何が決まったか

Johnson & Johnson(J&J)は2026年10月16日、ベルギー・ベールセ発のリリースで、欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会(CHMP)がTALVEY®(タルケタマブ)の適応拡大について承認推奨の見解を示したと発表した。

推奨の対象は、タルケタマブとダラツムマブの併用(ポマリドミドの追加併用の有無を問わない)で、少なくとも1つの前治療を受けた成人の再発・難治性多発性骨髄腫(RRMM)である。これまで単剤療法として後治療ラインで使われてきたタルケタマブが、2次治療から使える併用レジメンとして位置づけられることになる。

タルケタマブは、T細胞上のCD3と、骨髄腫細胞表面に高発現するGPRC5Dに結合する二重特異性T細胞誘導抗体である。資料によれば、GPRC5Dの発現はBCMAなど他の標的とは独立しており、正常B細胞では発現がないか低レベルにとどまる。一方のダラツムマブはCD38を標的とする抗体で、CD38に結合して腫瘍細胞の増殖を阻害し、骨髄腫細胞の死をもたらす。J&Jは、ダラツムマブが免疫系をプライミングすることでタルケタマブの活性が高まり、相補的な作用機序の組み合わせになると説明している。

根拠となったMonumenTAL-3の成績

推奨の根拠は第3相試験MonumenTAL-3(NCT05455320)である。少なくとも1ラインの前治療歴を持つRRMM患者を対象に、タルケタマブ+ダラツムマブ(Tal-D)、およびタルケタマブ+ダラツムマブ+ポマリドミド(Tal-DP)を、ダラツムマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン(DPd)と比較した。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目にORR、≥CR、MRD陰性≥CR(10⁻⁵、NGS)、全生存期間(OS)、安全性が含まれる。

全参加者はN=864。全員がレナリドミドとプロテアソーム阻害剤の曝露歴を持ち、85.1%がレナリドミド抵抗性、93.4%が直前治療に抵抗性、11.8%が抗CD38抗体の曝露歴を有していた。

追跡期間中央値2年(24.6カ月)時点で、PFSはTal-DPがハザード比0.28(95%CI 0.20–0.40、p<0.0001)、Tal-Dが0.33(95%CI 0.24–0.46、p<0.0001)。24カ月PFS率はTal-DP 81.3%、Tal-D 77.6%だった。ORRはTal-DP 88.2%、Tal-D 88.5%、DPd 77.6%。≥CR率は71.1%、68.9%、34.5%。MRD陰性≥CR率は52.3%、46.3%、15.9%で、いずれもDPdに対し統計学的に有意な改善が示された。OSはTal-DPがHR 0.47(95%CI 0.30–0.73、p=0.0006)、Tal-DがHR 0.51(95%CI 0.33–0.78、p=0.0015)。24カ月OS率はTal-DP 89.2%、Tal-D 87.9%である。

安全性については、各単剤で既知のプロファイルと一貫していたとされる。Grade 3/4のTEAEはTal-DP 94.9%、Tal-D 74.8%、DPd 91.5%。感染症の発現率は87.3%、84.3%、83.0%で、Grade 3/4の感染症はTal-Dが29.2%と最も低く、Tal-DP 37.7%、DPd 42.2%と続いた。Grade 5のAEはTal-DP 1.8%、Tal-D 4.0%、DPd 4.6%、うち感染症によるものは約0.7%、1.5%、1.8%。AEによる治療中止は10.5%、8.0%、6.7%。データカットオフ時点で治療を継続していた患者はTal-DP 70.3%、Tal-D 69.7%、DPd 47.3%だった。

これまでの経緯

タルケタマブは2023年8月、欧州委員会から条件付き販売承認(CMA)を取得している。適応は、免疫調節薬、プロテアソーム阻害剤、抗CD38抗体を含む3つ以上の前治療を受け、直前治療で病勢進行が確認された成人RRMM患者への単剤療法だった。米FDAも同じく2023年8月に、4ライン以上の前治療歴を持つ患者への承認を与えている。世界で11,000人超が同薬による治療を受けたとされる。

併用相手のダラツムマブは、2012年8月にJanssen Biotech, Inc.がGenmab A/Sと全世界契約を結び、J&Jが独占的な開発・製造・販売権を得たもの。上市以来、世界で830,000人超の治療に用いられてきた。皮下投与型はHalozymeのENHANZE®技術によるrHuPH20との配合剤である。

欧州連合では、2024年に35,000人超が多発性骨髄腫と診断され、21,900人超が死亡したと推計されている。治療ラインを重ねるごとに再発の間隔は短くなり、寛解期間は次第に短縮していく疾患である。

業界にとっての意味

今回の推奨は、GPRC5D標的薬の使いどころが後治療から2次治療へと前倒しされる可能性を示すものだ。J&JのEMEA血液領域責任者Ester in 't Groen氏は、初回再発を迎えた患者にとって深い奏効と病勢コントロールの延長をもたらす可能性があるとし、オンコロジー領域グローバル責任者のYusri Elsayed氏は、GPRC5DとCD38を同時に標的とする「オフ・ザ・シェルフ」の免疫療法併用である点を強調している。

MRD陰性≥CR率がDPdの15.9%に対して46.3〜52.3%と3倍前後に達した点は、奏効の深さを測る指標としての重みを持つ。一方で、Grade 3/4のTEAEはTal-DPで94.9%に達しており、ポマリドミドを加えるかどうかの判断は、有効性と忍容性のバランスを踏まえた選択になる。なお、タルケタマブはEMAの規定により追加モニタリングの対象となっている。