何が発表されたか
Gilead Sciencesは2026年10月19日(米カリフォルニア州フォスターシティ)、中等症から重症の活動期潰瘍性大腸炎(UC)の成人を対象とした、治験薬エムビステグラスト(emvistegrast、GS-1427)の第2相用量設定試験「SWIFT」で良好な結果が得られたと発表した。12週間のプラセボ対照導入期のデータは、スペイン・バルセロナで開催されたUnited European Gastroenterology Week(UEGW)2026でレイトブレイキング演題として発表された。
エムビステグラストは、炎症性腸疾患(IBD)で臨床的に検証された標的であるα4β7経路を選択的に阻害するよう設計された、1日1回投与の経口剤である。発見から開発まで社内で行われたと同社は説明している。
試験の数字
主要評価項目は12週時点の臨床的奏効(modified Mayo clinical scoreに基づく)で、エムビステグラスト200mg群は66%、プラセボ群は37%(22/60)が達成した(nominal P<0.001)。なお同社リリースでは200mg群の分子・分母が「33/59」と記載されている箇所と「39/59」と記載されている箇所があり、表記が一致していない。
副次評価項目では、12週時点の臨床的寛解が200mg群31%(18/59)、プラセボ群8%(5/60)(nominal P<0.05)。組織学的・内視鏡的粘膜改善(HEMI)は25%(15/59)対10%(6/60)(nominal P<0.05)、粘膜治癒は24%(14/59)対10%(6/60)(nominal P<0.05)、内視鏡的改善は39%(23/59)対12%(7/60)(nominal P<0.001)だった。いずれもnominal p値に基づく比較である。
組入れ集団は、78%が先進的治療(AT)未使用またはATで治療失敗していない患者、22%が1〜2のATで治療失敗歴のある患者だった。
安全性は、有害事象(AE)が238例中86例(エムビステグラスト64/178[36%]、プラセボ22/60[37%])で、多くはGrade2以下。重篤なAEはエムビステグラスト群(200mg、75mg、25mg)で4/178(2%)に発生し、プラセボ群では0例、いずれも治験薬との関連なしと判定された。AEによる試験中止は238例中3例(1%)だった。同社は「おおむね忍容性は良好」としている。
試験デザインと今後
SWIFTは、18〜75歳の成人で、スクリーニング時の内視鏡検査によりmodified Mayo Clinic Score(mMCS)合計5〜9点(中央判定の内視鏡サブスコア2点以上を含む)と判定され、UC治療薬1剤以上に対して効果不十分・効果減弱・不耐容があり、ATの作用機序としては3未満の使用にとどまる患者を対象とした、無作為化二重盲検プラセボ対照の多施設共同用量設定試験。参加者は1日1回経口のエムビステグラスト200mg、75mg、25mgまたはプラセボに1:1:1:1で割り付けられた。
試験は3つの段階から成り、12週のプラセボ対照導入期(Part A)、52週までの盲検下で再無作為化される維持期(Part B)、116週までの盲検継続投与期(Part C)が続く。試験は現在も継続中で、維持期のデータと追加解析が予定されている。
同社のSwati Tole氏(Senior Vice President, Clinical Development, Inflammation)は、2027年に第3相単剤療法試験を開始する計画であり、エムビステグラストを将来の併用療法の基盤(backbone)と位置づけていると述べた。エムビステグラストは世界のいずれの国・地域でも承認されておらず、有効性・安全性は確立していない。
意味するもの
α4β7経路はIBDで既に臨床的に検証された標的である。今回の結果が注目されるのは、その経路を1日1回の経口剤で選択的に狙う開発品が、第2相の導入期で主要評価項目に加え、臨床的寛解や内視鏡的改善といった客観指標でもプラセボとの差を示した点にある。既存の治療選択肢が増えてもなお持続的な疾患コントロールに至らない患者が多い、とギリアドは課題を説明しており、投与経路の違いは治療選択の幅に関わる要素になり得る。
ただし、報告された有意差はいずれもnominal p値に基づくもので、多重性を調整した検定結果としては示されていない。効果の数値が公表されたのは200mg群のみで、75mg・25mg群の有効性データはリリースに記載がない。また、組入れ集団の78%はAT未使用またはAT失敗歴のない患者であり、既治療歴の重い集団での位置づけは今回のデータからは読み取れない。寛解の維持についても、52週までのPart Bと116週までのPart Cの結果を待つ必要がある。
次の節目は2027年に開始予定とされる第3相単剤療法試験である。同社は併用開発の基盤としての役割にも言及しており、炎症領域のパイプライン全体の設計の中でこの化合物がどう使われるかが、今後の見どころとなる。