何が発表されたか
アッヴィ(NYSE: ABBV)は2026年10月19日、米イリノイ州ノースシカゴ発のプレスリリースで、開発中の二重標的療法ABBV-466が、中等症から重症の活動期クローン病患者を対象とした第2a相試験「TARGET-CD」において、主要評価項目である12週時点の内視鏡的寛解率で、抗IL-23 p19単剤および抗α4β7単剤のいずれをも上回ったと発表した。データはバルセロナで10月17〜20日に開催中の2026年欧州消化器病週間(UEGW)で、レイトブレイキング演題として発表される(10月19日10:10〜10:20 CEST、Room UEG Forum)。
ABBV-466は、IL-23阻害薬リサンキズマブと、α4β7阻害薬トロスニリマブを組み合わせた治験薬である。炎症シグナルを阻害すると同時に、腸管への免疫細胞の移動を制限することで、いずれか一方の経路のみを標的とする場合よりも深い疾患コントロールを目指す設計になっている。ABBV-466は治験段階にあり、その安全性と有効性は規制当局によって確立されていない。
数字で見る試験結果
TARGET-CD(NCT06548542)は、中等症から重症のクローン病患者を対象とした非盲検・treat-throughのプラットフォーム型第2a相試験で、現在も進行中である。患者は1:1:1に割り付けられ、24週間にわたりABBV-466、リサンキズマブ、トロスニリマブのいずれかを投与された。組み入れは合計300例で、内訳は抗IL-23 p19(リサンキズマブ)群94例、抗α4β7(トロスニリマブ)群100例、ABBV-466群106例。
主要評価項目は12週時点の内視鏡的寛解で、クローン病簡易内視鏡スコア(SES-CD)4以下、かつ個々の項目のサブスコアがいずれも1を超えないことと定義された。12週時点でABBV-466群の30.2%が内視鏡的寛解を達成したのに対し、抗IL-23 p19単剤群は21.3%、抗α4β7単剤群は18.0%だった。差は24週時点でさらに広がり、ABBV-466群40.5%に対し、リサンキズマブ単剤群22.4%、トロスニリマブ単剤群20.0%となった。
対象集団は治療歴の重い患者を多く含む。生物学的製剤未使用は25%にとどまり、75%は少なくとも1つの先進治療に失敗していた。うち9.3%はIL-23療法に、12%はJAK阻害薬に失敗した経験があり、25%は3つ以上の先進治療に失敗していた。
安全性については、重篤な有害事象(SAE)の発現率がABBV-466群10.4%で、リサンキズマブ単剤群9.6%、トロスニリマブ単剤群9.0%と同程度だった。発現率5%以上の有害事象は、ABBV-466群とトロスニリマブ単剤群でクローン病と悪心、リサンキズマブ単剤群でクローン病と関節痛だった。
遺伝子発現解析では、ABBV-466投与群で12週までに大腸上皮の修復とバリア機能の回復が、24週までに組織リモデリングと代謝変化が認められ、これらは単剤療法群では概して観察されなかったとしている。
背景と意味
アッヴィのグローバル免疫学臨床開発責任者であるKori Wallace氏は、「リサンキズマブによるIL-23 p19阻害下でもα4β7が駆動する炎症が残る証拠が自社研究で示され、リサンキズマブに新規α4β7阻害薬トロスニリマブを加えることにつながった」と述べ、中心的な炎症経路を抑えても活動を続ける経路に対処する狙いを説明している。ABBV-466は、既存のIBDポートフォリオを次世代へ展開する位置づけとされる。
カルガリー大学のRemo Panaccione氏は、多くのクローン病患者が先進治療を次々と切り替えても、症状が改善した後でさえ腸管に活動性の炎症が残る点を指摘したうえで、「二重標的アプローチが、治療歴の重い集団で単剤よりも高い頻度で内視鏡的寛解という目標に到達した点が際立つ」とコメントしている。
業界にとっての含意は二つある。第一に、承認済みの抗IL-23薬に新規の抗インテグリン薬を組み合わせ、単一の治験薬として開発するという設計そのものである。自社の既存資産を土台に、残存する炎症経路を上乗せで叩くという開発の立て方は、既存薬を持つ企業が次の一手を考える際の一つの型になり得る。第二に、評価の物差しである。今回の主要評価項目はSES-CDに基づく内視鏡的寛解であり、症状の改善ではなく腸管の炎症そのものの消失を一次の目標に据えている。治療歴の重い患者が4分の3を占める集団で、24週に40.5%という数字が示されたことの意味は、この物差しの厳しさと合わせて読む必要がある。なお本試験は非盲検であり、進行中の第2a相であることも前提となる。