発上の位置づけとしては、本コホートの結果が「現在進行中の用量最適化パートを進める上で有用な知見」と位置づけられている点が重要だ。次の焦点は用量最適化パートの結果ということになる。
PRISM BioLabは、独自のα-ヘリックス・βターン模倣技術を活用し、低分子化合物によるタンパク質間相互作用(PPI)の制御による創薬を目指す企業で、ペプチド模倣技術『PepMetics®』を構築している。従来、低分子では狙いにくいとされてきたPPIを標的とする創薬アプローチが、国際共同の第Ⅰb/Ⅱ相試験の査読付き論文として公表されたこと自体が、同社の技術基盤にとって一つの到達点といえる。同社は2006年11月創業、本社は湘南アイパーク、代表取締役は竹原大氏。