何が発表されたか
Johnson & Johnson(NYSE:J&J)は2026年10月19日、米国ペンシルバニア州で、第III相FUZION試験の1年間(48週)の結果を発表した。肛門周囲瘻孔を有する成人のクローン病(CD)患者を対象に、トレムフィア®(グセルクマブ)が48週まで瘻孔寛解を維持または改善したという内容で、late-breakingデータとしてUnited European Gastroenterology Week(UEG Week)2026で発表される。
主な数値は次のとおりである。臨床的評価と放射線学的評価を組み合わせた「瘻孔の複合寛解」は、トレムフィア®のいずれの維持療法レジメンでも48週まで維持または改善した。トレムフィア®100mgを8週ごと(q8w)に皮下投与された群では、複合寛解率は24週時点の28%から48週時点では35%へさらに上昇した。臨床評価による瘻孔寛解についても同様の結果が認められている。トレムフィア®200mgを4週ごと(q4w)に投与された群では、48週まで結果は一貫していた。また、生物学的製剤による治療歴のない患者と治療歴のある患者の双方を含む無作為割り付け全患者の90%以上が、48週まで治療を完了した。
48週までの安全性に関する所見は、CDにおけるトレムフィア®の既知の安全性プロファイルと一貫していた。
なお、本発表は米国本社のプレスリリースの抄訳であり、日本国内において未承認の情報を含む。FUZION試験で併用薬として挙げられている6-メルカプトプリンおよびメトトレキサートは、クローン病に対して本邦では保険適用外である。
24週データからの積み上げ
今回の48週結果は、既に報告されている24週時点の結果を裏付けるものと位置づけられている。24週時点の試験対象集団全体では、トレムフィア®100mg q8w群の28%、トレムフィア®200mg q4w群の27%が瘻孔の複合寛解を達成したのに対し、プラセボ群は10%だった。この結果により、トレムフィア®は、肛門周囲瘻孔を有するCD患者を対象とした、この病態に特化したランダム化プラセボ対照試験で有効性を示した唯一のIL-23阻害薬であるとされる。
FUZION試験(NCT05347095)は、ランダム化、プラセボ対照、二重盲検、多施設共同の第III相試験である。登録された患者は、盲検中央MRI判定で確認された排液を伴う活動性肛門周囲瘻孔を1つ以上有し、CD Activity Index(CDAI)が350未満で、経口コルチコステロイド、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、または最大2クラスの先進治療薬に効果不十分だった患者である。割り付けは2:2:1で、0週・4週・8週にトレムフィア®200mgを静脈内投与する導入療法後に100mgを8週ごと皮下投与する群、同じ導入療法後に200mgを4週ごと皮下投与する群、プラセボ群の3群が設定された。
評価項目の定義も明示されている。瘻孔の複合寛解は、すべての外部瘻孔開口部が完全に閉鎖し、排液がなく、新たな瘻孔が形成されず、MRIで基礎に液体貯留が認められないこと。臨床評価による瘻孔寛解は、治療したすべての外部開口部が100%閉鎖し、新たな瘻孔または膿瘍が形成されず、外部開口部からの排液が自然にも指での軽い圧迫後にも認められないこととされる。
治験担当医師のLaurent Peyrin-Biroulet, MD, PhDは、肛門周囲瘻孔はCDの合併症のなかでも最も生活に支障をきたすものの一つで、症状改善にとどまらない持続的な疾患コントロールの達成が依然として課題だと述べ、FUZION試験をこの病態を対象とした試験として20年ぶりのものと説明している。そのうえで、24週時点で認められた臨床的ベネフィットが維持または改善したことは、この患者集団での使用を支持する心強いエビデンスだとコメントした。
業界にとっての意味
CDは炎症性腸疾患の主要な2疾患の一つで、米国で約300万人、欧州全体で約400万人が罹患していると推定される。原因は明らかになっておらず、根治する治療法も確立されていない。一部の患者では腸と他の臓器・組織の間に異常な通路である瘻孔が生じ、疼痛、排液、感染、QOLの著しい低下を伴う場合がある。
こうした背景のなかで、瘻孔という合併症そのものを対象に設計されたランダム化プラセボ対照試験が実施され、48週という期間で複合寛解の維持・改善が示された意味は小さくない。特にq8w群で24週の28%から48週の35%へ数値が上がった点は、短期の症状改善だけでなく時間をかけた瘻孔閉鎖の評価が必要であることを示唆する。90%以上という高い治療完遂率も、長期データの解釈を支える材料となる。
J&Jの免疫領域グローバル責任者であるDavid M. Lee, M.D., Ph.D.は、長期的な治療選択肢が依然として限られる肛門周囲瘻孔領域でエビデンスが拡充されたとし、中等症から重症の活動期クローン病の幅広い病態でトレムフィア®の検討を進めると述べている。
トレムフィア®はIL-23を阻害するとともに、IL-23産生細胞上の受容体であるCD64に結合する初の完全ヒト型二重作用性モノクローナル抗体とされる。ただしこの二重作用機序の知見は炎症性単球モデルのin vitro試験に限られ、臨床的意義は不明と明記されている。米国では乾癬、乾癬性関節炎、潰瘍性大腸炎、クローン病の適応で承認され、欧州、カナダ、日本などでも成人の尋常性乾癬、乾癬性関節炎、中等症から重症のCDおよびUCの治療薬として承認されている。今回のデータが各国でどう扱われるかは、今後の開示を待つことになる。