何が発表されたか
アムジェン(NASDAQ:AMGN)とアストラゼネカは2026年10月20日、好酸球性食道炎(EoE)を対象とした第3相CROSSING試験の全結果を発表した。症状があり、かつコントロール不良の青年・成人EoE患者において、TEZSPIRE®(tezepelumab-ekko)は24週時点の共主要評価項目および主要な副次評価項目で統計学的に有意かつ臨床的に意味のある改善を示し、その改善は52週まで維持された。
試験では、TEZSPIRE 210mgと420mgを4週ごとに皮下投与する2用量が評価された。症例数は210mg群n=122、420mg群n=122、プラセボ群n=121である。
数字で見る結果
共主要評価項目の一つである組織的寛解(食道組織の最大好酸球数が高倍率視野あたり6個以下)は、24週時点で210mg群64.8%、420mg群68.9%に達した。プラセボ群は3.5%で、プラセボとの差は210mg群が60.5%(95%CI 51.1, 69.8)、420mg群が65.8%(同56.8, 74.7)、いずれもp<0.001だった。
もう一つの共主要評価項目である嚥下障害の頻度と重症度は、患者報告アウトカムであるDSQ(Dysphagia Symptom Questionnaire)スコアのベースラインからの変化で評価された。24週時点の最小二乗平均変化量は210mg群−18.8(p=0.049)、420mg群−22.0(p<0.001)で、プラセボ群は−14.7だった。
52週時点の主要な副次評価項目でも効果は維持された。組織的寛解は210mg群67.8%、420mg群63.3%(プラセボ5.4%、いずれもp<0.001)。DSQスコアのベースラインからの平均低下は210mg群22.1点、420mg群24.0点で、プラセボの13.2点を上回った(いずれもp<0.001)。
内視鏡所見を評価するEREFS(0〜18点)は、24週時点で210mg群−3.6、420mg群−3.7(プラセボ−0.2)、52週時点で210mg群−3.9、420mg群−3.7(プラセボ−0.6)と、いずれもp<0.001で改善した。さらに52週時点で、EoEの内視鏡所見がまったく見られない「完全内視鏡的寛解」(全食道レベルでEREFS最大0点)を達成した患者は210mg群34.4%、420mg群29.5%で、プラセボ群の4.1%を上回った(p<0.001)。
安全性プロファイルは既承認の適応症と一貫していた。本試験で最も多く報告された有害事象は上気道感染(鼻咽頭炎)、頭痛、下痢だった。
背景──既存治療で半数が未充足
EoEでは食道の炎症が嚥下障害、食物のつかえ(food impaction)、食道狭窄につながり、食事のたびに食物がつかえるリスクが日常生活の負担となる。現在の標準治療は食事制限、嚥下用局所ステロイド、プロトンポンプ阻害薬(PPI)など症状管理を目的としたものだが、青年を含むほぼ半数の患者が十分な疾患コントロールに至っていない。
アムジェンの研究開発・AI・データ担当エグゼクティブ・バイスプレジデントであるJay Bradner氏は「標準治療にもかかわらず半数がコントロール不良のままである」とし、上皮由来の炎症性疾患全般でTEZSPIREの研究を続け、TSLP阻害の科学を患者の成果につなげることに注力すると述べた。
CROSSING試験では、試験参加前および治療期間中に用量が安定していれば、PPIや嚥下用局所ステロイドなどEoEの併用薬を継続することが認められていた。治験主任医師の一人で、アムステルダム大学医療センターのArjan Bredenoord氏は、組織的寛解、嚥下障害の頻度と重症度、内視鏡的寛解という3つの主要な指標で一貫した改善が52週まで持続した点、そしてそれが背景治療を継続した患者でも見られた点を挙げている。
ノースカロライナ大学医学部のEvan Dellon氏は、EoEの有病率が上昇しており、臨床で見る慢性消化器疾患のなかで最も増加の速いものの一つになっていると指摘。4週に1回投与のtezepelumabは、症状・組織・内視鏡の各アウトカムにまたがる治療目標に対応する重要な新しい選択肢になり得るとした。
意味すること
TEZSPIREは現在、米国では12歳以上の重症喘息の追加維持療法、および12歳以上のコントロール不良の慢性副鼻腔炎(鼻茸を伴う)の追加維持療法として適応を持つ。気道および腸管の上皮に働きかけるファースト・イン・クラスのヒト型モノクローナル抗体であり、今回のEoEでのデータは、上皮由来の炎症という同一の作用機序を呼吸器領域から消化器領域へ広げる位置づけとなる。
評価の設計面では、組織(好酸球数)、患者報告症状(DSQ)、内視鏡所見(EREFS)という3つの軸すべてで有意差が示され、かつ24週から52週へと効果が維持された点が特徴である。とりわけ完全内視鏡的寛解はプラセボ4.1%に対し約3割という水準で、炎症だけでなく線維性所見も含めて視認される所見が消失した患者が一定割合存在したことを意味する。また、既存治療を継続したうえでの上乗せ効果として測定されている点は、実地診療に近い条件での評価といえる。
CROSSING試験の結果は、スペイン・バルセロナで開催されるUnited European Gastroenterology Week 2026のレイトブレイキング口演で発表される。