何が承認されたか

GSK plc(LSE/NYSE: GSK)は2026年10月20日、米国食品医薬品局(FDA)がヒブサゴ(一般名ベピロビルセン)を慢性B型肝炎(CHB)ウイルス感染症の治療薬として承認したと発表した。発表はロンドンから出されている。

承認された用法は、核酸アナログ系逆転写酵素阻害剤(NrtI)療法との併用である。対象となるのは、肝硬変のない成人患者のうち、NrtI療法を6か月以上受けており、HBV DNAが抑制されていて、かつB型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)が3000 IU/ml以下の患者。HBsAg値はFDAが認可した検査で判定される。

ベピロビルセンはファースト・イン・クラスのアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)である。今回の承認はFDAの優先審査(priority review)と画期的治療薬指定(Breakthrough Therapy Designation)のもとで与えられた。投与期間は6か月で、初回投与後は自己投与という選択肢がある。

米国でCHBの影響を受けている人は約170万人とされる。

第3相B-Well試験の数字

承認を支えたのは、B-Well第3相試験の結果である。B-Well 1とB-Well 2は29か国で実施された国際多施設共同の無作為化二重盲検プラセボ対照試験で、核酸アナログ治療中でベースラインのHBsAgが3000 IU/ml以下の成人CHB患者を対象に、有効性、安全性、薬物動態、機能的治癒の持続性を評価した。主要評価項目は、ベースラインHBsAg 3000 IU/ml以下の患者における機能的治癒達成割合(全治療中止から6か月後に評価)である。

プール解析では、6か月間のベピロビルセン投与により19%の機能的治癒率が得られた(1,220例中233例、プラセボ群は614例中0例)。B-Well 1、B-Well 2はいずれも主要評価項目を達成し、全試験集団でプラセボに対する統計学的に有意な改善を示した。

主要な副次評価項目では、ベースラインHBsAgが1000 IU/ml以下の集団で26%の機能的治癒率(768例中200例、プラセボ群は393例中0例)が示された。この集団は、世界で診断されているCHB症例の約45%にあたる。

探索的解析では、72週時点で全試験集団の49%(1,220例中598例)、1000 IU/ml以下のサブグループでは62%(768例中476例)で、HBsAgが100 IU/ml以下まで低下した。医学文献では、この低い表面抗原レベルは免疫学的制御の向上や患者アウトカムの改善と関連づけられている。

安全性・忍容性プロファイルは、ベピロビルセンの他の試験と一貫して許容できるものだった。最も高頻度にみられた有害事象は、注射部位の紅斑、局所の痛み、肝酵素の血中値の一時的上昇の3つである。

なお機能的治癒とは、すべての治療を中止した後、HBV DNAとウイルス蛋白であるHBsAgが少なくとも24週間検出されない状態を指し、薬剤なしで免疫系が疾患を制御していることを意味する。現行の標準治療では、1年間の治療後の機能的治癒率は通常1%未満とされる。

背景とこれまでの経緯

慢性B型肝炎は、免疫系がウイルスを排除できずに感染が長期化する疾患で、世界で2億4000万人超が罹患している。年間の死亡数は約110万人で、世界の肝がんの最大の原因となっている。多くの患者は、ウイルス抑制のために生涯にわたる抗ウイルス療法を必要としており、機能的治癒が疾患管理上の重要な目標とされてきた。

GSKのチーフ・サイエンティフィック・オフィサーであるTony Wood氏は「現行の治療法があっても、慢性B型肝炎とともに生きる多くの人々が無期限に治療を続け、深刻な肝合併症のリスクに直面し続けている」とし、ヒブサゴによって「米国の患者が初めて、6か月の治療コースの後に機能的治癒を達成できる可能性を持つ」と述べた。

USC Keck Medical CentreのNorah Terrault氏(消化器・肝臓内科部門長)は「CHBとともに生きる人々の治療における新時代の始まりだ」とコメント。Hepatitis B FoundationのChari Cohen氏は、CHBが世界の肝がん症例の約56%を占めるとしたうえで、スクリーニング、診断、革新的な治療選択肢の可用性の改善に向けた前進だと評価した。

ベピロビルセンは、GSKがIonis Pharmaceuticalsからライセンスを受け、共同で開発を進めてきた。米FDAの画期的治療薬指定と優先審査のほか、中国での画期的治療薬指定・優先審査、日本での先駆け(SENKU)指定を受けている。すでに日本と米国で承認されている。

業界にとっての意味

今回の承認が示すのは、CHBの治療目標がウイルス抑制の維持から機能的治癒へと移りうるという点である。生涯投与を前提とした核酸アナログ療法に対し、6か月という有限の投与期間で治療終了後も効果が持続する選択肢が、米国で初めて規制当局に認められた。初回投与後の自己投与という選択肢は、治療の場を医療機関の外に広げる要素にもなる。

もう一つの論点は、患者選択に検査が組み込まれたことだ。適応はHBsAg 3000 IU/ml以下に限られ、定量的表面抗原検査が治療対象者の特定を支える。FDAが最近認可した検査を含む複数の検査が利用可能とされており、診断側の体制整備が治療の到達範囲を左右する構造になる。副次評価項目で26%という高い治癒率が示された1000 IU/ml以下の集団が、世界の診断済みCHB症例の約45%を占めるという数字も、検査による層別化の重要性を示している。

GSKは複数の地域で規制当局への申請を進めており、今後数か月のうちに主要な審査結果が見込まれるとしている。同社は慢性B型肝炎に加え、MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)、アルコール関連肝疾患を重点領域とする肝臓病学パイプラインを拡大しており、今回の承認はその最初の成果ということになる。