8mg/kg群で確定ORR61%、6mg/kg群は32%
GSK plc(LSE/NYSE: GSK)は2026年10月18日、ロンドン発のリリースで、開発中のB7-H3標的抗体薬物複合体(ADC)「risvutatug rezetecan(Ris-Rez)」について、再発進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)患者を対象とした初のグローバルデータを発表した。
データは第Ia/b相試験「EMBOLD PanTumour-101」(NCT06551142)の第Ib相用量最適化パートによるもの。評価可能例における確定奏効率(ORR)は、8mg/kg群で61%(n=11/18、95%CI:35.7-82.7)、6mg/kg群で32%(n=7/22、95%CI:13.9-54.9)だった。これらの結果は、スペイン・マドリードで開催される欧州臨床腫瘍学会(ESMO)2026のポスターセッションで発表される。
安全性は両用量で管理可能とされ、追跡期間中央値は100.5日。Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は8mg/kg群で42%、6mg/kg群で15%に認められ、最も多かったのは血液学的事象だった。間質性肺疾患(ILD)の発現率は全体で2%(50例中1例)と低く、当該症例はGrade2(中等度)だった。
解析対象は50例で、前治療歴の中央値は2レジメン。トポイソメラーゼ1阻害薬またはtarlatamabの投与歴がある患者、脳転移・肝転移を有する患者も含まれる。患者は6mg/kgまたは8mg/kgを3週ごとに静脈内投与する群へ無作為化され、病勢進行、忍容できない毒性、追跡不能、死亡のいずれかまで投与が継続された。データカットオフ時点で同パートの登録は継続中であり、奏効の持続性についてはより長期の追跡が必要とされている。
中国での第III相データに続く「グローバル初」
今回のデータは、中国のSCLC患者を対象とした先行データに続くものだ。GSKは、Hansohが実施した中国での第III相試験について、再発小細胞肺がん患者でトポテカンと比較し死亡リスクを54%低減したと公表している。また、HansohのSCLCを対象とした第III相「ARTEMIS-008」のデータと今回の第Ib相データを併せて、現在グローバル第III相「EMBOLD SCLC-301」で評価中の8mg/kgという用量が選択された。
GSKのオンコロジーR&Dグローバル責任者であるHesham Abdullah氏は「本日のRis-Rezの初のグローバルデータは、Hansohの中国における主要試験で最近報告された統計学的に有意な全生存期間のベネフィットを補強するものだ」とし、早期に再発し治療選択肢を切実に必要とするES-SCLCでの開発加速に注力すると述べた。
試験担当医である延世がんセンター腫瘍内科のHye Ryun Kim氏は、ES-SCLCは5年生存率が一桁%にとどまる最も侵襲性の高いがんの一つであり、再発後の選択肢は限られ、現行治療は忍容が難しい場合があると指摘。奏効率と管理可能な安全性プロファイルは「勇気づけられるもの」だとコメントした。
Ris-Rezが標的とするB7-H3は10種類を超える固形がんで高発現しており、GSKは2040年までに40を超える適応での開発を目指す。GSKはHansoh Pharmaから中国本土・香港・マカオ・台湾を除く全世界の独占的権利を取得している。EMBOLD開発プログラムでは1,000人を超える患者がRis-Rezの投与を受け、後方ラインES-SCLCと転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)で第III相が進行中。早期ラインSCLCと化学療法未治療mCRPCでも第III相が計画されている。規制上の指定としては、米国・日本・EUでのSCLCに対する希少疾病用医薬品指定、米FDAのブレークスルーセラピー指定、EMAのPRIME指定(再発・難治性ES-SCLC)などを取得済みだ。
「標準治療不在」の後方ラインをどう取るか
SCLCは全肺がん診断の約10〜15%を占め、早期の転移、頻回の再発、予後不良を特徴とする。約70%の患者が進展型で診断され、現行の標準治療下でのES-SCLCの全生存期間中央値は約12〜13カ月とされる。
今回ESMOでは、EMBOLD PanTumour-101のグローバル用量漸増パートの結果、Ris-Rez早期臨床プログラム全体にわたるILDの解析、第III相EMBOLD SCLC-301の試験デザインも併せて発表される。さらに実臨床研究「RESONANCE」からは、ES-SCLC再発後の治療判断が複雑であること、後方ラインに明確な標準治療が存在しないことが示されている。
後方ラインに確立した標準がない領域で、単剤の奏効率と忍容性のバランスをどこに置くかは、用量選択そのものが開発戦略になる。8mg/kgはORRで6mg/kgを上回る一方、Grade3以上のTRAEは42%対15%と差がある。この用量が第III相で選ばれた背景には、中国第III相の生存ベネフィットという別軸の裏づけがあった。オーファン指定やPRIME、ブレークスルーセラピー指定を重ねてきたRis-Rezにとって、グローバル第III相の結果が次の分岐点になる。