何が発表されたか
アッヴィは2026年10月13日(米イリノイ州ノースシカゴ)、中等症から重症の活動期クローン病(CD)の成人を対象に、スキリージ(リサンキズマブ)の皮下注射(SC)による導入療法を評価した第3相AFFIRM試験の新たなデータを公表した。発表は米国消化器病学会(ACG)2026年年次学術集会で行われた。
今回示されたのは、内視鏡的寛解と潰瘍消失(ulcer-free endoscopy)という、より厳格な内視鏡指標の成績である。スキリージ投与群では35.8%が内視鏡的寛解を達成した。また、試験開始時に潰瘍を有していた患者のうち36.6%が、導入・維持療法を経て潰瘍の完全消失に至った。
先行治療歴別に見ると、進行治療(advanced therapy)未治療の患者で数値が高く、内視鏡的寛解45.1%、潰瘍消失49.0%と、評価されたサブグループの中で最も高い水準だった。
発表された主な数値は次のとおり。
12週時
- 内視鏡的寛解:全体 プラセボ10.2% / スキリージSC 27.7%、AT未治療 9.1% / 44.8%、AT不応 10.8% / 18.5%
- 潰瘍消失:全体 10.2% / 26.2%、AT未治療 9.1% / 44.8%、AT不応 10.8% / 16.1%
24週時
- 内視鏡的寛解:全体 9.1% / 35.8%、AT未治療 6.7% / 45.1%、AT不応 10.3% / 30.1%
- 潰瘍消失:全体 9.1% / 36.6%、AT未治療 6.7% / 49.0%、AT不応 10.3% / 28.9%
内視鏡的寛解は、中央判定によるSES-CD(Simple Endoscopic Score for Crohn's Disease)4以下かつベースラインから2点以上の低下、いずれの個別項目のサブスコアも1を超えないこと、と定義された。潰瘍消失は、ベースラインでSES-CDの潰瘍面積サブスコアが1以上だった患者において、同サブスコアが0になることと定義されている。
安全性については、24週までの所見はリサンキズマブの既知の安全性プロファイルと一致し、導入期・維持期のいずれにおいても治療下で発現した有害事象の発現率はリサンキズマブ群のほうがプラセボ群より低かった。特に注目すべき有害事象の発現率は低いままで、新たな安全性シグナルは認められなかった。
背景:すでに主要評価項目は達成済み
今回のデータは、先に報告された12週時点の結果の上に積み重なるものだ。AFFIRMではすでに、臨床的寛解と内視鏡的奏効という共同主要評価項目において、スキリージがプラセボに対する優越性を示していた。今回は、それをより厳しい内視鏡指標で掘り下げた位置づけになる。
AFFIRMは、中等症から重症の活動期CDの成人を対象に、リサンキズマブ皮下注の導入療法としての有効性と安全性を評価する、国際共同・無作為化・プラセボ対照・二重盲検の第3相試験である(NCT06063967)。共同主要評価項目はCDAIによる臨床的寛解などの割合だった。
組み入れられたのは、治療が難しい長期罹患の患者層だ。65%は過去に進行治療に対して効果不十分の経験があり、平均罹病期間は7年を超え、試験開始時点でかなりの腸管炎症を有していた。
スキリージはIL-23のp19サブユニットに選択的に結合してIL-23を阻害する薬剤で、米食品医薬品局(FDA)から中等症から重症の活動期潰瘍性大腸炎、尋常性乾癬、乾癬性関節炎、クローン病の治療薬として承認されている。
今回のCDにおける皮下注導入療法については、FDAと欧州医薬品庁(EMA)で現在審査中であり、今回のデータはFDAへの承認申請を支持するものと位置づけられている。
意味:導入期から「患者自己投与」で完結する選択肢
今回の発表の要点は、数値そのものよりも「どの段階で達成されたか」にある。アッヴィのグローバル免疫学臨床開発責任者であるKori Wallace氏は、内視鏡的アウトカムがスキリージで高かっただけでなく、それが導入療法の後に達成された点が重要だとし、治療journeyの早い段階で疾患コントロールを得られる可能性を示すと述べている。
クローン病の導入療法は、静脈内投与が用いられる場面がある。皮下注による導入が規制当局に認められれば、導入から維持まで患者自身が投与できるレジメンとして完結しうる。資料も、厳格な内視鏡指標に対して皮下注スキリージを評価したことが、「完全に患者が投与するレジメン」で炎症のより深いコントロールを目指せる可能性を示すとしている。
もう一つの論点は、治療歴による差だ。AT未治療群では12週時点ですでに内視鏡的寛解44.8%に達しているのに対し、AT不応群は12週18.5%から24週30.1%へと時間をかけて上昇している。治験責任医師でノースカロライナ大学チャペルヒル校消化器・肝臓病学部門のMillie D. Long氏は、初めて進行治療を始める患者から複数の治療を経てきた患者まで、臨床現場では異なる段階で治療判断を行っていると指摘し、両群で内視鏡的改善が観察されたことが、治療journey全体にわたる意思決定の材料になると述べている。
クローン病は進行性で、時間とともに悪化し、生命を脅かす合併症や手術に至る可能性がある。症状が予測困難なため、身体面だけでなく精神的・経済的にも大きな負担となる疾患だ。導入期から内視鏡レベルでの改善をどこまで取りにいけるかという問いに対し、AFFIRMは一つの定量的な回答を提示したことになる。審査の行方が次の焦点となる。