ラクオリア創薬は2026年10月13日、ライセンス先のHK inno.N社とサブライセンス先のSebela Pharmaceuticals社が、米国で開催された「American College of Gastroenterology 2026 Annual Scientific Meeting(ACG 2026)」において、胃酸分泌抑制剤tegoprazanの非びらん性胃食道逆流症(NERD)を対象とした第Ⅲ相臨床試験(TRIUMpH-NERD試験)の詳細な解析結果等を発表したことを公表した。

プラセボ群17.3%に対し26.2%・30.1%

TRIUMpH-NERD試験(NCT05587322)は、症候性NERDの成人患者783例を対象とした無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設共同試験である。被験者にはtegoprazan 50 mg、tegoprazan 100 mgまたはプラセボが1日1回4週間投与され、その後20週間の継続投与期間が設けられた。主要評価項目は投与4週までの24時間胸やけのない日の割合、主な副次評価項目は投与4週までの夜間胸やけのない日の割合で、逆流症状はあらかじめ規定された探索的評価項目として評価された。

投与4週までの24時間胸やけのない日の割合(最小二乗平均値)は、プラセボ群17.3%に対し、50 mg群26.2%(p=0.0006)、100 mg群30.1%(p<0.0001)で、プラセボ群と比較してそれぞれ51%、74%の相対的改善に相当する。投与28日時点では、プラセボ群26.7%に対し50 mg群38.9%、100 mg群45.6%だった。夜間胸やけのない日の割合は、プラセボ群27.0%に対し50 mg群36.1%(p=0.0017)、100 mg群39.9%(p<0.0001)となった。胸やけおよび逆流症状の両方がない日の割合は、投与4週までにプラセボ群に対しそれぞれ60%、76%の相対的改善が認められた。効果は投与初日から群間差として確認され、20週間の非盲検継続投与期間でも24時間胸やけのない日の割合は50 mg群で平均48%、100 mg群で平均50%を示した。

TRIUMpHプログラム全体では、治療下で発現した有害事象(TEAE)の発現率は個々の事象ごとに概ね3%程度で多くは軽度かつ一過性、重篤な有害事象の発現率は概ね2%程度で投与群間に同程度だった。血清ガストリン値の平均は試験期間を通じて正常範囲(0〜180pg/mL)内に維持された。

Lyon Consensus 2.0による事後解析は学会賞を受賞

ACG 2026では、びらん性胃食道逆流症(EE)を対象としたTRIUMpH-EE試験(NCT05587309)の事後解析も発表された。Lyon Consensus 2.0に基づきLAグレードB〜Dを「GERD確定例」、LAグレードAを「GERD非確定例」と再分類したもので、GERD確定例(415例)において、tegoprazan 100 mg群はlansoprazole群(399例)に対し、投与2週および8週のEE治癒率、投与24週の治癒維持率のすべてで統計学的に有意な優越性を示した。m-ITT集団(1,245例)でのEE治癒率は2週時点で75.4%対60.7%(p<0.0001)、8週時点累積で83.4%対72.7%(p=0.0005)。50 mg群も24週時点の治癒維持率で優越性を示した。一方、GERD非確定例では有意差は認められなかった。この演題はACG Presidential Awardを受賞している。

2010年の導出から、2027年1月の米国承認見込みへ

tegoprazanはラクオリア創薬が創出したカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)である。同社は2010年9月にCJ HealthCare(現HK inno.N)と東アジアを対象としたサブライセンス権付き独占的ライセンス契約を締結し、2019年11月に北米・欧州へ提携を拡大。2021年12月にHK inno.NがSebela傘下のBraintree社と米国・カナダのライセンス契約を結んだ。2025年4月にEE試験の治癒フェーズとNERD試験の主要・副次評価項目達成が、2025年8月にEE治癒後の維持療法の良好な結果が発表され、2026年1月9日にBraintree社がFDAに承認申請を提出、承認は2027年1月に見込まれている。

韓国では2019年に「K-CAB®」として発売され、2026年4月に国内売上(院外処方実績)が累積で1兆ウォン(約1,100億円)を超え、胃酸分泌抑制剤市場でシェア第1位を維持している。開発・製造・販売等の事業活動は日本を含む57カ国で行われ、販売国は20カ国に達する。

意味合い:PPIで満たされない層をどう取るか

今回の発表は、米国の規制当局審査が進む局面で、NERDという症状ベースの病型とEEという内視鏡所見ベースの病型の双方にエビデンスを積み増した点に意味がある。とりわけLyon Consensus 2.0による層別解析は、客観的に診断されたGERD患者でPPI比の優越性が示され、非確定例では差がつかなかったという構図を示しており、対象患者の絞り込みと臨床現場での位置づけに関わる論点を提示した。

市場環境について、ラクオリア創薬は世界の消化性潰瘍治療剤の市場規模を約2兆円、うち米国がおよそ2割と推測し、北米ではPPIが主に用いられる一方、効果が得られない患者が約40%を占めると指摘している(Sebela社資料では35〜54%)。同社は本件による一時金はないとしつつ、HK inno.Nが提携先から受け取る収益の一部を受け取る権利を保有しており、米国での事業展開の進捗が中長期的な価値向上に資するとしている。承認が見込みどおりであれば、収益の実際の立ち上がりは2027年以降の論点となる。