何が決まったか

米食品医薬品局(FDA)が、GSKの抗PD-1抗体ジェムペルリ(一般名ドスタルリマブ)を、ステージII・IIIのMSI-H(マイクロサテライト不安定性が高い)/dMMR(ミスマッチ修復機能欠損)局所進行直腸がんの成人患者に対する治療として、迅速承認(accelerated approval)の経路で承認した。GSKが2026年10月19日、ロンドンで発表した。同社によれば、この患者集団に対して承認された免疫療法は本剤が初めてであり、現時点で唯一である。

承認の根拠となった数字

承認の根拠となったのは、第II相試験AZUR-1のデータである。AZUR-1は、未治療のステージII・III MSI-H/dMMR局所進行直腸がん患者154例を対象とした、グローバルかつ非盲検・単群の登録試験。患者はドスタルリマブ500mgを3週ごとに点滴静注し、6カ月間で計9サイクルの投与を受けた。主要評価項目は、独立中央判定による12カ月持続する臨床的完全奏効(cCR12)である。

治験医師評価では、評価可能患者の68%(98/144、95%CI:60%、76%)がcCR12を達成した。探索的解析では、治療後1年以上にわたってがんの所見が認められなかった患者は76%(110/144、95%CI:69%、83%)。この中には、手術を受けずにcCR12に到達した68%(98/144)に加え、手術後の組織解析で完全奏効が確認された(病理学的完全奏効、pCR)12例が含まれる。奏効例では、2年を超える追跡期間中央値の時点で再発の報告はない。

主要評価項目である独立中央判定によるcCR12はなおデータが成熟途上にあり、現時点では評価可能患者の47%(54/116、95%CI:37%、56%)が達成。さらに12カ月の追跡期間に向けて経過中の38例が、すでに臨床的完全奏効に到達している。

安全性プロファイルは、固形がん領域で確立された既存のプロファイルとおおむね一致した。重篤な副作用は20%に発現し、主な副作用は疲労(32%)、発疹(22%)、下痢(18%)、そう痒症(17%)。副作用による恒久的な投与中止は3%だった。AZUR-1の中間解析の全データは、2026年10月の欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で発表される。

背景──手術・放射線・化学療法という標準治療

GSKの説明によれば、局所進行直腸がんの現在の標準治療は化学療法、放射線療法、手術であり、これらには腸・排尿・性機能の障害、二次がん、不妊といった長期的な影響が伴いうる。MSI-H/dMMRは直腸がんの約5〜10%に見られるバイオマーカーで、DNA損傷を適切に修復できずに変異が蓄積するという特徴を持ち、ドスタルリマブのような免疫療法に高い反応性を示すことが多いとされる。

今回の適応では、FDAのファストトラック指定とブレークスルーセラピー指定を取得済み。申請は優先審査の対象となり、National Priority Voucherの付与も受け、PDUFA期日に先行して迅速承認に至った。この生物製剤承認事項一部変更申請(sBLA)は、FDA腫瘍学卓越センターの取り組みであるProject Orbisの下で審査されており、参加各国の規制当局による審査が進行中である。

ジェムペルリはAnaptysBioが創製し、2014年3月の協業・独占ライセンス契約によりTESAROへ導出された。現在はGSKが研究開発、商業化、製造を担う。

意味すること

最大の変化は、バイオマーカーで定義された一部の患者に対し、化学療法・放射線・手術を回避しうる単剤治療という選択肢が、承認された治療として提示された点にある。GSK最高科学責任者のTony Wood氏は「数十年にわたり治療は化学療法、放射線、手術に依存してきた」とし、今回の承認を個別化医療に向けた重要な一歩と位置づけた。AZUR-1の治験責任医師であるメモリアル・スローン・ケタリングがんセンターのAndrea Cercek医師は、患者が疾患の生物学的特性に合わせた治療にアクセスできるようになる意義を指摘している。

同時に、恩恵を受けられる患者は直腸がん全体の5〜10%に限られる。Colorectal Cancer AllianceのMichael Sapienza最高経営責任者が、診断時のバイオマーカー検査が対象患者の特定に不可欠だと述べているように、承認の実効性は検査の実施率に左右される構造になっている。

また、今回は迅速承認であり、主要評価項目のデータは成熟途上にある。Project Orbisによる各国同時審査が進行中であることから、米国外での取り扱いは今後の各当局の判断を待つことになる。