何が発表されたか
アッヴィは2026年10月11日、米国テネシー州ナッシュビルで10月9日から14日まで開かれる米国消化器病学会(ACG)2026年次学術集会において、炎症性腸疾患(IBD)ポートフォリオから22件の学術抄録を発表すると公表した。内容は、SKYRIZI(リサンキズマブ)皮下注の第3相AFFIRM試験の新規データ、長期の非盲検継続投与(OLE)解析、そしてRINVOQ(ウパダシチニブ)のリアルワールドエビデンスの三つに大きく分かれる。
同社のグローバルメディカルアフェアーズ(免疫領域)バイスプレジデントであるRyan DeMasi氏は、リリースの中で「IBDとともに生きる人々は、疾患の負担を意味のある形で減らす治療を求めている」と述べ、「長期にわたって効果を発揮し、最も複雑な疾患要因に対応する治療」を提供する姿勢を強調している。
SKYRIZI:AFFIRMと長期継続投与の結果
第3相AFFIRM試験は、中等症から重症の活動期クローン病(CD)患者を対象に、リサンキズマブの皮下投与による導入・維持療法を検討したもの。発表によれば、12週時点で臨床的寛解および内視鏡的奏効の割合がプラセボに対して有意に高く、臨床的奏効が得られた患者では24週時点でもすべてのエンドポイントで数値上プラセボを上回った。この演題は10月13日の口頭発表37として予定されている。
同じく10月13日には、中等症から重症の活動期CDにおける導入療法として、リサンキズマブ皮下注とグセルクマブを比較したアンカー付きマッチング調整間接比較(MAIC)のポスター(P5748)も示される。こちらでは、導入期の内視鏡的奏効率がグセルクマブより有意に高かったとされる。
長期データとしては、第3相FORTIFY非盲検継続投与試験の144週解析(P1061)が、回腸型・結腸型・回腸結腸型のいずれのCDでも臨床的・内視鏡的アウトカムが維持または改善したと報告する。また、瘻孔形成性CDに関する最長5年の事後解析(P1058)では、74.5%の患者が排膿を伴う瘻孔のない状態を達成した。抗TNF製剤で効果不十分だった患者を対象とするSEQUENCE試験の148週解析(P1060)では、回腸病変を有する患者の内視鏡的アウトカムが経時的に改善し、148週には他の病変部位と同等の水準になったとしている。潰瘍性大腸炎(UC)では、COMMAND継続投与試験の3年解析(P5727)が、先行する高度治療(アドバンストセラピー)の使用歴の有無や数にかかわらず臨床的・内視鏡的改善が持続したと報告する。
RINVOQ:実臨床での難治例データ
RINVOQについては、米国の二つの公的医療システムから得られた実臨床データが示される。退役軍人省(VA)医療システムのデータ(P3482)では、治療を継続した患者のうち、瘻孔形成性CDで93.3%、狭窄性CDで76.9%が臨床的寛解およびステロイドフリー寛解を達成した。国防総省(DoD)医療システムのデータ(口頭発表39)では、回腸単独病変のCD患者において、6カ月時点で57%が臨床的寛解、58%が内視鏡的奏効、53.6%が内視鏡的寛解を達成している。
承認状況と位置づけ
SKYRIZIはIL-23のp19サブユニットに選択的に結合してIL-23を阻害する薬剤で、米FDAでは中等症から重症の活動期UC、尋常性乾癬、乾癬性関節炎、クローン病の治療薬として承認されている。アッヴィは2026年4月27日、中等症から重症の活動期CDの成人患者に対する皮下投与による導入療法について、FDAへの承認申請を行ったと発表している。今回のAFFIRM結果は、その申請の根拠となる領域のデータが学会の場で示されたことを意味する。
今回の発表構成は、導入期の有効性(AFFIRM、MAIC)、長期の持続性(FORTIFY、SEQUENCE、COMMAND)、実臨床での難治例への使用(VA、DoD)という三層になっている。瘻孔形成性・狭窄性・回腸単独といった、従来治療が届きにくいとされてきた病型ごとの数値が並ぶ点は、IBD治療の議論が「効くかどうか」から「どの病型に、どれだけの期間効き続けるか」へ移りつつあることを示している。なお、SKYRIZIの米国添付文書では、重篤なアレルギー反応、感染症リスク、CD・UC治療中の肝機能関連の問題が安全性情報として記載されている。