何が発表されたか

米食品医薬品局(FDA)は10月14日、希少疾病を対象とする医薬品・生物学的製剤の開発を「再構想(reimagine)」するための取り組み、Rare Disease Framework Initiative を立ち上げたと発表した。FDAは米保健福祉省(HHS)内の一部局である。

同時に公表されたホワイトペーパーによれば、このイニシアチブは、希少疾病の医薬品開発の実態を反映した「最適化され、目的に適合した(fit-for-purpose)」枠組みを構築するものとされる。具体的には、個々の疾患の微妙な差異、患者のニーズ、製品の種類、そして小規模な患者集団において現実的に生成できるエビデンスは何か——これらを考慮に入れる。

意見聴取の場として、FDAは10月28日、ホワイトオーク・キャンパスで会合を開く。対象は患者および疾患アドボカシー団体、産業界、その他の関係者で、進行は Reagan-Udall Foundation for the FDA が担当する。

イニシアチブを主導するのはFDAの Rare Disease Innovation Hub で、長官室(Office of the Commissioner)、生物製剤評価研究センター(CBER)、医薬品評価研究センター(CDER)と連携する。

枠組みづくりで掲げた6つのコミットメント

FDAは発表のなかで、枠組みの策定にあたって次の6点に取り組むとしている。

  • 個別化されたガイダンスと透明性のあるコミュニケーションを通じ、規制上の意思決定における明確性・一貫性・予見可能性を高めること
  • 患者の声を、開発・審査プロセスの早期段階と、明確に定義されたマイルストーンの双方に組み込むこと
  • 規制審査のカスタマイズを支えるため、外部の専門知見をさらに活用すること
  • 希少疾病の医薬品開発・審査に関する共有リソース、充実した研修、組織的知見を構築すること
  • リスクベースのアプローチを適用すること。とくに CMC(化学・製造・品質管理)審査と承認前査察において
  • 最先端の科学、新規の手法、革新的な統計的アプローチの活用を後押しすること

背景にある「5%」という数字

FDAは、希少疾病領域の医薬品・生物学的製剤の開発を支えるため、これまでも規制上の柔軟性を用い、的を絞ったプログラムを整備してきたと説明する。そうした取り組みは患者と家族にとって意味のある前進をもたらした、との自己評価も示されている。

それでもなお、FDAの承認を受けた治療法が存在する希少疾患は全体の5%程度にとどまる。FDAは、安全で有効な希少疾病治療薬の開発をもっと加速させる必要があるという点で、患者、医薬品開発企業、医療提供者と認識を共有しているとした。

HHS長官のロバート・F・ケネディ・ジュニア氏は「希少疾病を抱える米国人は、あらゆる疾患を同一に扱う規制システムに耐えられない」と述べ、小規模な患者集団の現実に規制要件を合わせていく方針を示した。FDA長官代行のカイル・ディアマンタス氏は、希少疾病の患者と家族には承認された治療選択肢がほとんど、あるいはまったくなく、不確実性の負担が生活のあらゆる側面に及ぶと指摘。FDAの厳格な基準を維持しながら、より一貫性があり、予見可能で、革新的なアプローチを構築するとした。

Rare Disease Innovation Hub ディレクターのエイミー・コムストック・リック氏は、希少疾病の患者と家族には、FDAの厳格な基準を維持しつつ各疾患の固有性に対応する規制プロセスが必要だと述べ、新たな枠組みはスポンサーにとっても患者にとっても一貫性と予見可能性を高めるとしている。

業界にとって何が変わりうるか

今回の発表時点で確定しているのは、枠組みを「これから作る」という方針と、そのための意見聴取プロセスである。10月28日の公開会合のあとも、セクター別のラウンドテーブル、情報提供要請(RFI)、FDA内部のフィードバック・セッションといった機会が続く。これらを踏まえて枠組みの詳細が詰められ、その内容には新規または改訂ガイダンス、規制の改正、職員研修、組織変更が含まれる可能性があるとされている。

開発企業の立場から見ると、注目すべき点は二つある。一つは、FDAが「予見可能性」と「一貫性」を繰り返し掲げたことだ。小規模な患者集団では、どこまでのエビデンスで足りるのかという判断が案件ごとに揺れやすい。その判断基準を個別化されたガイダンスと透明なコミュニケーションで示すという方向性は、開発計画の立て方そのものに関わる。

もう一つは、リスクベースのアプローチの適用先として、CMC審査と承認前査察が名指しされたことである。臨床試験のデザインだけでなく、製造・品質管理の審査プロセスも見直しの射程に入っていることを意味する。

いずれにせよ、枠組みの具体的な中身はこれから意見を集めて決まる。規制の改正まで視野に入ると明示されている以上、意見提出の各機会がどう設計されるかが、次に見るべきポイントになる。