欧州委員会が承認、対象はステロイド効果不十分・減量中に再燃した成人
ノバルティスは2026年10月21日(バーゼル)、欧州委員会(EC)がコセンティクス®(セクキヌマブ)について、グルココルチコイド(ステロイド)への反応が不十分な成人、またはステロイド漸減中に再燃を経験した成人のリウマチ性多発筋痛症(PMR)治療薬として承認したと発表した。これにより、コセンティクスは欧州でPMRに承認された初めての、かつ唯一のインターロイキン-17A(IL-17A)阻害薬となる。
承認された用法・用量は、第III相REPLENISH試験のデータに基づくもので、150mgを皮下注射し、初回投与は0、1、2、3、4週、その後は月1回の維持投与とする。投与はグルココルチコイドの漸減療法との併用で開始し、その後はコセンティクス単剤として継続できる。臨床的な反応に基づき、維持用量は300mgに増量することが可能とされている。
同社は、PMRを対象としたコセンティクスの規制当局審査が、米国と日本を含め世界各国で進行中であることも明らかにした。
52週時点の持続的寛解率がプラセボの2倍
承認の根拠となったREPLENISH試験(NCT05767034)は、27カ国で実施された国際共同の第III相・多施設・無作為化・二重盲検・プラセボ対照・並行群間比較試験である。患者はコセンティクス300mg群、コセンティクス150mg群、プラセボ群の3群に無作為に割り付けられ、いずれも24週間のステロイド漸減レジメンと併用された。
主要評価項目は、コセンティクス300mg皮下注+24週ステロイド漸減が、プラセボ+24週ステロイド漸減に対して、52週時点の持続的寛解達成において優越性を示すかどうかであった。主な副次評価項目には、52週時点の完全持続寛解達成割合、調整後の年間累積ステロイド投与量、52週までのエスケープ治療またはレスキュー治療の初回使用までの時間が含まれる。
発表によれば、同試験でコセンティクスは52週時点の持続的寛解率をプラセボ比で2倍に高め、安全性の結果は既に確立されたコセンティクスの安全性プロファイルと一貫していた。試験結果は、2026年6月3〜6日にロンドンで開かれた欧州リウマチ学会(EULAR 2026)で口演発表(#OP0116)されたほか、N Engl J Med誌(2026;395(7):637–647)に掲載されている。
長期ステロイド依存という積年の課題
PMRは50歳以上の成人に多い炎症性リウマチ性疾患で、肩、頸部、股関節周囲の急性の痛みとこわばりを特徴とする。北欧系の人々で特に有病率が高いとされる。症状による患者負担は大きい一方で、進んだ治療選択肢は限られてきた。
現在の標準治療は長期のステロイド使用だが、再燃率の高さと重大な有害事象が課題として残る。資料によれば、再燃は最初の1年で最大40%の患者に生じる。長期ステロイド使用には骨粗鬆症や糖尿病といった重大なリスクが伴い、身体的合併症にとどまらず、痛み、疲労、可動性の制限、再燃への不安を通じて生活の質を大きく損なうとされる。
イタリア・ブルーニコの南チロル保健機構リウマチ科ディレクターのChristian Dejaco教授は「セクキヌマブの承認はPMRとともに生きる人々にとって重要な前進であり、長期ステロイド使用のみに頼ったこの疾患の管理のあり方を変える可能性がある」とコメント。「ステロイドを漸減しながら持続的な疾患コントロールを達成できる点と、確立された安全性プロファイルが、PMR診療における長年の課題への対応に役立つかもしれない」と述べた。
ノバルティスのインターナショナル担当プレジデント、Patrick Horber氏は「PMRとともに生きる人々には、持続的な疾患コントロールをもたらし、再燃を防ぎ、より良い長期アウトカムを支える治療選択肢が必要だ」とし、今回の承認を「長期的な疾患管理で大きな困難に直面し続けてきた患者にとっての重要な一歩」と位置づけた。
意味:ステロイド漸減後の単剤継続という選択肢
今回の承認が示すのは、PMR治療における「ステロイド一本やり」からの転換点である。承認された用法は、ステロイド漸減と併用して導入したうえで、その後はコセンティクス単剤として継続できる設計になっている。長期ステロイドに付随する骨粗鬆症や糖尿病といったリスクを抱えながら治療を続けてきた患者層に対し、ステロイドから離脱したうえで疾患コントロールを維持する道筋が、添付文書上の用法として明示された点は大きい。
作用機序の面でも、PMR領域にIL-17A阻害という新たな軸が加わったことになる。コセンティクスはヒト型完全ヒト抗体で、複数の免疫介在性炎症性疾患の炎症に関与する重要なサイトカインであるIL-17Aを直接阻害する。同剤は既に成人の乾癬性関節炎、中等症から重症の尋常性乾癬、強直性脊椎炎、X線所見陰性の体軸性脊椎関節炎、化膿性汗腺炎で承認されており、小児領域でも尋常性乾癬や若年性特発性関節炎のサブタイプ(若年性乾癬性関節炎、付着部炎関連関節炎)などで使われている。今回のPMR追加は、確立された適応群の延長線上に、高齢発症のリウマチ性疾患という新しい患者集団を加えるものだ。
日本の関係者にとって重要なのは、PMRを対象とした審査が日本でも進行中だと会社が明言している点である。欧州での承認内容と、52週という比較的長期のエンドポイントで得られたデータが、今後の国内審査における議論の出発点になる。