何が決まったか
ジェイファーマ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:𠮷武益広、コード番号:520A)は、2026年10月14日開催の取締役会において、開発中のLAT1阻害剤ナンブランラト(開発コード:JPH203)の国際共同第3相試験「Beacon-BTC」のPart Aの参加国として、日本および韓国を追加する方針を決定した。
決定の前提となるのは、本試験が国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「革新的医療技術研究開発推進事業(産官学共同型)グローバルタイプ(難病・希少疾病治療グローバル研究開発支援事業)」に採択され、最大15億円の補助金支援の対象となったことである。同社の発表によれば、実際の補助金交付額は、今後の交付決定等の所定の手続きを経て確定する。同社は現在、補助金の交付申請手続きを進めている段階にある。
日本・韓国における具体的な実施計画は、今後の各国規制当局との相談および必要な規制手続きを踏まえて具体化するとしている。各国における試験実施の可否、実施時期、具体的な試験計画も、規制当局との相談結果と必要な規制手続きを踏まえて判断する。
Beacon-BTCの構成と現在地
Beacon-BTCは、ナンブランラトの最適な用法・用量を選択するPart Aと、選択した用法・用量による有効性および安全性を検証するPart Bの二部構成をとる。Part Aでは約120例を対象に、有効性、安全性、薬物動態などを総合的に評価し、その結果に基づいてPart Bで使用する用法・用量を選択する。
現在、同社は米国でPart Aを実施しており、治験実施施設の立ち上げおよび患者登録を進めている。立ち上げは計画通りに進捗しているとしている。今回の方針決定を受け、日本・韓国でのPart A実施に向けて、規制当局との相談や必要な手続き等の準備を進める。
日韓での準備はすでに着手されている。同社は実施可能性を検討するため候補医療機関との協議を進め、これまでに両国の参加候補医師との面談を実施した。発表資料によれば、これらの面談は各国の診療実態や試験実施上の課題を把握するための事前検討として行われたもので、韓国での参加候補医師とのミーティングは2026年10月12日に開かれている。また日本展開に向けたInvestigator Meetingは2026年10月9日に開催され、AMEDの事業への採択は2026年10月5日に公表されている。
ここに至るまでの経緯
ナンブランラトは、同社が新規創製したLAT1選択的阻害剤で、同作用機序の薬剤として世界で初めて臨床開発が進められている低分子化合物である。LAT1は細胞内へのアミノ酸取り込みに関与するトランスポーターの一つで、多くのがん細胞で高発現していることが知られている。医薬品として承認された場合、ファースト・イン・クラスの新薬となる可能性がある、と同社は説明している。
開発の歩みは、2015年に開始した複数の固形がんを対象とした第1相臨床試験にさかのぼる。その成果を踏まえて進行性胆道がんへの適応可能性を見出し、2018年から第2相臨床試験を実施。無増悪生存期間(PFS)についてプラセボ群と比較して統計学的に有意な改善が認められ、安全性も評価された。この第2相試験の結果は、Furuse らによってClin Cancer Res(2024; 30(18):3990-3995)に掲載されている。
米国では、2022年4月にFDAよりオーファンドラッグ指定を受け、2024年9月25日にはがん患者を対象とする臨床試験に関するIND申請が受理された。さらに2025年5月13日付で、CMC(化学・製造・品質管理)に関し、商業製造スケールにおける品質基準への適合についてFDAより肯定的な書面回答を受領している。これらの進展を踏まえ、同社は2025年12月にグローバル第3相臨床試験を開始した。
この決定が持つ意味
同社は今回の日韓展開の狙いとして、①国・地域による患者背景の違いを踏まえた臨床データの蓄積、②Part B以降の開発を見据えた実施基盤の整備、の二点を挙げている。加えて、日本・韓国の候補医療機関や胆道がん領域の専門医との連携を深め、各国における診療実態や治験運営に関する知見を開発に取り入れる方針も示した。Part Bの各国での具体的な実施計画は、Part Aの結果および規制当局との相談等を踏まえて検討するとしている。
資金面での位置づけも、発表資料に明記されている。同社は補助金の交付決定後、交付決定の内容および補助条件に従い、Part Aの補助対象経費に本支援を活用する予定で、自己資金による開発費用の負担軽減を図る。さらに、補助金の受領自体は新株発行を伴わないため、既存株主の持分の希薄化を伴わずに開発資金を補完できる点でも意義があるとしている。公的支援を、試験の地理的拡大と資本政策の双方に結びつけた設計といえる。
なお、本採択ならびに日本・韓国への展開方針を踏まえた開発予算および業績予想への影響については、現在精査中としており、開示すべき事項が生じた場合には速やかに知らせるとしている。日韓でのPart A実施が現実に動き出すかどうかは、今後の規制当局との相談と手続きの結果にかかっている。