事実:サブグループを通じて一貫した24週時の寛解率

ジョンソン・エンド・ジョンソンは2026年10月12日(米ペンシルベニア州スプリングハウス)、肛門周囲瘻を伴う成人クローン病患者を対象とした第3相FUZION試験について、事前に規定されたサブグループ解析の結果を発表した。データは米国消化器病学会(ACG)2026年次学術集会で発表されている。

試験集団全体では、24週時点の複合評価項目である「複合瘻孔寛解(combined fistula remission)」をトレムフィア(グセルクマブ)100mg 8週ごと投与群の28%、200mg 4週ごと投与群の27%が達成した。プラセボ群は10%だった。同社は、肛門周囲瘻を伴うクローン病患者を対象とした専用の無作為化プラセボ対照試験で有効性を示したIL-23阻害薬はトレムフィアが唯一だとしている。

今回の新たなサブグループ解析では、以下の群でいずれもプラセボを上回る24週時の複合瘻孔寛解が示された。

  • ベースラインの腸管病変活動性が高い患者(CDAI 220以上):100mg皮下8週ごと群30%、200mg皮下4週ごと群21%、プラセボ0%
  • 生物学的製剤の投与歴がある患者:それぞれ21%、29%、プラセボ5%
  • ベースラインで直腸炎を有する患者:それぞれ26%、27%、プラセボ12%
  • ベースラインで直腸炎を有さない患者:それぞれ29%、27%、プラセボ10%

有害事象は、クローン病におけるトレムフィアの既知の安全性プロファイルと一致していた。

なお複合瘻孔寛解は、すべての外瘻孔の完全閉鎖と排膿の消失、新規瘻孔の発生がないこと、MRIで基礎にある液体貯留が認められないこと、と定義されている。

背景:クローン病患者の約25%に生じる合併症

肛門周囲瘻はクローン病患者の約25%に発症し、疼痛、持続する排膿、膿瘍の再発、外科的介入の必要性を伴う重篤な病態とされる。アイカーン医科大学のBruce Sands氏は「肛門周囲瘻は中等症から重症クローン病の最も消耗的な症状の一つであり、多くの患者が持続する排膿、疼痛、合併症を抱え続けている」とコメントし、今回の解析が臨床的に重要な患者集団を通じて一貫した結果を示したと述べている。

FUZION(NCT05347095)は、肛門周囲瘻を伴う成人クローン病患者を対象とした無作為化・プラセボ対照・二重盲検・多施設共同の第3相試験。組み入れ要件は、盲検下の中央MRI判定で確認された1つ以上の活動性排膿性肛門周囲瘻、CDAI 350未満、経口ステロイド、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、または最大2クラスの先進治療への効果不十分である。患者は2対2対1で、0・4・8週にトレムフィア200mg点滴静注後に100mgを8週ごと皮下投与する群、同じ導入後に200mgを4週ごと皮下投与する群、プラセボ群に割り付けられた。

トレムフィアは、IL-23を阻害するとともに、IL-23産生細胞上の受容体CD64に結合する作用を併せ持つとされる完全ヒト型モノクローナル抗体。ただしCD64結合は炎症性単球モデルを用いたin vitro試験に基づく知見であり、臨床的意義は明らかになっていないと同社は明記している。米国では尋常性乾癬、乾癬性関節炎、潰瘍性大腸炎、クローン病に、欧州・カナダ・日本などでも成人の中等症から重症の尋常性乾癬、活動性乾癬性関節炎、中等症から重症のクローン病および潰瘍性大腸炎に承認されている。

意味:合併症に的を絞った専用試験という差別化

今回の発表の要点は、新規適応や新薬の話ではなく、既承認薬について「どの患者に効くのか」を細分化して示した点にある。クローン病という広い適応の中で、肛門周囲瘻という合併症だけを対象に設計された無作為化プラセボ対照試験を回し、さらに腸管病変の活動性、生物学的製剤歴、直腸炎の有無といった層別で結果を提示する。これは、同じ適応内で複数の作用機序が競合する免疫疾患領域において、処方選択の根拠を厚くする方向の投資といえる。

特に、生物学的製剤の投与歴がある患者で21%・29%(プラセボ5%)という数字と、CDAI 220以上の患者でプラセボが0%だった点は、既存治療で行き詰まった患者層をどう扱うかという臨床上の問いに直接対応する。日本でもトレムフィアは中等症から重症のクローン病に承認されており、国内の処方現場にとっても参照され得るエビデンスとなる。ただしFUZIONの評価時点は24週であり、瘻孔閉鎖の持続性については今回公表された範囲には含まれていない。