何が発表されたか

サノフィとテバは2026年10月20日、開発中の抗TL1Aヒト型モノクローナル抗体「デュバキトゥグ(duvakitug)」について、中等症から重症の潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病(CD)を対象とした第2b相長期継続試験(RELIEVE UCCD LTE、NCT05668013)の新たなデータを公表した。44週の維持期を通じて複数の評価項目で臨床的に意味のある改善が維持されたという内容で、バルセロナで開催中のUnited European Gastroenterology(UEG)Week 2026で同日発表された。発表元はパリ(サノフィ)とニュージャージー州パーシッパニー(テバ)。

試験の設計はこうだ。14週間の導入試験でデュバキトゥグに反応した患者130人(UC 72人、CD 58人)が、デュバキトゥグ450mgまたは900mgを4週ごとに皮下投与する群へ再ランダム化され、総曝露期間は最長58週に及ぶ。主要有効性評価項目は、導入試験・44週維持期ともに、UCコホートでは修正Mayoスコア(mMS)による臨床的寛解、CDコホートではSES-CDによる内視鏡的奏効と設定されている。実施施設は米国、欧州、イスラエル、アジアにある。

44週時点の数字

UCでは、44週時点の臨床的寛解(mMS)が450mg群で47%[95%CI: 30, 65]、900mg群で58%[95%CI: 42, 73]。臨床的奏効(mMS)はそれぞれ82%[95%CI: 61, 91]と87%[95%CI: 71, 94]、内視鏡的改善(Mayo内視鏡スコア0または1)は59%[95%CI: 42, 76]と63%[95%CI: 47, 78]だった。いずれも900mgが450mgを数値的に上回り、用量反応性と整合する結果とされている。

CDでは、ベースラインからSES-CDが50%以上低下した内視鏡的奏効が450mg群41%[95%CI: 25, 62]、900mg群55%[95%CI: 39, 75]。CDAIによる臨床的奏効は81%[95%CI: 63, 94]と87%[95%CI: 70, 96]、臨床的寛解は81%[95%CI: 65, 95]と84%[95%CI: 68, 96]だった。CDでも高用量側で数値的に高い結果が得られている。なお、これらのデータはいずれも記述的なもので、信頼区間はロジスティック回帰に基づく。

安全性については、UC・CDいずれも維持期を通じて概ね忍容性は良好で、導入期と一致したプロファイルだったとされる。新たな安全性の懸念は確認されていない。プール解析で5%以上に認められた有害事象は、UCで上気道感染と鼻咽頭炎、CDで上気道感染、クローン病、高血圧、鼻咽頭炎、貧血、インフルエンザ。多くは軽度から中等度で、有害事象による投与中止率はUCで450mg群4%・900mg群2%、CDでは両群とも6%にとどまった。

背景とバイオマーカーの所見

デュバキトゥグが標的とするTL1A(tumor necrosis factor-like ligand 1A)は、炎症を増幅し、UCやCDにおいて線維化を駆動する可能性があるタンパク質とされる。RELIEVE UCCDの導入試験は14週間の無作為化二重盲検・用量設定試験で、UCとCDの患者を同一試験に組み入れるバスケット型デザインを採用。資料によれば、CDにおけるTL1A阻害の影響を検討した初めてかつ唯一の無作為化・盲検・プラセボ対照第2相試験である。導入試験の臨床成績はUC・CDともThe Lancet Gastroenterology and Hepatologyに最近掲載された。

UEG Week 2026では、導入試験(NCT05499130)のバイオマーカー解析も示された。デュバキトゥグは、UCでは複数の炎症経路に関連する血中マーカーを、CDではTh17およびTh1免疫経路に関連するマーカーを低下させ、さらにUC・CD双方で血中および組織中の好中球性炎症マーカーを減少させた。CDでは組織リモデリングのマーカーも低下しており、TL1A阻害が炎症に加えて線維化にも作用しうる機序的な裏づけと位置づけられている。

業界にとっての意味

今回のデータは、導入期で得られた反応が44週という維持期にわたって持続しうることを、内視鏡所見を含む複数の軸で示した点に意味がある。IBDは世界で約490万例が確認され、地域によっては発症率が上昇している。治癒的な治療法は存在せず、治療目標は寛解の導入と維持、再燃の予防に置かれている。長期の維持成績と内視鏡的改善が同時に示されたことは、この治療目標に直接対応する。

また、炎症マーカーに加えてCDで組織リモデリングのマーカーが低下したという所見は、長期の炎症が引き起こす線維化—腸管壁への瘢痕組織の蓄積による狭窄や閉塞—という合併症に対し、既存の抗炎症一辺倒とは異なる切り口を示唆する。両社は線維狭窄型クローン病での第2相試験を計画しており、化膿性汗腺炎を対象とした第2相AURALIGHT試験(NCT07812116)も開始済みだ。

開発は既に次の段階に入っている。UCではSUNSCAPE-1(NCT07184996)とSUNSCAPE-2(NCT07185009)、CDではSTARSCAPE-1(NCT07184931)とSTARSCAPE-2(NCT07184944)の第3相試験が進行中である。両社は開発費を世界で折半し、主要市場の純損益も折半する。商業化はテバが欧州・イスラエルなど、サノフィが北米、日本、アジアのその他地域などを主導する体制で、日本市場ではサノフィが担うことになる。

ただし、デュバキトゥグは現時点で臨床試験段階にあり、その有効性と安全性はいかなる規制当局によっても評価されていない。