144週データの中身

Johnson & Johnson(ペンシルベニア州スプリングハウス)は2026年10月12日、中等症から重症の活動性クローン病の成人を対象とした第3相試験GALAXI 2およびGALAXI 3について、新たな3年間データを公表した。TREMFYA(guselkumab、日本ではトレムフィア)の持続的な有効性と一貫した安全性プロファイルを示す内容で、144週時点の長期継続投与(LTE)成績は、米国消化器病学会(ACG)2026年次学術集会で発表される。

両試験では、患者は静注による導入療法を受けたのち、皮下注による2種類の維持用法のいずれかに割り付けられた。すなわち100 mgを8週間ごと(q8w)投与する群と、200 mgを4週間ごと(q4w)投与する群である。144週時点の結果は次のとおり。

  • 臨床的寛解:100 mg q8w群で94%、200 mg q4w群で91%
  • 90日間ステロイドフリー臨床的寛解:100 mg q8w群で88%、200 mg q4w群で88%
  • 内視鏡的寛解:100 mg q8w群で52%、200 mg q4w群で61%
  • 3年間の治療継続率:TREMFYA投与患者の74%

144週までの安全性所見は、クローン病におけるTREMFYAの確立された安全性プロファイルと一貫していた。

なお、これらの寛解率はLTEに移行し、LTE期間中に1回以上の部分または完全な治験薬投与を受け、治療を継続し、144週時点のデータが得られた患者を対象とした「観察例(as observed)」解析であり、用量調整を受けた患者は含まれていない。臨床的寛解はCDAIスコア150未満、内視鏡的寛解はSES-CD 4以下かつ2点以上の低下、いずれのサブコンポーネントのスコアも1を超えないこと、と定義されている。

シカゴ大学炎症性腸疾患センターのディレクターであるDavid Rubin医師は「慢性かつ生涯続く疾患において、臨床的・内視鏡的アウトカムを3年にわたって維持できることは、患者にとって特に意義がある」とコメントした(同氏はJohnson & Johnsonの有償コンサルタントであり、メディア対応に対する報酬は受けていない)。

GALAXIプログラムと開発の経緯

GALAXI(NCT03466411)は、従来治療(ステロイドまたは免疫調節薬)および/または生物学的製剤(TNF拮抗薬、ベドリズマブ)に対して効果不十分または不耐容である中等症から重症の活動性クローン病患者を対象とした、無作為化・二重盲検・プラセボ対照・実薬対照(ウステキヌマブ)の国際多施設共同第2/3相プログラムである。用量設定を行う第2相試験(GALAXI 1)と、同一デザインの独立した2本の第3相検証試験(GALAXI 2および3)で構成される。

各試験はtreat-throughデザインを採用し、長期継続投与期間を設けて合計5年までの臨床的・内視鏡的アウトカムと安全性を評価する。投与スケジュールは、0・4・8週にTREMFYA 200 mgを静注した後、200 mgを4週ごとに皮下投与する用法などが設定されている。今回の144週データは、この5年計画の途中経過にあたる。

クローン病は炎症性腸疾患の主要な2つの病型のうちの一つで、米国で約300万人、欧州で約400万人が炎症性腸疾患の影響を受けているとされる。原因は不明だが、遺伝的素因や食事、その他の環境因子が引き金となりうる免疫系の異常と関連づけられている。症状は腹痛や圧痛、頻回の下痢、直腸出血、体重減少、発熱など。腸管と他臓器・組織をつなぐ瘻孔を生じる患者もおり、疼痛や排膿、感染、生活の質の大幅な低下を伴う。現時点で根治療法は存在しない。

TREMFYAは、IL-23を阻害すると同時に、IL-23を産生する細胞上の受容体CD64に結合する、IBD領域で唯一承認された二重作用型モノクローナル抗体である。ただし二重作用機序の知見はin vitro試験に限られ、その臨床的意義は明らかになっていない。米国では尋常性乾癬、活動性乾癬性関節炎、中等症から重症の活動性潰瘍性大腸炎、同クローン病に対して承認されている。欧州、カナダ、日本などでも、中等症から重症の尋常性乾癬、活動性乾癬性関節炎、中等症から重症のクローン病、同潰瘍性大腸炎を対象に承認されている。

長期エビデンスという競争軸

クローン病は根治療法がなく、生涯にわたる疾患である。そのため、症状と腸管炎症を長期にわたって抑え続けられるかどうかが、治療選択の実務的な判断材料になる。同社は今回のデータについて、クローン病で報告されたもののうち最も包括的な3年データセットの一つであり、2つの維持用法の双方で臨床的寛解、ステロイドフリー寛解、内視鏡的寛解の持続が示されたと位置づけている。

Johnson & Johnsonのグローバル免疫学領域責任者であるDavid M. Lee医師は「この慢性疾患の経過のなかで生じる疑問に答えるよう研究を設計している」とし、3年時点の臨床的・内視鏡的寛解の結果が、医師の治療判断に資する長期エビデンス創出への取り組みを裏づけるものだと述べた。

承認取得が一つの到達点であった時代から、承認後に何年分の継続データを積み上げられるかが問われる段階へ。治療継続率74%という数字と、5年までの評価を織り込んだ試験設計は、その方向性を端的に示している。日本でもトレムフィアは中等症から重症のクローン病を含む複数の適応で承認済みであり、今回の長期データは、国内の治療現場で生物学的製剤を長期に使い続ける際の判断材料の一つとなる。