何が決まったか

欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会(CHMP)は、2026年10月12〜15日に開いた会合で、新医薬品6品目に肯定的意見(承認推奨)を出した。あわせて、既承認薬5品目の適応拡大も推奨した。EMAは10月16日にこの結果を公表した。

事実:6品目の内訳

6品目の内訳は、非オーファン新薬2品目、オーファン医薬品2品目、バイオシミラー2品目である。

Rasonque(daraxonrasib)は、少なくとも1つの前治療を受けた成人の転移性膵腺がん(他の部位に広がった膵がん)の治療について肯定的意見を得た。同剤は、満たされない医療ニーズに対応する可能性があるとして、EMAの「Cancer Medicines Pathfinder」プロジェクトの下で高優先度医薬品に指定され、段階的な審査(phased review)を経て今回の推奨に至った。申請者はRevolution Medicines Netherlands B.V.。

Foundayo(orforglipron)は、成人の肥満および2型糖尿病の治療に用いる経口のGLP-1受容体作動薬で、1日1回服用の錠剤として提供される。EMAは、注射剤や既存の経口GLP-1受容体作動薬に代わる選択肢になると位置づけている。申請者はEli Lilly Nederland B.V.。

Yuviwel(navepegritide)は、小児の軟骨無形成症の治療薬。軟骨無形成症は線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)という遺伝子の変異によって起こる遺伝性疾患で、頭蓋骨、脊椎、腕、脚を含むほぼ全身の骨の成長に影響し、特徴的な外観を伴う著しい低身長をもたらす。申請者はAscendis Pharma Growth Disorders A/S。同剤はオーファン医薬品に指定されている。

バイオシミラーは2品目。Fovlussea(ranibizumab、Accord Healthcare S.L.U.)は、血管新生型(滲出型)加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫による視力障害、増殖糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞に続発する黄斑浮腫による視力障害、脈絡膜血管新生による視力障害の治療。Neuzafy(filgrastim、CuraTeQ Biologics (Malta) Limited)は、成人および小児の好中球減少症の治療が適応となる。

このほか、Kizfizo(temozolomide、Orphelia Pharma)が、成人の多形膠芽腫および小児の悪性神経膠腫の治療について推奨された。既承認の参照医薬品の非臨床試験・臨床試験の結果と、新たなデータの双方に依拠するハイブリッド申請で提出されたもので、オーファン医薬品に指定されている。

適応拡大が推奨されたのは、Pandemic influenza vaccine H5N1 AstraZeneca、Kyinsu(insulin icodec/semaglutide、Novo Nordisk A/S)、Talvey(talquetamab、Janssen-Cilag International N.V.)、Tryngolza(olezarsen、Swedish Orphan Biovitrum AB)、Tukysa(tucatinib、Pfizer Europe MA EEIG)の5品目。

否定的意見・取り下げ・その他の判断

CHMPは再審査(re-examination)の結果、Yartemlea(narsoplimab、Omeros Ireland Limited)について、承認を拒否するという当初の意見を維持した。同剤は、造血幹細胞移植(HSCT)に関連する血栓性微小血管症を対象に、2歳以上の小児および成人での使用が意図されていた。EMAは、血栓性微小血管症をHSCT後の重篤で生命を脅かしうる合併症と説明している。

適応拡大の申請2件が取り下げられた。Ibrance(palbociclib)については、HR陽性・HER2陽性の局所進行または転移性乳がんの成人に対する維持療法への拡大申請を企業が取り下げた。Truqap(capivasertib)については、PTENというタンパク質を欠くがん細胞を持ち、ホルモン治療に反応する転移性前立腺がんの治療への申請が取り下げられた。

また、Mylotarg(gemtuzumab ozogamicin)を1歳以上18歳未満の新規診断の急性骨髄性白血病(AML)に拡大する申請については、CHMPはこの用途を推奨しなかった一方、提出された試験の関連データを製品情報に収載することに合意した。医療従事者がこの患者群におけるMylotargの作用に関する最新データにアクセスできるようにするためとしている。

さらにCHMPは、オピオイド過量摂取の疑い・既知例の緊急治療に用いる点鼻スプレーNyxoid(naloxone)について、処方箋なしで入手できるよう法的区分を変更することを推奨した。

数字でみる10月会合と、その意味

10月会合の統計は、新薬の肯定的意見6件(2026年累計72件)、新薬の否定的意見0件(同8件)、適応拡大の肯定的意見5件(同97件)、新薬申請の取り下げ2件(同10件)。

今回の会合は、承認推奨の中身が広い範囲にわたる点が特徴だ。満たされない医療ニーズとして優先審査の枠組みに乗せられた転移性膵がん薬、注射剤に代わる1日1回経口投与という投与経路の選択肢を増やす肥満・2型糖尿病薬、小児の遺伝性疾患を対象とするオーファン薬、そして先行品と同じ領域で供給の選択肢を広げるバイオシミラー2品目とハイブリッド申請1品目が、同じ会合で並んだ。

一方で、再審査でも拒否が維持された例、企業自身が取り下げた適応拡大の例、推奨はしないがデータは製品情報に反映させる例と、「承認しない」判断にも複数の形があることが示された。これらはいずれも欧州委員会(EC)の決定を待つ段階にある。会合の議事次第はEMAのウェブサイトで公表済みで、議事録は数週間以内に公表される予定だ。