何が発表されたか
Johnson & Johnson(日本における医療用医薬品事業の法人名:ヤンセンファーマ株式会社、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:クリス・リーガー)は、国際共同第III相MajesTEC-3試験(NCT05083169)の日本人サブグループ解析の結果を発表した。テクベイリ®皮下注(一般名:テクリスタマブ)とダラキューロ®配合皮下注(一般名:ダラツムマブ・ボルヒアルロニダーゼ アルファ)の併用療法を受けた日本人患者の推定30カ月無増悪生存(PFS)率は81.8%で、全例で奏効および完全奏効以上(≥CR)が認められた。本結果は、2026年10月9日から11日まで京都で開催された第88回日本血液学会学術集会(JSH 2026)で発表された。
日本人サブグループの数字
日本人サブグループには24例が登録され、テクベイリとダラキューロの併用療法群(n=11)または対照群(n=13)に1:1で無作為に割り付けられた。登録条件は、プロテアソーム阻害薬およびレナリドミドを含む1〜3ラインの前治療歴を有すること、前治療が1ラインの場合はレナリドミド難治性であることとされた。主要評価項目は独立評価委員会判定によるPFSである。
追跡期間中央値31.9カ月時点で、日本人サブグループのPFS中央値は併用療法群で未到達、対照群で34.5カ月だった(ハザード比[HR]0.38、95%信頼区間[CI]0.07〜1.95)。推定30カ月PFS率は併用療法群81.8%、対照群61.5%。全生存期間(OS)も併用療法群で良好な傾向を示し(HR 0.40、95% CI 0.04〜3.82)、推定30カ月OS率は併用療法群90.9%、対照群76.9%だった。
奏効評価では、併用療法群の全奏効率(ORR)は100%、完全奏効以上(≥CR)も100%で、全例が完全奏効以上に到達した。対照群はORR 84.6%、≥CR率46.2%だった。日本人サブグループで認められた有効性および安全性の所見は、試験全体のプロファイルと一致しているとされる。
試験全体の位置づけと、これまでの経緯
MajesTEC-3試験は、1〜3つの前治療歴を有する再発または難治性多発性骨髄腫の患者を対象に、テクベイリとダラキューロの併用療法群(291例)と、治験医師の判断によるDPd(ダラツムマブ皮下注製剤、デキサメタゾン、ポマリドミド)またはDVd(同、ボルテゾミブ)療法群(296例)を比較した第III相無作為化試験である。副次評価項目には、完全奏効以上、全奏効率、MRD陰性(次世代シーケンシングによる感度閾値10⁻⁵)、全生存期間、症状悪化までの期間(MySIm-Q)、安全性が含まれる。
試験全体では、約3年の追跡時点で併用療法群は標準治療群と比較して疾患進行または死亡リスクを83%低減した(HR 0.17、95% CI 0.12-0.23、P<0.0001)。6カ月時点で無増悪生存を維持していた患者の91%が、3年時点でも無増悪生存を維持していた。推定36カ月PFS率は83.4%対29.7%(HR 0.17)、推定36カ月OS率は83.3%対65.0%(HR 0.46)。副次評価項目でも、全奏効率89.0%対75.3%、完全奏効以上81.8%対32.1%、MRD陰性率58.4%対17.1%と、対照群を上回る成績が示された。
国内の承認経緯を整理すると、テクベイリは2024年12月に再発または難治性の多発性骨髄腫(標準的な治療が困難な場合に限る)の治療薬として承認。2026年6月にはタービー®との併用療法について髄外性形質細胞腫(EMD)を有する再発または難治性多発性骨髄腫を対象に一部変更承認を取得し、2026年9月にダラキューロ配合皮下注との併用療法について、再発または難治性の多発性骨髄腫の治療法として製造販売承認事項一部変更承認を取得した。ダラキューロは日本では2021年3月に承認、同年5月に発売されている。
早期ラインでの選択肢という論点
資料によれば、多発性骨髄腫では初回治療後2年以内に約53%の患者が早期再発を経験すると報告されており、新たな治療選択肢へのニーズが残る。国内の2021年の新規診断者数は約7,800人、2023年の死亡者数は約4,300人とされる。
熊本大学大学院 生命科学研究部 血液・膠原病・感染症内科学講座 助教の河野和氏は「多発性骨髄腫は再発を繰り返す疾患であり、再発のたびに寛解期間は短くなり、利用可能な治療選択肢も限られていきます」とした上で、今回の日本人データは試験全体と一致しており「二次治療という比較的早期の段階からの治療選択を検討する上で重要な知見を提供する」と述べている。クリス・リーガー社長は「テクベイリとダラキューロの併用療法は、多発性骨髄腫の治療において再び新たな標準治療を確立する可能性を有しています」とコメントした。
今回の日本人サブグループは24例と小規模で、PFS・OSのハザード比の信頼区間はいずれも1をまたいでいる。それでも、2026年9月に併用療法が国内承認された直後に、日本人集団で試験全体と整合する数値が示された意義は小さくない。承認済みレジメンの国内での使われ方——とりわけ、どのラインから用いるか——を議論する際の材料が一つ増えたことになる。資料では、ダラキューロ併用時におけるステロイド前投与負担の軽減が可能である点も、有効性・安全性プロファイルとあわせて示されている。